天文学:小さいけれど複雑なメインベルト小惑星
Nature
「(152830)ディンキネシュ」という小さなメインベルト小惑星を周回している衛星が、接触二重小惑星(2つの天体が接触した状態にある小惑星)であることを初めて確認した観測結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。ディンキネシュ系に関して、こうした予想外の特性が判明したことは、メインベルトにある小さな小惑星が、これまで考えられていたよりも複雑なものである可能性を示唆している。
地球近傍の小惑星の約15%は、単一の衛星が主天体を周回している。ところが、NASAの「ルーシー」ミッションで、火星と木星の間の小惑星帯の内縁部に位置する小惑星(152830)ディンキネシュを周回する衛星が接触二重小惑星であることが明らかになった。この知見は、接触二重小惑星である衛星がどのようにして形成され、存続しているのかという疑問を生んでいる。
今回、Harold Levisonらは、直径約720メートルの(152830)ディンキネシュの観測で、同じくらいのサイズ(直径210メートルと230メートル)の2つの天体からなる衛星が周回していることが判明したと報告している。Levisonらは、この衛星をセラム(Selam)と名付けた。セラムはディンキネシュから約3.1キロメートル離れており、約52.7時間で周回している。
(152830)ディンキネシュの赤道上には顕著な谷と尾根が存在しており、このことは、この小惑星上の物質が自転の速度と方位の変化によって失われた可能性があることを示している。Levisonらは、セラムはこの事象によって放出された物質から形成された可能性が高いという考えを示している。セラムを構成する2つの天体のサイズが似ているという事実は、衛星形成過程においてサイズが重要な因子であることを示唆している。Levisonらは、これら2つの天体を接触させた過程は、2つの天体を確実に存続させるために十分な低速度で起こったに違いないと付記している。
doi: 10.1038/s41586-024-07378-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。