2013年2月号Volume 10 Number 2
米国の医学生物学の研究機関が倒産
2012年11月、米国の独立系研究機関BBRI(ボストン生物医学研究所)が、その44年間にわたる歴史に終止符を打った。2008年秋のリーマンショックの影響はなお大きく、米連邦政府の財政危機が続いており、それが米国立衛生研究所(NIH)の予算削減となっている。BBRIの場合、NIH からの助成金は、2010年の1000万ドル(約8.5億円)から、2012年の650万ドル(約5.5億円)、2013年の300万ドル(約2.6億円=予定)と急落、息の根を止めることになった。BBRIのほかにも、大学や企業に身売りする医学生物系の独立研究機関が相次いでいるのが、実態だ。
Editorials
新たな気候変動条約まで、省エネでしのげ
気候変動をめぐる話し合いは遅々として進まないが、二酸化炭素排出量の増加傾向を押しとどめるために、今にも増して省エネを進める必要がある。
Research Highlights
News
灼熱の水星で、大量の氷を確認
水星探査機メッセンジャーにより、水星の北極付近に純粋な水の氷が存在することが確かめられた。
パーキンソン病は、異常タンパク質の伝播を介して進行する
神経細胞の死と、パーキンソン病特有のタンパク質凝集塊との間の関連を示す 研究結果が報告された。治療法の開発につながることが期待される。
たくさんの匂いを混ぜると、みな同じ匂いになる
さまざまな匂いをたくさん混ぜ合わせると、結局は、みな似たような匂いになることが明らかになった。 多色光を混ぜると白色光になるのとよく似ている。
ハリケーン「サンディー」と闘った研究者たち
ニューヨーク大学ランゴン医療センターでも実験室に大きな被害が出たが、学生と研究者は率先して、非常電源の停止した病院からの患者救出活動に参加した。
フェルミγ線宇宙望遠鏡のソフトウェアを修正
フェルミγ線宇宙望遠鏡のソフトウェアがアップグレードされ、ダークマターの発見に向かって一歩前進する。
降雪量を正確に測定する
降水量の中には、雪や雹などの固体降水量も含まれる。特に、降水量計が雪をキャッチできる割合は、気象条件によって大きく変わり、著しい観測誤差が生じている。
ブタのレシピを広げる極上ゲノム情報
ブタの高品質ゲノム情報が得られたことで、養豚業や医学へのさまざまな応用に向けて期待が高まる。
米国の医学生物学研究機関の倒産
連邦政府、直接的には米国立衛生研究所(NIH)の予算削減によって、ボストン生物医学研究所(BBRI)といった著名な独立系研究所が倒産し始めた。
News Features
とっておき年間画像特集2012
写真共有機能のあるInstagramやFacebook、twitpicなどが普及して、私たちは日常的に多くの写真を目にするようになりました。それに伴い、写真の持つ力が相対的に弱くなってきた、という見方も現れています。しかしそんなことはありません。カメラは今なお、自然界のすばらしさや、自然界を探求するワクワク感を写し取ってくれています。音速を超えるスピードで地球に向かって落下する男性から、悪夢に出てきそうな海の生き物、脳を守る関門の繊細な網目構造まで、Natureが選んだ2012年のとっておき画像を紹介します。
卵の幹細胞をめぐる攻防
Jonathan Tillyは、ヒトをはじめとする哺乳類の卵の幹細胞の存在を示し、「生まれた時点で一生分の卵の数は決まっている」という定説に異を唱え、猛烈な批判にあった。その後、別の研究者からも報告があり理解者は増えたが、疑念の声を鎮めるにはデータはまだ不十分だ。
飛躍のときを迎えた量子シミュレーター
本格的な量子コンピューターが登場するのは、まだまだ先の話だ。その前段階として、量子系(量子システム)をシミュレーションできる機械があり、最近、それに対する関心がますます高まっている。
Japanese Author
軸索にできる「小さな突起」に、シナプスの形成と成熟のカギ!
脳にある膨大な数のニューロンは、シナプスでつながれることで回路を構築し、記憶、学習、運動などの機能を果たす。しかしこれまで、シナプスができるようす自体をリアルタイムで詳細にとらえた研究はなく、その分子メカニズムにも、多くの謎が残されていた。このたび、東京大学大学院医学系研究科の岡部繁男教授らは、イメージングの手法により、シナプスの形成過程を鮮明にとらえることに成功した。
News & Views
自発的流動によって動き回る液滴
生体の特性を示す生体物質の集合体が生体外で構築された。これにより、細胞内で起こる動的な再組織化の物理的側面が明らかになるかもしれない。
約120億年前の最も遠い超新星を発見
地球から非常に遠い距離にある2つの「超光度超新星」が発見された。この超新星は、ビッグバンからわずか15億年後に誕生したものだ。 約120億年前の幼年期の宇宙には、こうした「超光度超新星」はありふれた存在だったのかもしれない。
News Scan
抗体薬が足りなくなる!?
免疫との関連性が判明し、精神疾患向けに需要が急増
ダイヤモンドの惑星
地球とは化学組成があべこべの系外惑星が見つかった