Research press release

考古学:チベット高原でデニソワ人が活動していたことを示す動物の骨

Nature

デニソワ人は、ヤギの一種であるブルーシープなどの動物を屠殺して食べることで、チベット高原で生き延びていたことを示唆する論文が、Natureに掲載される。今回の研究は、デニソワ人の行動を浮き彫りにし、彼らが過酷で変わりやすい環境にどのようにして適応していたかを明らかにしている。

古代人の絶滅種であるデニソワ人は、ネアンデルタール人と近縁で、更新世の末期にかけてユーラシア大陸東部の広範な地域で生活していた。今回、Huan Xia、Frido Welkerらは、デニソワ人が住んでいたことが知られる標高の高いチベット高原の白石崖溶洞(Baishiya Karst Cave)から発掘された2500点以上の骨を調べた。今回の研究では、分子解析と視覚的解析を組み合わせて用いることで、ほとんどの骨がブルーシープ(バーラルとも呼ばれるヤギの一種で、現在のヒマラヤ山脈でよく見られる)のもので、他の断片は肉食動物、小型哺乳類や鳥類のものであることが明らかになった。これらの骨の多くには切り痕があり、これは、同じ洞窟の中で発見された骨で作られた道具を使って食用に加工されたことを示している。

さらに著者らは、デニソワ人の肋骨を発見し、年代測定によって約4万8000~3万2000年前のものと推定した。デニソワ人の化石はこれまでほとんど見つかっていないので、これは注目すべき発見だ。以上の結果を総合すると、デニソワ人はこの洞窟で後期更新世のかなりの時期まで生活し、この地域で利用可能な動物資源を最大限に活用していたことが示唆される。洞窟のある甘加盆地(Ganjia Basin)は、標高が高いにもかかわらず、デニソワ人にとって比較的安定した生活場所であったと考えられ、デニソワ人は、最終氷期–間氷期–氷期サイクルの間、この地域で生活していた。

doi: 10.1038/s41586-024-07612-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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