Research press release

創薬:オピオイドの作用を逆転させる新しい化合物

Nature

オピオイド過剰摂取の治療薬であるナロキソンの効果を増強する化合物の開発について報告する論文が、今週のNatureに掲載される。ナロキソンと協調的に作用する化合物が今回特定されたことは、強力で作用時間の長いオピオイド(例えば、フェンタニル)の過剰摂取の治療に役立つ可能性がある。

鎮痛作用のあるオピオイドの過剰使用は、中毒や乱用のリスクを増大させ、オピオイド過剰摂取の蔓延に拍車を掛けている。ナロキソン(ナルカン)は、オピオイドの過剰摂取によく使われる有効な治療薬であり、患者の命を救うツールとなっているが、フェンタニルのような非常に強力で作用時間の長いオピオイドの過剰摂取を治療するためには、繰り返し何度も投与する必要がある。オピオイド受容体、特にμオピオイド受容体に作用する分子は、オピオイド過剰摂取による死亡を防ぐために役立つ可能性があるが、有望な分子候補は見つかっていなかった。

今回、Brian Kobilkaらは、大規模な化学物質ライブラリーのスクリーニングを行って、候補となりそうな化合物を特定した。この化合物(「368」と命名された)は、μオピオイド受容体に高い選択性を示し、ナロキソンの親和性を高めるように結合し、その効力を7倍以上に高める。Kobilkaらは、368がナロキソンと協調的に作用して、離脱症状を最小限に抑えながら、モルヒネとフェンタニルの作用を阻害することを示した。さらに、368を添加することは、好ましい効果をもたらすために必要なナロキソンの用量を減らせることを意味している。

368は、オピオイドとは異なるμオピオイド受容体の部分に結合し、負のアロステリック調節物質として知られている。今回の知見は、μオピオイド受容体の負のアロステリック調節物質がナロキソンの有効性を高め得ることを示している。Kobilkaらは、負のアロステリック調節物質のスクリーニングをさらに進めることで、その作用機序が明らかになり、有効性が高まる可能性があるという見解を示している。

doi: 10.1038/s41586-024-07587-7

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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