2010年8月号Volume 7 Number 8
C型肝炎ウイルスの強力な阻害剤が見つかった
C型肝炎は肝硬変や肝がんに移行する深刻な病気で、有効な一般的治療法が存在しない。今回、米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の研究チームが、C型肝炎ウイルスの「史上最強の阻害剤」BMS-790052を発見、希望がみえてきた。これは、NS5Aという酵素活性をもたないウイルスタンパク質を標的にした、全く新しいタイプの阻害剤だ。
Editorials
既存薬の新しい効能発見へ支援策を
既存の医薬品に新たな用途が見つかることがある。しかし、こうしたケースでは、製薬会社が臨床試験を進めるインセンティブがほとんどなく、何らかの保護支援策が必要だ。
News
はやぶさ、帰還する
小惑星探査機「はやぶさ」は、今後のサンプルリターン・ミッションに貴重な財産を持ち帰った。
メキシコ湾原油流出事故:深海でプルームが発生
Nature 記者が調査船「ペリカン号」に乗り込み、メキシコ湾原油流出事故現場付近の海洋汚染の現状を報告する。
我が名は、海の怪物「レヴィアタン」
史上最大の咬合(こうごう)部をもったマッコウクジラ類の化石が見つかった。
鍼治療の効果を科学的に検証
マウス実験により、鍼治療の効果に関する生化学的データが示された。
優れたランナーは代謝に秘密がある?
ランナーの体内で起こる化学的変化が体力と関係することがわかった。
LED から自在にもつれ光子を生成
高い信頼性で量子ビットを生成することにより、 高速コンピューターの実現が容易になるかもしれない。
合成ゲノムで人工細菌を作製
合成ゲノムで近縁生物種の細胞を「再起動」させることに成功し、自己複製可能な人工細菌が作製された。
マウスの全遺伝子の機能解明をめざす
国際マウス表現型解析コンソーシアムが巨額の資金提供を受けて始動した。
太平洋クロマグロも危ない
太平洋クロマグロの数は、大西洋クロマグロと同じように減りつつあるのかもしれない。
News Features
市民のための科学へ、模索は続く
米国立科学財団は、助成対象の研究プロジェクトにおいて、成果を社会に伝えたり役立てたりする取り組みを、きちんと実行するよう求めている。これを含めない提案書は審査もされないため、多くの研究者が当惑している。
史上最大の地震
これまで観測された史上最大の地震が、1960年5月に発生した「1960年チリ地震」だ。チリ地震から50周年を迎えた今、私たちが再認識しなければならないのは、この巨大地震が地震学にもたらした革命についてである。
Japanese Author
芳香族分子ピセンで、 超伝導現象を発見 (久保園 芳博)
亀の甲のベンゼン環が5個つながった芳香族分子のピセン(C22H14)に、カリウムをドーピング(注入)することによって、絶対温度18K(マイナス255 度)で超伝導状態が起こることが明らかになった。2008年に東京工業大学の細野秀雄教授らが見つけた「鉄系高温超伝導体」に続く、日本発の新たな超伝導体として期待が集まる。
News & Views
思いもよらなかった薬物標的
C型肝炎ウイルスの感染は肝疾患の主な原因の1つだが、幅広く有効な治療法が存在しない。今回、このウイルスに対する全く新しい強力な阻害剤が発見された。このことは、既成概念にとらわれずに研究を行う大切さを示している。
新型の超新星を巡る謎
従来の分類におさまらないタイプの超新星爆発が見つかった。しかし、爆発を起こす星の正体と、爆発のメカニズムはまだほとんどわかっていない。
News Briefing
空飛ぶ天文台
2010年5月25日、米国のNASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)が共同で開発を進めてきた赤外線天文学成層圏観測施設(SOFIA)が最初の空中観測を行い、木星の画像を撮影した。
水中の砂丘
砂丘は、砂や風の特徴によってさまざまな形に作り上げられる。地球に限らず、他の惑星でも風が吹き荒れる砂漠にみられる地形だ。砂丘の形成と動きにかかわる物理的メカニズムを調べるため、フランスの研究チームが、シミュレーションと水中実験を組み合わせた。
風が吹けば……
風のパターンが北極海の氷の量を変動させているという研究成果が発表された。
英語でNature
気泡が破裂するときに起こること
気泡が破裂するときに多数の「子ども」が生まれることが研究によって判明した。
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