2017年7月号Volume 14 Number 7
ループ形成の謎に挑む研究者たち
核内で分散していたクロマチンは、細胞の分裂期になると凝縮されて染色体となる。このとき、DNAはなぜ絡まったりしないのだろう。その答えは、イヤホンコードをクリップで留めて絡まないようにするのと似ているのかもしれない。クロマチン繊維がコヒーシンによりループ状に束ねられ、それが幾重にも折りたたまれている、という説が有力なのだ。ゲノムがループを作って遺伝子の近くにその調節領域を持ってくることは30年以上前から知られていたが、ループ形成に必要な因子やその仕組みについては議論が続いている。
Editorial
News
人類の北米への到達は通説より10万年も早かった?
米国カリフォルニア州の遺跡から出土したマストドンの折れた骨と割れた石の調査から、新世界に最初に到達したヒト族はホモ・サピエンスではなかった可能性が出てきた。
研究室でついに血液幹細胞の作製に成功
長い間試行錯誤が続いていた血液幹細胞の作製法を、2つの研究チームがマウスとヒトで完成させた。
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イモムシには腸内細菌がいない?
イモムシやナナフシなど一部の昆虫の腸内には、共生細菌がいないらしい。また、わずかだが脊椎動物でもこうした例が報告されており、「腸内細菌は全ての動物で不可欠な存在」という近年定着しつつある概念に疑問を投げ掛けている。
世界初のナノカーレース開催!
ナノメートルサイズの自動車が金でできたサーキットを走るという、ユニークなレースが開催された。
ミトコンドリア置換法で想定外のDNA混合
置換療法で生まれた男児が母親由来のミトコンドリアDNAを一部持っていることが分かった。だが両親は、長期の経過観察を望んでいないという。
免疫チェックポイント阻害剤で一部患者のがん悪化?
免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれるがん治療薬で、がんが悪化する場合があることが報告された。研究者らはその理由を追究している。
カッシーニによる土星探査が最終章へ
NASAの土星探査機が、土星とその環の間を初めて通過した。
靴紐が解けてしまう謎が解けた
靴紐の結び目は、歩行中に働く大きな力によって急速に解けることが明らかになった。
世界各地で「科学のためのデモ行進」
4月22日のアース・デイに世界各地で行われた「科学のためのデモ行進」には、科学者をはじめとする多くの人々が参加し、科学の重要性と気候変動への懸念を呼び掛けた。
News Feature
ループ形成の謎に挑む研究者たち
DNAはなぜ絡まずに収納されるのか。これはゲノム高次構造に関する最も悩ましい問題の1つだが、「ループ状ドメイン」の形成がその1つの答えとなりそうだ。ただし、ループ形成を推し進めているものの正体については見解が分かれている。
Japanese Author
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人工硝子体として長期埋め込み可能なゲル
大量の水を含み弾力性に富んだハイドロゲルは生体軟組織と似ており、医療材料として注目されている。一方で、膨潤、白濁、炎症などを引き起こすといった問題も抱えており、広く実用化されているものはあまりない。このほど、酒井崇匡(さかい・たかまさ)・東京大学大学院准教授らは、膨潤や白濁の問題をクリアし、液体からゲル化までの時間も制御できる、注入可能なハイドロゲルを開発。実際にこのハイドロゲルをウサギに導入し、長期の埋め込みが可能な人工硝子体としての安全性を確認した。
News & Views
子育て行動の遺伝学的基盤
ハイイロシロアシマウスとシカシロアシマウスの子育て行動は異なっており、その違いは父親で極めて顕著に見られる。両者の種差の遺伝学的解析から、基盤となる神経学的な機構の一端が明らかになった。
ガラスの3D印刷の仕方
一般的な3Dプリンターを使ってガラス構造物を作る方法が編み出された。
蚊が飛べる理由を解明
蚊はその細長い羽を、同程度の大きさの昆虫の4倍の振動数で羽ばたいている一方で、羽ばたきの振幅はごく小さい。蚊の飛行の高速度撮影とコンピューター計算による分析から、蚊は、他の動物の飛行でこれまで見つかっていなかった独自の空気力学メカニズムで飛んでいることが分かった。
1つのタンパク質で2つの神経変性疾患を治療
アタキシン2(ataxin 2)タンパク質の生成を抑制する分子によって2つの神経変性疾患の症状を改善できることがマウスモデルで示された。臨床試験におけるこのアプローチの成功に大きな期待がかけられている。
News Scan
サメの祖先に手掛かり
4億年前の古代魚の化石にサメと硬骨魚の両方の特徴が見つかった
血液検査で放射線被曝を判別
マイクロRNAがマーカーになる
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