2014年6月号Volume 11 Number 6
充電池開発の最前線
生活に欠くことのできない充電式電池。高性能リチウムイオン電池の登場で、機器は小さく手ごろな価格になったが、電気自動車では依然として価格のネックであり、再生可能エネルギー利用ではその容量が課題となっている。6月号では、ビジネスの可能性に満ちあふれるこの分野で注目の「多価イオン電池」、「空気電池」、「超大容量電池」などの最新技術を紹介した記事を掲載。また、体内で溶ける「生分解性電池」に関する最新報告も掲載。
Editorial
Research Highlights
News
体内で溶ける生分解性電池
体内で溶ける電池が開発された。これを利用すれば、役目を終えたら消えてなくなる「埋め込み型の医療用機器」が実現するかもしれない。
小惑星に環を発見
巨大惑星以外で環を持つ太陽系天体が初めて見つかった。
酵母の染色体1本を人工合成することに成功
染色体の1つが合成染色体に置き換えられた酵母は、野生型の酵母と同様に成長し、合成染色体が正常に機能していることも確かめられた。
精神疾患の臨床試験のあり方を見直す動き
米国立精神衛生研究所(NIMH)は、精神疾患の根底にある原因を探らずに症状の軽減だけを目指す研究には、今後、資金を提供しない意向を明らかにした。
海に広がる地震観測網
2つの新しい地震観測システムが地震観測網の盲点を解消する。
米国の大麻研究を妨害する連邦政府の官僚主義
米国では2つの州で嗜好用大麻が合法化された。一方で、大麻の生物医学研究は、連邦法によりいまだに規制されている。
米国ソフトウエア特許の今後を占う訴訟の口頭弁論が始まった
米国では、ソフトウエア特許が判例上認められてきたが、現在最高裁で審理中の訴訟での判決次第で、医療診断業界にも影響が及ぶ可能性がある。
News Features
「1000ドルゲノム」成功への軌跡
米国政府は、ヒトゲノム配列の解読コストを待望された目標レベルまで低下させることに成功した。その成功のカギは、政府肝煎りのプログラムにあった。
充電池開発の最前線
充電式電池(二次電池)のさらなる価格低下と容量増を実現するために、化学者は全く新しいデザインの電池を模索している。
Japanese Author
がん幹細胞を正常細胞に変える方法を確立し、がん完治を目指す!
一貫して、がん幹細胞を対象に研究を続ける、慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授。今回は、信末博行特任助教らとともに「細胞の形の変化が、その細胞の運命を決める」との、逆説的にも思える成果をもたらした。研究は、治療の難しいがん幹細胞を正常な脂肪細胞へと導く新たな治療法につながる可能性を秘めるという。
News & Views
高齢者の脳を保護する因子
RESTと呼ばれるタンパク質が、加齢脳でのニューロンの細胞死の抑制と、高齢者の認知能力の維持に中心的な役割を果たしていることが明らかになった。
マントルダイナミクスの謎を解くカギを発見
地球の上部マントルに最も多く含まれる鉱物であるカンラン石中に、回位(ディスクリネーション)と呼ばれる、結晶格子の欠陥が見つかった。これにより、数十年にわたって鉱物物理学者を悩ませてきた問題が解決されるかもしれない。
News Scan
てんかん治療に大麻成分
米国で臨床試験が計画されている
長髪の物理学
自然にカールした長髪の数理モデルは、アニメ制作をさらに高度化