2025年4月号Volume 22 Number 4
リスキーな遊びが成長の種に
スリルや多少の危険を伴う遊びは、子どもの自信や社会的スキル、不安への対処力を高める。安全性を重視するあまり、このような遊びが失われつつあるが、子どもが安全にリスクを体験できる環境作りが、今、求められている。
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微生物から医薬品へ
健康と病気における微生物叢の可能性を最大限に活用するためには、微生物叢研究に、ファージや真菌、さらにはヒトの腸内生態学の全体像に関する研究をもっと取り入れる必要がある。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「レーザーイメージングでよみがえる古代の入れ墨」「惑星状星雲の中心星の周りに渦巻く塵」「AIを利用して粒子加速器を微調整」「明晰な頭脳を保つ:脳が自らを浄化する仕組み」、他。
News in Focus
地球の気温上昇が初めて「1.5℃目標」を超過
現時点では、地球の気温が産業革命前に比べて1.5℃以上高くなったのは1年だけだが、気候変動の悪化に伴い、人類は、多くの人が「安全域」と考えていた範囲の限界に近づいている。
多言語に対応するメタ社のAI翻訳モデル
SEAMLESSM4Tは、101の言語で入力された音声を36の言語の音声として出力する。
被引用数の多い「早熟な」若手科学者が急増
2019年以降、どうしてこれほど多くの著者が短期間に膨大な被引用数を獲得しているのか、研究者から疑問の声が上がっている。
欠陥のある臨床試験がコクランレビューを汚染
INSPECT-SRプロジェクトは2年間にわたり、信頼性の低い研究がコクランレビューに流入するのを阻止するツールを作成しようと取り組んでいる。
AIタンパク質で危険なヘビ毒を制する
機械学習が、計算タンパク質設計分野を大きく後押ししている。
新しい肥満の定義はBMIよりも健康を重視
肥満の新たな判定法は、過剰な脂肪が体にどう影響するかに着目している。
インパクトファクターを失うeLifeが直面する試練
先進的な学術誌が新たに採用した大胆な出版モデルは、学術界に長らくくすぶっていたインパクトファクターを巡る対立を表面化させることになった。
Features
リスキーな遊びも時には必要
けがなどのリスクがある遊びを子どもに積極的に勧めることは、親の立場からは抵抗があるだろう。だが、リスキーな遊びが子どもの発達に有益なことは、研究ではっきりしている。
AIのハルシネーションをどう抑えるか
大規模言語モデルのハルシネーションを抑制する手法が考案されているが、法廷での宣誓のように「真実を、全ての真実を、そして真実のみを」語らせるのは、依然として非常に困難だ。
古文書の秘密を暴くAI
焼け焦げた巻物の解読から崩れかけた粘土板の読み取りまで、研究者が何世紀もかけて蓄積してきた以上のデータがニューラルネットワークによってもたらされる可能性がある。
「暗黒タンパク質」はヒトゲノムの認識をどう変えるか
これまで見向きもされなかった数千の小さなタンパク質が、遺伝子調節やがんに関わっている可能性があり、ようやく注目され始めている。
News & Views
死にゆく細胞だけの破裂を担保する
特定のタイプの細胞死過程では、細胞が破裂して、炎症を引き起こす分子が放出される。細胞の破裂が適切なタイミングと場所で起こるよう、生細胞では、NINJ1タンパク質が抑制されている仕組みが明らかになった。
小惑星ベンヌの塩で太陽系の水の歴史に迫る
小惑星の探査計画で、地球外の物質ではこれまで見つかっていなかった、極めて分解しやすい塩(えん)が地球に持ち帰られた。こうした塩の分析は、初期の太陽系での水の歴史を解明するのに役立つ。
シリコン上にレーザーダイオードを直接作製
シリコンフォトニクスは、機械学習など多方面で応用が期待されているが、シリコン基板上に小型レーザーを直接作製する方法がないために開発が阻まれてきた。今回、シリコンウエハー上にナノスケールの溝とリッジを形成してレーザーを発振させる新たな手法が考案され、この問題の解決策が示された。
Advances
海が食べた炭素の行方
どのように“消化”されるのか、詳しい追跡が始まった。
Where I Work
Andrea Kealoha
Andrea Kealohaは、ハワイ大学マノア校(米国)の助教。
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