2015年7月号Volume 12 Number 7

ヒト胚ゲノム編集の波紋

ゲノム編集と呼ばれる手法を使えば、生命の設計図であるゲノムを1塩基単位で思い通りに書き換えることが可能だ。この技術には農畜産業から医療に至るまで幅広い分野から期待が集まっているが、ヒト受精卵の遺伝子改変を行ったという論文が4月に発表され、物議を醸している。遺伝子改変された受精卵はいずれ生殖細胞にも分化するからだ。後世に影響を及ぼすことから議論が沸騰しているが、どんな遺伝子改変なら問題がないのか、現時点では明確な規定がない。同号に、ヒトの遺伝子治療に使える小型Cas9ヌクレアーゼの発見についても掲載した。この技術の臨床応用が近いことは明らかだ。

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Editorials

Free access

動物実験の検出力を確実なものとするために、統計学に基づいた実験計画立案が研究者に求められている。その実現には、研究機関をはじめとするさまざまな支援が必要だ。

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Research Highlights

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News

ルーマニアで出土した4万年前の下顎骨のゲノムが解析され、この現生人類の4~6世代前の祖先にネアンデルタール人がいたことが分かった。これまで混血が起こったのは中東でのみだと考えられていたが、 今回の研究結果で欧州においても起こっていた可能性が高まった。

鳥類進化におけるくちばし誕生の謎に迫ろうと、発生中のニワトリ胚で恐竜のような鼻面を作る試みがなされた。

黄色ブドウ球菌のゲノムから、より小さなCas9酵素が発見された。 このCas9ならば臨床で使われる遺伝子治療用のベクターに組み込めることから、CRISPRによるゲノム編集でヒトの遺伝性疾患を治療できる可能性が高まった。

ヒト胚の遺伝的改変を行った研究が報告されたが、その倫理的問題に関しては科学者の間にも意見の食い違いがある。

トゥルカナ湖西岸で、これまでに発見された中で最古の石器が出土した。330万年前のものであることから、ヒト属出現以前に石器文化が存在していた可能性が高まった。

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News Features

輸血は、今日の医療で最も過剰に行われている治療の1つであり、その費用は数千億円に上る。研究者たちは輸血を減らす方法を模索している。

発がんに大きく関わるRasタンパク質。これを標的とする治療薬は、30年に及ぶ探求にもかかわらずまだ見つかっていない。だが、実験手法が進歩したことで、この強敵からいったんは遠ざかった研究者が再びこの分野に参戦するようになってきており、新たな切り口でRasに挑み始めている。

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Japanese Author

体が扁平になる奇妙なメダカの変異体が発見された。どうして扁平になるのか — 10年余りにわたる探索の結果、ようやくその謎が解かれた。普通のメダカの細胞には、重力に押しつぶされないような仕組みが働いていたのだ。その仕組みが存在しなかったら、ヒトはもちろん地球上の生物の大部分は、今の形をしていなかったかもしれない。

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News & Views

原子3個分の薄さの遷移金属ダイカルコゲナイド半導体層を、4インチウエハースケールで均一に成長させることに成功。電子機器の究極の小型化実現が、また一歩近づいた。

マイクロRNA配列の前駆体の非コード領域にペプチドがコードされていることが分かり、新しい遺伝子調節段階が明らかになった。遺伝子の間にある「がらくた」配列は、がらくたではないのかもしれない。

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News Scan

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