2008年1月号Volume 5 Number 1
Editorial
News Features
2007年、とっておき画像集
科学的手法の記述は多くが観察から始まる。そして、この特集で紹介する画像も実にわくわくするような観察結果である。地球や宇宙の新しい画像は、巨大科学の出発点となるものだろう。しかし、見る者を強く引きつける科学的画像は、多くの場合、研究過程の最後に解答の1つの形として得られたものである。このような画像は、何か月もかけた精力的な研究の集大成であり、極めて高い質を漂わせつつ静かに語りかけてくる。題材は、タンパク質や材料の構造から、顕微鏡レベルの造形を見せる高解像度の画像、データをエレガントに可視化したものまでと幅広い。研究の開始段階や最終段階、もしくはどこか途中の段階で得られたこれらの画像は、2007年の最も印象深い画像の一部である。
波力発電は波に乗れるか?
波力エネルギーで再生可能エネルギー市場に参入しようという動きがみられるが、未解決の課題が多く残っている。Ewen Callawayが報告する。
自然免疫研究をリードする静かなる日本人
ノックアウトマウスの「生産工場」を擁する審良静男は、鋭い洞察力と静かな物腰で、世界の免疫学研究をリードしている。日本における最高レベルの研究センターを構築中であり、今、世界で最も論文が引用されている研究者を、David Cyranoskiが訪ねた。
核査察官研修体験記
国際原子力機関(IAEA)の核査察官の役割は、「非核兵器国」(米ロ英仏中以外の国)に赴き、核物質が平和目的のみに利用されているかどうかを確かめることにある。すべてが申告どおりというわけではないとき、査察官はどうやってそれを見破るのだろうか。米国のロスアラモス国立研究所で行われた核査察官の研修にGeoff Brumfiel記者が参加した。
Japanese Author
南極の氷の解析から氷期サイクルの仮説を検証(川村 賢二)
10万年周期で繰り返される氷期と間氷期。このサイクルは、北半球に降り注ぐ夏の日射量の増減が原因とされてきたが、それを裏づける証拠はこれまでなかった。国立極地研究所の川村賢二助教らは、南極の氷に閉じ込められた過去36万年分の大気を分析。この仮説を強く支持する結果が得られたとして、Nature 8月23日号に発表した1。南極の氷の分析結果について川村助教に話を聞いた。
News & Views
ゲノミクスの使徒となったショウジョウバエ
ショウジョウバエ12種のゲノム比較解析が行われたことは、我々にとっても意味がある。ハエからヒトまでの進化の間に選択圧に耐えて残ってきた塩基配列は、機能的に重要であるに違いないと考えられるからである。
Business News
ジェネリック医薬品企業の合併戦略
大型薬の特許が次々と失効する中で、ジェネリック医薬品メーカーは状況の変化に直面している。Meredith Wadmanが、その生き残り戦略に切り込む。
High School Scientist
一定距離を保ちつつ、後ろから追いかける買い物カートを作製(奈良女子大学附属中等教育学校)
過去に経験したことのない高齢化と少子化を迎えた日本。介護や日常生活の支援が急務だが、人手はまったく足りていない。不足部分をロボット技術で補えないかとの模索が続くなか、高校生たちが「モーションキャプチャシステム」を開発・応用し、特定の人物を後ろから追いかける買い物カートの作製に成功した。
News
コンピューターゲームでチンパンジーの子が大学生に勝利
若いチンパンジーの瞬間的な記憶能力は、ヒトよりすぐれている。
英語でNature
国家安全保障上の規制が植物病害発生時の対応の足かせとなる
新しい年が始まり、今年もさまざまな分野で科学技術のさらなる発展が期待されます。私たちの生活はその恩恵にあずかり、さらに豊かになるかもしれません。しかし一方で、研究が進めば進むほど、悪用されたときの危険性も高まることでしょう。 米国政府は、植物病原体が生物兵器に使われることを懸念して、その分野の研究を事実上規制する提案をしています。今回は、その動きに対する研究現場の反応について、読んでみましょう。