2004年1月号Volume 1 Number 1
Editorials
核の危険に直面して
テロとの戦いの陰に隠れて、旧ソ連の核物質の安全管理という兵器拡散の最も重大な問題が目立たなくなってしまう恐れがある。
News
大人のためのサイエンス博物館
博物館の学芸員は、よくこういう話をする。人は生まれてから死ぬまでに博物館を3度だけ訪れる。子供の時に1回、自分の子供を連れて、もう1回、そして自分の孫を連れて、さらに1回というわけだ。このような情けない状況に、今や科学博物館(英国)は真正面から取り組み、1,000万ポンド(約19億円)をかけて大人を直接の対象とした別館をオープンした。
News Features
タンパク質の所有権
初期のゲノミクスは、遺伝子特許が広がることで研究と医薬品開発が制約されることが懸念され、注目を集めていた。現在のところ、プロテオミクスにはそうした制約はないが、そう安心はできないとDavid Cyranoskiは報告している。
海洋生物学:ゼラチン質プランクトンとの遭遇
深海まで行ける潜水艇の登場によって、クラゲなど、ゼラチン質のプランクトン(浮遊生物)の世界をのぞく新たな窓が開かれた。生物学者たちは、こうした深海の住人たちには驚くべき生態があることを発見しつつある。Carina Dennisが報告する。
ライバルを出し抜け― 熾烈な研究競争
細胞生物学や分子生物学などの競争の激しい分野では、第2位でゴールインした者に与えられる栄誉はない。しかし「ホット」な結果を一番に発表することに対する圧力は、科学の進歩をゆがめてはいないだろうか。激化する競争の現状をHelen Pearsonが報告する。
News & Views
果てを越えたか?
2機のボイジャー探査機は太陽系の境界の外側に向かって飛び続けている。そして、今回ボイジャー1号が太陽風の「端」、つまり末端衝撃波面(termination shock)に遭遇した可能性がある。しかしこれには異論がないわけではない。
あの手この手の卵争奪戦
雄鶏は、交尾の際に射精液の量を複数の要因によって手加減しているようだ。つまり、雄同士の競争の程度、前にも雌と交尾をしたかどうか、そして、雌の生殖的な「価値」が要因となるらしい。
Brief Communication
油膜を利用したラボチップ
「ラボ・オン・チップ」のシステム(実験室での分析や反応をガラス基板上等で行うシステム)は、パイプを装備した工場のようである。だが、チップ上のマイクロチャンネルを流動する粒子、細胞、タンパク質が壁にくっついてチャンネルを詰まらせてしまうことがあり、物質を運ぶうえで問題が生じる可能性があった。