2017年2月号Volume 14 Number 2
4つの性がある小鳥
スズメに似た野鳥、ノドジロシトドには、頭部が黄褐色のものと白色のものの2種類がいて、それぞれ行動様式が異なることが知られている。約30年にわたる研究から、この鳥のつがいのほとんどが黄褐色と白色の組み合わせであり、4つの性があるかのように振る舞うことが明らかになった。2種類の違いは大規模な染色体逆位にあると予想されていたが、この逆位のために、相同だった染色体が「2つ目の性染色体」となったと考えられる。これほど大規模な逆位は脊椎動物ではまれだという。
Editorial
Research Highlights
News
がん細胞は脂肪を利用して転移する
がん細胞の弱点が分かったかもしれない。マウスでの研究で、転移するがん細胞は脂肪をエネルギー源として利用している可能性が示されたのだ。
グラフェンでスライム状玩具が圧力センサーに!
スライムに似た粘弾性のポリマー材料にグラフェンを混ぜると、ごく微小な圧力変化をも検知できる、優れた圧力センサーに変身させられることが分かった。
南極海に巨大な海洋保護区
南極大陸沿岸の南極海に世界最大の海洋保護区を設けることで各国が合意した。
巨大衝突クレーターの形成過程が明らかに
恐竜絶滅のきっかけとされている小惑星衝突の巨大クレーターで大規模な掘削プロジェクトが行われ、得られたコアサンプルから、謎の環状構造「ピークリング」の起源をはじめ、巨大衝突クレーターの形成過程の詳細が明らかになった。
研究評価にNIH新指標を取り入れる動き
生物医学分野の研究を支援する各国の助成機関で、米国NIHが開発した新しい指標を導入する動きが広がりつつある。
News Features
とっておき年間画像特集2016
政治的な混乱や衝撃が続いた2016年、科学の世界にも次々と驚きがもたらされました。微細な結晶から広大な宇宙まで、さまざまなスケールで捉えられた画像の中から興味深く印象的なものを、Natureが厳選してお届けします。
4つの性がある小鳥
スズメに似た野鳥、ノドジロシトドの配偶者選びは、雄か雌かだけでなく体色にも左右されるようだ。生態学者Elaina Tuttleは、こうした配偶システムの基盤にある奇妙な染色体の進化を解明することに生涯を捧げた。最後は、がんと闘いながら研究生活を全うした。
Japanese Author
自閉スペクトラム症研究から「個性」の探求へ
脳や神経系がどのように発生・発達するか、その仕組みを研究してきた大隅典子・東北大学大学院医学系研究科教授。近年は、自閉スペクトラム症の研究にも取り組んできた。2016年7月、「個性」を創り育む脳の仕組みに挑むため、脳科学に加え、人文・社会系、理工系分野の力を集結した大規模プロジェクトを立ち上げた。科学で「個性」に正面から取り組む初めてのプロジェクトである。
News & Views
たっぷり眠るマウスと夢を見ないマウス
哺乳動物の睡眠は、急速な眼球運動を伴う睡眠(レム睡眠)と急速な眼球運動を伴わない睡眠(ノンレム睡眠)からなる。遺伝子変異マウスの大規模な睡眠異常スクリーニングにより、ノンレム睡眠の必要量を決める遺伝子と、レム睡眠の終止に関与する遺伝子が突き止められた。
テロメラーゼに依存しないテロメア伸長の機構
細胞の寿命は、染色体末端(テロメア)の反復配列の短縮によって制限されているが、一部のがん細胞は、テロメラーゼ非依存性テロメア伸長(ALT)と呼ばれる機構によってテロメア長を維持し、この運命を回避している。今回このALTの機構が分子レベルで詳細に解明された。
光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察可能なナノ粒子プローブ
蛍光ナノダイヤモンドと金ナノ粒子を組み合わせた生体適合性プローブが開発され、光学顕微鏡と電子顕微鏡の両方を使った細胞イメージングが可能になった。これにより、生物学研究に新たな進展がもたらされることだろう。
News Scan
アザラシの時間感覚
1秒足らずの違いをちゃんと識別
血液がん治療に新手法の可能性
アミノ酸「バリン」が造血幹細胞に及ぼす影響に着目