生物学:闘争・逃走系の起源
Nature
交感神経系は有顎脊椎動物に特有なものとこれまで考えられていたが、今週、Natureに掲載される論文で、無顎脊椎動物であるヤツメウナギに原始的な交感神経系が存在することを示す証拠が発表される。この知見は、無意識のうちに作動し、闘争・逃走反応を制御する交感神経系の起源を再考するきっかけになるかもしれない。
交感神経系は有顎脊椎動物で進化したと考えられており、ヤツメウナギには交感神経系がないと考えられていた。これに対して、Marianne Bronnerらは、ヤツメウナギの幼生の胴体に一対の交感神経ニューロンの束が鎖状に配置されていることを発見した。
Bronnerらは、この原始的な交感神経系が、神経堤細胞という胚性構造物に由来することを明らかにした。神経堤細胞は、遊走性を有する幹細胞の一過的な集団で、脊椎動物の数多くの重要な構造を生み出している。こうした特徴の多くは、無顎脊椎動物の祖先にも存在していたが、一部の特徴(顎や交感神経系など)は、その後、有顎脊椎動物において出現したと一般的に考えられている。今回の知見は、交感神経系が有顎脊椎動物に初めて出現したとする見解に異論を唱えるものであり、ヤツメウナギなどの無顎脊椎動物が、複雑な脊椎動物の特徴の出現を理解するための重要なモデルであることを明確に示している。
doi: 10.1038/s41586-024-07297-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
メールマガジンリストの「Nature 関連誌今週のハイライト」にチェックをいれていただきますと、毎週最新のNature 関連誌のハイライトを皆様にお届けいたします。