2024年6月号Volume 21 Number 6
タンパク質画像は動画の時代に
時間分解クライオ電子顕微鏡法(time-resolved cryo-electron microscopy)と呼ばれる手法は、生命の分子機構の静的なスナップショットを撮影していた構造生物学者を、これらが動作する仕組みを明らかにする動画を撮影する映画監督へと変えた。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「天体をのみ込んだ白色矮星の表面に刻まれた傷」「新生児の唾液のプール方式検査で重大な感染症を効率よく発見」「古代アメリカ人はタバコを吸わずに飲んでいたのかもしれない」「ガラパゴスゾウガメは島にたどり着いたときから大きかった」、他。
News in Focus
超新星SN1987Aで中性子星残る
1987年に近隣の銀河に出現した超新星SN1987Aで、爆発後に中性子星が残っているとみられることがジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で分かった。
費用は従来の10分の1のインド製の最先端のがん治療薬
インドでNexCAR19と呼ばれるCAR T細胞療法が承認され、この革新的な治療法が低・中所得国で利用しやすくなると、期待が高まっている。
テキストから動画を生成するAIツール「Sora」は科学と社会に何をもたらすのか
オープンAIが提供する最新のツール「Sora」は重要な問題を提起している。
抗肥満薬がHIV感染者の健康状態を改善
ブロックバスター薬である抗肥満薬セマグルチドは抗HIV薬による体重増加を抑制する。
チャットボットAIは方言から人種差別的な判断を下す
大規模な言語モデルの中には、標準的な方法では除去できない隠れたバイアスを持つものがある。
妊娠により「生物学的年齢」が上がるが、出産すると回復する
妊娠すると、DNA上に高齢者に見られるようなエピジェネティックなパターンが形成される。
中国が作成した「疑惑の学術誌」リストの最新版
中国で、「早期警戒学術誌リスト」を更新している図書館司書の楊立英(Yang Liying)に話を訊いた。
数百万本の論文がネット上から消える恐れ
DOIの分析から、論文のデジタル保存が学術知識の急増に追い付いていないことが明らかになった。
Features
2024年は気候スーパー選挙イヤー
2024年には二酸化炭素排出量が特に多い5つの国や地域で選挙が実施され、これらの結果は、今後数年間の気候変動対策の方向性を左右する可能性がある。
網羅的アプローチで精密医療の実現へ
最適な治療薬を見つけるために、患者個々人のがん細胞を何十種類もの薬剤で処置して反応を調べる。
タンパク質画像は動画の時代に
時間分解クライオ電子顕微鏡法は細胞の内部の仕組みを教えてくれる。
Japanese Author
Free access
老化を制御する時代へ
老化の研究が面白くなってきている。細胞の老化がどのように個体の老化を引き起こすのか。長らく謎だったその仕組みが徐々に明らかになってきた。老化細胞の除去薬の開発や老化に果たす免疫の役割など、注目すべき研究成果を次々に発表してきた東京大学医科学研究所の中西真教授と金沢大学の城村由和教授(当時、中西研究室助教)に話を訊いた。
News & Views
電池の性能を飛躍的に向上させる溶媒のトリック
サイズの小さな溶媒分子が、リチウムイオン電池の電解液中でこれまで知られていなかったイオン輸送機構を可能にし、充電の高速化と低温での性能向上を同時に実現できることが見いだされた。
骨髄での造血を画像化
マウスの骨において血液細胞の産生が画像化され、定常状態と、出血や感染などのストレス要因に応答した骨髄での細胞系譜の構成が明らかになった。
鯨類のデータで探る閉経の進化
一部のハクジラ類にはヒトと同様に閉経が見られるが、その理由は何なのか。今回、鯨類の生活史に関するデータの比較解析によって、閉経の進化の謎を解明するのに役立つ可能性のある手掛かりが得られた。
Advances
音楽的なアラーム音
音量を上げずに効果を上げる方法。
受精卵の細胞分裂エラー
卵子や精子そのものの異常よりも受精後に初めて分裂する際のエラーが大きな障害に。
Where I Work
Gabriel Renato Castro
Gabriel Renato Castroは、スパイラル・ブルー・フード・スパ社(チリ・チンコルコ)の設立者・最高経営責任者。