2010年7月号Volume 7 Number 7
ネアンデルタール人の血が私たちにも流れている?
ネアンデルタール人は2万数千年前に絶滅したヒト属だ。クロアチアの洞窟で発見された骨から、そのゲノムDNA解析が行われた。この結果と、現代のフランス人、アフリカ人、中国人、パプアニューギニア人のゲノムを比較したところ、アフリカ人以外では、現代人との交雑を示す結果が得られた。6億年前、私たちの先祖は、地中海東部でネアンデルタール人と交わったらしい。
Editorials
論文オープンアクセスへの模索
科学論文の無料公開を拡大しようとする政府の力が強まっている。これに応えて、科学出版は多様化しつつある。
News
高効率の太陽電池を作る
はがしてはる ― ピール・アンド・スタンプ技術がガリウムヒ素半導体の商業生産に道を開く。
小惑星表面に氷と有機物を発見!
地球に海と生命をもたらしたのは小惑星なのだろうか?
築地市場移転問題を考える
データの不備が汚染土壌の浄化に対して疑惑を生んでいる。
アイスランド噴火と航空機の安全性
火山灰の広がりを予測するモデルは正確だったようだが……。
日本がエリート研究者へ高額助成金
日本の新しい科学研究費助成金FIRSTは、世界の第一線で活躍する研究者にしぼって、高額の資金を提供する。
多発性硬化症の双子のゲノム解析
一方のみが多発性硬化症を発症している一卵性双生児のゲノム解析の結果、発症の違いを説明できる、遺伝的レベル、エピジェネティックレベル、発現レベルでの差異は見つからなかった。
南極氷床下4000mの淡水湖を掘削
南極大陸の厚い氷の下に、隠された暗黒の湖が存在する。2011年、とうとうその秘密のベールがはがされる。2010年3月に開かれたある会合で、ロシア、英国、米国の科学者たちが、それぞれ違った性質をもつ3つの氷床下湖まで掘削を進め、地球上で最後に残された「地図のない生態系」を調査する計画を発表した。
天文学の主役に踊り出る光学干渉計
複数の光学望遠鏡を結合して、大口径の光学干渉計を実現する技術が成熟した。星の表面の詳しいようすも観測できるようになった。
ショウジョウバエの名前が変わる!?
ショウジョウバエ属の再編成が提案され、キイロショウジョウバエがショウジョウバエ属でなくなるかもしれない。
金星に向けて航行中
5月21日、日本の金星探査機「あかつき」を搭載した国産ロケットが打ち上げられた。探査機は12月に金星周回軌道に入り、金星の大気を調べることになる。
News Features
死海再生プロジェクト
イスラエルとヨルダンに接する死海は、近年湖面の低下が著しい。そこで紅海から水路を引いて、縮小する死海を蘇らせる計画が持ち上がっている。この巨大土木プロジェクトは、周辺地域の水不足も軽減できるが、計り知れない影響を多方面に及ぼす可能性がある。
水素自動車の未来
バイオ燃料や電気自動車に押され、忘れられかけていた水素燃料電池自動車が、ここにきて再び注目され始めた。
Japanese Author
脳波を検出して言葉に変換する 「意思伝達マシン」を開発!(長谷川 良平)
テレパシーが使えたら……。相手に自分の意思を伝えるのが難しい重度の神経疾患患者やその家族にとって、それはSFの話ではなく、切実で現実的な願いだ。これに近い技術が、長谷川良平博士らによって開発された。患者の脳波の変化を検出することで、「水を飲みたい」といった意思を、人工の音声で伝えることができるという。
News & Views
ホウ素アニオンの新しい合成法
ホウ素は「周期表の孤児」とよばれ、さまざまな特色ある化合物を作り出す。例えば、周期表で右側の近隣元素と違って、ほとんどアニオン(負イオン)を形成しない。今回、ホウ素アニオン(ボリルアニオン)を作る新しい手法が確立され、これによって、今後、極めて珍しい錯体の合成が可能になるはずだ。
筋肉を模倣する
筋肉に含まれるタンパク質「タイチン」の分子構造を模倣した弾性ポリマーが作り出された。その材料は丈夫で伸縮性があり、エネルギーを分散させ、まるで筋肉そのもののようである。
英語でNature
マウスも痛みを顔に出す
皆さんは、「痛い」と感じたとき思わず顔をしかめてしまうでしょう。実は、マウスも人間と同じように痛みを感じて「痛い顔」をし、痛み止めを投与するとしなくなることがわかりました。これは、痛みの有無を測るスケールとなりそうです。ほかの哺乳類でも同じかどうかはまだわかりません。でも、イヌやネコもそんな表情をするように感じるのは、私の個人的な思い入れでしょうか。