2024年7月号Volume 21 Number 7
孤独が健康に悪いのはなぜか
多くの人は孤独感から、簡単には抜け出せない。そして、孤独感が長期化すると、心血管疾患や認知症をはじめとする多くの疾患のリスクが上昇する。こうした効果に脳がどのように関わっているのか、さらには、孤独感にどう対処すべきか、研究が進められている。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「苦味受容体の出現時期」「秩序があり微調整できる蛍光ガラス」「巨大な雹を降らせた海洋熱波」「音波で泡を支える」、他。
News in Focus
気候変動が時刻の基準に影響を及ぼす可能性
極域の氷の融解が地球の自転に影響を及ぼし、「うるう秒」を入れる時期が予想より3年遅くなる可能性がある。
右利き、それとも左利き? 胚タンパク質が利き手決定に一役
ヒト脳の優位半球を決定するのは、構造タンパク質であるチューブリンをコードする遺伝子である可能性が示された。
原始重力波の検出を目指すサイモンズ天文台
チリに近く完成予定のサイモンズ天文台は、宇宙誕生直後の宇宙の急速膨張に由来する重力波の痕跡を探す計画だ。
グーグルのAIが咳の音から病気を判断?
機械学習システムを利用して新型コロナウイルス感染症や結核を検知しようとする同社の試みは、既に有望な結果を出している。
米国で体外受精が危機に?科学者たちは不妊治療の将来を危惧
米国アラバマ州の最高裁判所が、子宮外のヒト胚も子どもと見なすべきだという判決を下したことで、医師や科学者の間に懸念が広がっている。
多層グラフェンで観測された電子の奇妙な振る舞い
多層グラフェンを六方晶窒化ホウ素層で挟んだ二次元材料において、2例目となる分数量子異常ホール効果が観測された。
室温超伝導のデータはいかにして捏造されたか
訴訟において開示されたロチェスター大学の124ページに及ぶ調査報告書には、物理学者Ranga Diasの研究不正行為が詳細に記されていた。
窒素を固定できる藻類が初めて発見された
窒素ガスを有用な化合物に変換する「細胞小器官」によって、肥料必要量の少ない植物が実現するかもしれない。
Features
孤独はなぜ不健全なのか
社会的交流の欠如は、心血管疾患や認知症をはじめとする多くの疾患のリスク上昇につながる。この効果に脳がどのように関わっているのかについて、解明が進められている。
Free access
long COVID研究を主導する患者たち
long COVIDに関する主要な臨床試験の結果はまだ出ていない。そんな中、患者たちが研究を主導したり参加したりすることで、道を切り開こうとし始めた。
エコ不安症の時代
研究者たちは、異常気象による生活の破綻から将来への不安まで、気候変動が世界の人々のメンタルヘルスに及ぼす影響に気付き始めている。
News & Views
持続可能な森林管理は野生動物を救う
既に伐採の進んでいる熱帯林が森林管理協議会(FSC)の認証を得ることは保全にとって有益なのか。今回、アフリカで行われたFSCの認証林と非認証林の比較調査によって、こうした認証制度が熱帯林の生物多様性の保全に役立つことが示された。
リソソームの分裂因子に熱視線
細胞小器官のリソソームは、積み荷分子を運ぶ小胞と融合して積み荷分子を分解するが、絶えず小胞との融合をしながらも、そのサイズを維持する仕組みは分かっていなかった。今回、リソソームの分裂を助ける因子が発見された。
安定な可搬型光原子時計の開発と試験
今回開発されたロバストな小型光原子時計は、市販の高性能原子時計よりも小型である上、実験室や海軍艦船において同等の性能を示した。
ニューロンの炎症が記憶を持続させる
マウスにおいて、記憶を形成する際には、自然免疫系の機構に関与するニューロン集団が必要であることが分かった。意外なことに、炎症性シグナル伝達が長期記憶につながる可能性がある。
Advances
スヌーズボタンの効用
シャキッとした目覚めをもたらす――かも?
Where I Work
Lindonne Telesford
Lindonne Telesfordは、セントジョージズ大学(グレナダ)の公衆衛生研究者、准講師、副学部長。