2013年12月号Volume 10 Number 12

大学知財部門がはまった罠

大学の特許が売れるとかビジネスになるという幻想は、日本ではとうの昔に消滅したが、米国でも、実際には非常に苦戦している。正式な統計はないが、米国の大学特許でライセンス供与ができているのは、せいぜい5%とみられている。残り95%は、法務関係費や事務費が無駄につぎ込まれている。この状況を打開するため、一部の有名大学が不適切な企業体に、十把一絡げ二束三文で保有特許を売却していることが明らかになった。売却先はいわゆるパテントトロール(特許の怪物)と呼ばれ、発明や知財を自らが発展・展開させることはほとんどなく、もっぱら、特許権の侵害訴訟ないしはそれを攻撃的交渉手段として、莫大な利益をあげている企業だ。いくら合法とはいえ、公的資金で生まれた研究成果が、問題視される企業に売り渡されている現状は、倫理的に批判されても仕方ない。

Editorials

健康な新生児と病気を抱えた新生児を対象に、ゲノム塩基配列に基づく病気の診断がどの程度有効かを調べる研究プロジェクトがスタートする。データを適切に役立てる方法をさぐる予定だが、それには、いくつかの重要な倫理上の問題を解決しなければならない。

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News

細胞内で生体分子を生合成するには、ある構造体から別の構造体へ、作りかけの分子を移さなければならない。それが小胞輸送で、今年のノーベル医学生理学賞は、その機構を解明した3人に授与される。

ヒッグス粒子探しが始まってから半世紀近くが経過し、昨年ようやくそれが発見された。そして今回、2人の理論物理学者にノーベル物理学賞が贈られることになった。

ノーベル化学賞は、コンピューターによる分子モデリングの開拓者に贈られる。今回の授賞で、理論家は実験家に引けを取らないことが確認されたと言える。

深宇宙からやって来たISON彗星が太陽に近づいている。天文学者たちは最初で最後の機会を逃さないよう、観測の準備を整えている。

4億1900万年前の化石魚類に高度な構造の顎があったことが分かった。脊椎動物の「顔」のルーツは、従来考えられていたよりもさらに古い可能性が出てきた。

糞便入りカプセルにより、クロストリジウム・ディフィシレ感染症の再発を抑えることができた。しかし、コストや製造の問題で、市販薬として開発するのは難しいかもしれない。

東京大学と理化学研究所の研究チームが54Caの生成に成功し、エキゾチック原子核においては、中性子数34が魔法数であることを実験的に証明した。

8年間のメルケル政権下で積極的な投資を受けてきたドイツの科学が絶好調だ。しかし、2013年9月のドイツ連邦議会選挙をきっかけに、予算上の圧力が科学への投資にブレーキをかけるのではないかという懸念も出てきた。

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News Features

サードロック・ベンチャーズ社は、起業させたバイオ技術企業に対する多額の投資で有名になった。「起業エンジン」として資金を調達し続ける同社の成果に、現在、注目が集まっている。

100年ほど前、野外調査と諜報活動の二重生活を送った悪評高き爬虫両生類学者がいた。現代の若い科学者が彼に関心を持ち、その足跡をジャングルの中に追ったところ、このスパイは、分類学者として、きちんと仕事を残していたことが判明した。

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Turning Point

Free access

数十個ものアンテナからなる巨大な電波望遠鏡「アルマ」が、南米チリの高原に建設された。その国際プロジェクトを率いてきた1人、井口聖氏。小さいときから抱いてきた「電波天文学者になりたい」という思いをどう実現してきたのだろうか。

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Japanese Author

何億年もの間、ほとんど変わらない姿で現存し、「生きた化石」とも称されるシーラカンス。このほど、東京工業大学、国立遺伝学研究所、東京大学などによるチームが、約27億対に及ぶ全ゲノムの解読に成功した。みえてきたのは、シーラカンスの際立った特異性と、脊椎動物の陸上化に関わる分子メカニズムの一端だ。

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News & Views

カーボンナノチューブで作った半導体トランジスターを回路に組み込み、コンピューターが試作された。市場に出せるかどうか未来の話はさておき、まずは、新しい電子材料としての華やかなデビューだ。

グラム陰性細菌の外膜に存在するリポ多糖(LPS)は、宿主細胞の細胞表面にある受容体TLR4によってのみ感知されると考えられていた。しかし今回、LPSは、細胞質内でも感知されることが分かった。

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News Scan

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