2024年4月号Volume 21 Number 4
ヒトの風邪が大型類人猿には命取りになる理由
観光客が野生動物の生息地に入り込む機会が増えるにつれ、チンパンジーやゴリラなど絶滅の危機にある動物集団にヒトが病原体を持ち込む事例が増えてきている。これらの病原体は、世界中の小学校で悩みの種になっているものであり、子どもから病原体をもらった大人が森に入ることで大型類人猿に病気をうつしていることが分かった。
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研究のインパクト向上へ向けて
科学コミュニケーションとAIの活用と課題
日本の研究コミュニティーの課題とその解決策を探るため、シュプリンガーネイチャーは、アカデミア、研究資金配分機関やメディアから有識者を招いた第2回目となる「ジャパンリサーチアドバイザリーフォーラム(JRAF)」を2023年9月28日に開催。今回は、昨年の議題であった「研究、科学コミュニケーション」と、今年から新しく加えた「AIの研究の取り組みへの影響」の2つのテーマについて議論を繰り広げた。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「BCG:ワクチンに対する免疫応答に個人差がある理由」、「直進:ヘビ型ロボットの新しい動き」、「プランテーションに出入りする赤ちゃんザルの生存率は低い」、「ヒッグス粒子の珍しい崩壊の証拠」、他。
News in Focus
細菌を捕食者にするメガタンパク質
このほど発見されたタンパク質は、既知のタンパク質の中では最大であるかもしれず、水生細菌が他の微生物を捕食するのを助けている可能性がある。
グーグルのAIは患者への接し方が医師よりも良い
開発に携わった研究者たちは、この人工知能システムが医療の民主化を促進することを期待している。
オーストラリア先住民のゲノムは極めて多様かつ独特だった
先住民のゲノム情報は、ヒトの遺伝的多様性の知識を深め、先住民集団の健康の改善につながると期待される。
古代DNAでたどる欧州の多発性硬化症の起源
1600人を超える古代人のゲノムの解析によって、現代の欧州人に見られる多様な形質の起源が明らかになった。
超知能AIは突如として出現するものではない
ChatGPTのようなAIツールはあるとき飛躍的に進歩するように見えるが、実際には予測可能な進歩をしている。
「自動」ラボがAIとロボット工学を駆使して酵素の改良に成功
自動化されたラボシステムが、半年で、酵素をより高温で機能するよう改良した。
CRISPR遺伝子編集はアルツハイマー病の治療にどのように役立ち得るのか
一部の研究者は、変異によって引き起こされるタイプのアルツハイマー病を遺伝子編集を使って治療できるのではないかと期待を寄せている。
ウイルスの注射で、がんと闘うCAR T細胞を作る
患者から免疫細胞を体外へ取り出すことなく、免疫細胞の遺伝子編集を行う前臨床研究で、有望な成果が得られた。
Features
自己免疫の嵐を鎮める
研究者たちの数十年にわたる挫折と失敗の果てに、自己免疫疾患で破綻した「免疫寛容」を回復させる治療が現実味を帯びてきた。
ヒトの風邪が大型類人猿には命取りになる理由
観光客が野生動物の生息地に入り込む機会が増えるにつれ、チンパンジーやゴリラなど絶滅の危機にある動物集団にヒトが病原体を持ち込む事例が増えてきている。
News & Views
つわりは胎児が放出するホルモンと関係する
胎児が産生するホルモンに対する妊婦の感受性が、妊娠時の重篤な吐き気やおう吐のリスクの原因となっているかもしれない。この知見によって、妊娠悪阻による衰弱性症状の治療戦略開発に光明が差す可能性がある。
赤泥から鉄を抽出する
アルミニウムの製造過程では有害廃棄物の「赤泥」が毎年大量に排出されている。今回、こうした赤泥を製鋼用の鉄の供給源にすることのできる、持続可能と考えられる処理プロセスが開発された。
新たな抗生物質で耐性菌を狙い撃ち
アシネトバクター属細菌Acinetobacter baumanniiの薬剤耐性株によって引き起こされる感染症は、臨床での治療が難しかった。今回、これらの細菌に対処できる可能性のある新しいクラスの抗生物質が特定された。
ニュートリノ解明は「大気ニュートリノ」で可能
ニュートリノの性質を探るため、科学者たちは、宇宙を調べたり、実験室で実験を行ったりすることが多い。しかし、地球の大気中で生じたニュートリノを使うことにより、長く解明できなかったニュートリノの性質が分かる可能性があり、その実験計画は既に進んでいる。
Advances
コイン投げの公平性
表か裏か? その確率は五分五分ではない。
Where I Work
Jennifer Grenz
Jennifer Grenzは、ブリティッシュ・コロンビア大学 (カナダ・バンクーバー)林業学部の先住民生態学者。