2013年3月号Volume 10 Number 3
最古の星が発見された
太陽系からわずか190光年というすぐ近くで、宇宙誕生ビッグバン(137.7億年前)の直後に生まれた星が見つかった。これはHD 140283という恒星で、ほぼ完全に水素とヘリウムからできていて、古い星であること自体は昔からわかっていた。今回、ハッブル宇宙望遠鏡の「ファイン・ガイダンス・センサー」で太陽系との距離を精確に求め、さらにその固有光度を算出することで、139億歳±7億歳という最古の値が得られた。驚くべきは、この星が第二世代の星であること。つまり、第一世代の星が誕生して爆発し、次に第二世代ができるまで、わずか数千万年しかなかった計算になる。
Editorials
国際リニアコライダーILCは、日本で
日本の科学者による次期大型衝突型加速器への取り組みは、国際的な支持に値する。
Seven Days
News
1個の細胞から、ゲノム塩基配列を読み取る
新しいDNA塩基配列読み取り法が登場した。個々の細胞どうしのDNA比較が簡単にできるようになれば、がんやそのほかの生物過程に関する手がかりが得られるはずだ。
Free access
宇宙とほぼ同年齢の星を発見
太陽系に近いある星が、これまでに判明した中で最古の星であることがわかった。この星はビッグバンからまもなくの132億年前に誕生したが、第一世代の星ではなく、後の世代の星と考えられる。
絶対零度より低温の量子気体
超低温原子が、絶対零度より低温の材料への道を開く。
質量だけが決める原子時計の時間!?
原子の質量に基づいて時間を計る原子時計が製作された。
大富豪がスイスの製薬施設を買収して、大学に寄付
閉鎖されたメルクセローノ社の施設が、バイオ技術研究の産学連携拠点として生まれ変わる。
サハラ砂漠での再生可能エネルギー発電事業に暗雲
サハラ砂漠で計画中の巨大な再生可能エネルギー開発プロジェクトDESERTECから、シーメンス社が撤退する。
大手バイオテク企業が、ジェネティクス企業を買収
アムジェン社によるデコード・ジェネティクス社の買収は、医療データと遺伝学データを統合する価値が、いかに高いかを物語っている。
「トポロジカル絶縁体」の発見
SmB6に関する最新の研究成果は、40年来の懸案である「バルク材料としてのトポロジカル絶縁体」へと結びつくかもしれない。
深海の太古の泥層から、カビが発見された
海底堆積物の深層部からカビが見つかった。そのカビはペニシリウム属であることから、未知の抗生物質が得られる可能性がある。
ナノ粒子の爆発をカメラが捕らえた!
燃焼現象を利用して、ナノ粒子を製造する研究に拍車がかかっている。
News Features
コンクリート・ジャングルの生態学
人々と建物、野生生物、環境汚染が、都市でどう作用し合っているかを生態学の視点でとらえる「都市生態学」が注目を浴びている。
コンピューターの高性能化は熱との戦い
超小型回路は小型化すればするほど高温になる。技術者たちはコンピューターの新しい冷却法を模索し続けている。
Japanese Author
少数分子の反応が生物を支配する!?
例えば、遺伝子の物質的本体であるDNAは、1個の細胞中にたった2分子ずつしか存在しない。こんな少数個の分子の挙動を論じるのに、統計学的手法は使えない。もしも生命の本質に迫りたいなら、新たな原理を探らねばならないのだ。そう信じる永井健治・大阪大学産業科学研究所教授は、従来の生化学の常識をくつがえす「少数性生物学」の概念を世界に向けて発信する。
News & Views
熱アシストによる高変換効率の有機発光材料
蛍光性有機分子の設計によって、高効率発光ダイオードの作製が可能になった。このデバイスは、従来品のライバルになるかもしれない。
脱アセチル化による細胞死
壊死はさまざまな疾患に関連して見られるが、プログラム細胞死の中で、おそらくは最も解明が進んでいないものだ。今回、サーチュインというタンパク質が、脱アセチル化反応を介して壊死の一部を調節していることが明らかになった。
恒星進化における「真の原始星」を発見
恒星として誕生するわずかに前の段階にある「真の原始星」が、ついに発見された。巨大分子雲が重力収縮して完全に成熟した恒星になる過程には、これまでミッシング・リンク(失われた環)があった。今回の発見は、それをつなぐものとなるだろう。
News Scan
宇宙飛行士に安眠を!
新しいLED照明が人間を眠りやすくする
過去をのぞくワームホール
木版画に残された木食い虫の穴が教えてくれること