経済学:消費者の反発があっても、企業のオンライン広告は誤情報を資金的に支えている
Nature
誤情報を掲載しているウェブサイトに医療、テクノロジー、保険などの業界の企業が広告を掲載していることを明らかにした分析研究について報告する論文が、Natureに掲載される。この研究で実施された実験では、ある企業の広告が誤情報サイトに掲載されていることを知らされた消費者は、その企業の製品に使えるギフトカードの提供を拒否する傾向を示した。
インターネット上でのデジタル広告掲載の大部分は、アルゴリズムを用いた配信プラットフォームを介して行われており、広告が誤情報サイトに掲載される可能性がある。企業は、こうした誤情報サイトに自社の製品やサービスの広告を掲載するために料金を支払うため、誤情報経済に対して意図せず資金を提供している可能性がある。
今回、Wajeeha Ahmadらは、2019~2021年に5485カ所のウェブサイトから広告データを収集した。その結果、誤情報を掲載しているウェブサイトの74.5%が、持株会社、メディア企業、家庭用品、テクノロジー、デジタル出版や印刷出版など、さまざまな業界の企業の広告から資金を得ていることが分かった。また、誤情報サイトに広告を掲載している企業は、それぞれの業界の企業全体の46~82%を占めることが判明した。Ahmadらはさらに、デジタル広告プラットフォームを使用した企業は、使用しなかった企業と比べて誤情報サイトに掲載される可能性が10倍高いことも明らかにした。
次に、Ahmadらは、こうした広告トレンドに対する消費者の反応を評価するために4039人を対象とした実験を行った。この実験では、第一希望の企業の25ドル(約3700円)のギフトカードを最初に提示された被験者が、この企業が誤情報サイトに広告を掲載していることを知らされると、別の企業の報酬に切り替えるという反応を示したことが明らかになった。こうした反応のレベルが最も顕著だったのは、女性と左寄りの消費者だった。Ahmadらはまた、誤情報のウェブサイトに広告を掲載している企業の意思決定者(役員、管理職者など)442人の調査も行った。その結果、自分が所属する企業が誤情報サイトに広告を掲載しているかに関する認識が正しかった意思決定者は、データが存在する調査対象者全体のわずか36%だった。
Ahmadらは、広告主がデジタル広告プラットフォームを使用すれば、自社の広告が誤情報ウェブサイトに掲載されたかどうかに関するデータを容易に入手できるようになり、それによって誤情報のオンライン掲載のための資金調達を抑制できる可能性があるという見方を示した上で、デジタル広告プラットフォームの透明性を高めることで、消費者が誤情報サイトに広告を掲載している企業をもっと簡単に特定できるようになるかもしれないと述べている。
doi: 10.1038/s41586-024-07404-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。