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2017年11月号Volume 14 Number 11
反物質研究の最前線
物質の鏡像である「反物質」。物質と反物質は初期の宇宙では同じ量だけ生成したとされるが、反物質は宇宙にはほとんど存在していない。欧州原子核研究機構(CERN)では6つの実験チームは、この謎を説明できる反物質と物質の性質のわずかな違いを見つけ出そうと、それぞれの手法で挑んでいる。これまでのところそうした違いは見つかっていないが、発見されれば、宇宙をのぞく新しい窓が開かれる。
Editorial
News
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iPS細胞でサルのパーキンソン病症状が緩和
iPS細胞から作製したニューロンをパーキンソン病モデルのサルに移植したところ、2年間にわたって症状の改善が観察され、その間、移植ニューロンは有害な作用を引き起こさなかった。
コウモリはガラス張りのビルが「見えない」
ガラス張りのビルのように平滑面で覆われた垂直な建造物は、コウモリの反響定位システムでは「見えない」らしい。
ワラビーの母乳は第2の胎盤
高機能の胎盤を持たないとされてきた有袋類だが、胎盤様の構造と乳がその役割を果たしているようだ。
「鎧竜」の鋭い突起はディスプレイ用だった?
保存状態が極めて良好な曲竜の新種の化石について軟組織の詳細な分析が行われ、この恐竜が、派手な棘状の突起を仲間へのディスプレイとして使っていた可能性が示唆された。
タヒチの蚊の掃討作戦
蚊の共生細菌ボルバキアを使う手法で南太平洋諸島から蚊を一掃する試みが進んでいる。
エルニーニョ現象で熱帯の森林が二酸化炭素の放出源に
強いエルニーニョ現象による高温や干ばつで、熱帯の森林が放出する二酸化炭素量が大きく増加していたことが分かった。
Ia型超新星の発生プロセスは2つ?
宇宙の距離計として使われているIa型超新星について、よく知られた旧来の発生シナリオを裏付ける特徴的な観測結果が初めて得られ、発生プロセスは2つあるという見方が強まっている。
乱流の謎が明らかに
乱流の物理学は、未解決の難題として知られる。このほど、流体の中に生じる大小の渦がエネルギーを受け渡して散逸させる過程がシミュレーションによって再現された。
宇宙の物質分布の「むら」は意外に小さかった
暗黒エネルギーサーベイの観測結果に基づく地図が報告された。予想外の結果だが、宇宙論の標準モデルと矛盾するほどではなかった。
統計学の大物学者がP値の刷新を提案
新発見の統計的有意性を評価するために、科学者が好んで用いるP値の閾値は0.05から0.005に引き下げるべきであると、統計学の大家たちは主張する。
生態学者らが大規模な再現研究を実施
野外研究の信頼性向上への筋道をつけるため、欧州の複数研究室が「研究の再現性」を確かめる実験を行った。
News Feature
反物質研究の最前線
脚光を浴びるCERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の陰で、新しい物理学を模索する複数の実験チームがしのぎを削っている。
Japanese Author
ゲノム刷込みを維持し高効率にES細胞作製
多くの研究室でES細胞を容易に樹立できるようになったのは、培養成分の改良によるところが大きい。2008年には血清の代わりにMEK1/2阻害剤とGsk3β阻害剤を添加する画期的な手法が登場し、均一で質の良いES細胞を高効率で樹立できるようになった。ところが、この手法で樹立したES細胞では、親から受け継いだはずのゲノムインプリンティングが消去されていて、厳密なレベルでの個体発生能を持たないことを、山田泰広・京都大学iPS細胞研究所(CiRA)教授らは突き止めた。そのうえで、ゲノムインプリンティングを維持したES細胞を高効率に樹立する方法も見いだした。
News & Views
系外惑星大気にオゾン層に似た層を発見
系外惑星の大気の性質が盛んに議論されている。ホットジュピターと呼ばれる系外惑星の熱スペクトルから、組成は不明だが、地球のオゾン層に似た層の存在が明らかになった。
苦味と甘味の知覚に必要なガイダンス分子を発見
苦味や甘味などの味覚に関する情報は、それぞれの味覚に特異的な経路を介して、マウスの舌から脳へ伝達される。このたび、セマフォリンタンパク質がこれらの経路の配線を誘導していることが明らかになった。
News Scan
ソーラー推進宇宙船に期待
「ライトセイル2号」が近く打ち上げられる