2017年6月号Volume 14 Number 6
深海の美しき怪物「魚竜」
恐竜が陸上を闊歩している時代に海を支配していた巨大な海生爬虫類、魚竜。恐竜の存在がまだ知られていなかった19世紀初頭、魚ともイルカとも見まごう奇妙な姿の爬虫類化石に古生物学者は興味をそそられた。だが、しばらくして恐竜化石が発見され、研究者の関心は恐竜へと移ってしまった。100年以上にわたる停滞期にあった魚竜研究だが、近年大いに活気付いている。新種の発見により、謎に包まれていた水生適応に至る過程が浮かび上がってきたのだ。
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Open Research Forum 研究の質向上とオープンイノベーションの促進
Editorial
Research Highlights
News
ホウセキカナヘビの背中のデジタル迷彩柄が生まれる仕組み
ホウセキカナヘビの背中の模様の形成の仕組みは、動物の体の模様を記述する一般的な規則には当てはまらないと考えられてきた。このたび、このトカゲでは、鱗の1枚1枚が隣接する鱗との間で色を調節していて、こうした仕組みは「セルオートマトン」という数学モデルに当てはまることが分かった。
脳機能を若返らせる臍帯血成分
臍帯血漿に含まれるタンパク質の1つを加齢マウスに投与すると、学習・記憶テストの成績が向上することが明らかになった。
古代の巨大噴火の痕跡が明らかに
地球環境を大きく変えるような巨大噴火が過去30億年間に何度も発生していたことが、地質学者の研究により明らかになってきた。
ネアンデルタール人の歯石DNAから生活様式が見えてきた
歯石DNAにはマイクロバイオームなどの情報が詰まっている。このたび、ネアンデルタール人の歯石から、彼らの生活が詳細に描き出された。
脅威となる耐性菌ランキング
世界保健機関は、対策が必要な耐性菌をランク付けしたリストを初めて公開した。新たな抗生物質の研究開発にぜひ役立ててほしいという意図からだ。
カエルで蛍光発光を初めて確認
南米のアマガエルの一種で未知の蛍光現象が発見された。新しい発光機構が明らかになるかもしれない。
マウスの脳全体を包む巨大ニューロン
ニューロンを三次元画像で追跡できる新技術により、意識に関連する領域から出た神経細胞が「イバラの冠」のように脳を包み込んでいることが明らかになった。
汎用量子コンピューティング・サービスが始まる
量子コンピューティング技術は未完成だが、IBM社はその市場を創造するための汎用量子コンピューターとサービス提供プラットフォームの構築を計画している。
News Feature
深海の美しき怪物「魚竜」
恐竜の時代に広大な海を支配していた巨大な爬虫類「魚竜」。細長い吻と大きな眼を持つこの謎に満ちた深海の怪物は、恐竜人気に圧されて長く影が薄れてしまっていたが、近年、再び関心が高まっており、その驚くべき進化史や生態が解き明かされつつある。今、魚竜研究が熱い。
Japanese Author
マクロファージの概念を変える発見
免疫反応におけるゴミ処理係として知られるマクロファージが、近年、大いに注目を集めている。マクロファージは1種類の細胞ではなく、さまざまな機能を持って分化し、いろいろな疾患に特異的に働く多様なマクロファージが複数種存在するというのだ。一連の研究を牽引するのは、大阪大学審良静男研究室の佐藤荘助教である。
News & Views
シルクロード出現の謎がデジタル地図で明らかに
シルクロードなどの遠距離交易ネットワークの形成に、その周囲の地形と人間社会との関係はどのような影響を及ぼしたのだろうか。このほど、デジタルマッピングとコンピューターモデリングから新たな知見がもたらされた。
「時間結晶」を初めて実現
結晶は空間の中で同じ構造が繰り返される物質状態であり、それが自発的に生成する。一方、物理量が時間とともに周期的に振動し続ける自発的な物質状態を「時間結晶」という。時間結晶は仮説上の存在だったが、今回、2つの研究グループがある種の時間結晶を初めて作り出したと報告した。
脳内の地図に表された音の「景観」
動物の脳内では、一部のニューロン集団が特定の地理上の位置で発火して、空間の中の自分の位置を示す神経系上の地図を作り出す。この回路が聴覚地図の基礎にもなり得るという知見は、認知を生み出すニューロン構造の解明に役立つだろう。
News Scan
ニュートリノで核監視
秘密計画を暴くための新プロジェクト
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