2011年3月号Volume 8 Number 3

新しい乳がん治療薬が承認!

米国食品医薬品局(FDA)が昨年秋に承認した乳がん治療薬エリブリン(商品名ハラヴェン)が、天然物合成化学の威力を再認識させている。日本のエーザイ(株)が申請していたエリブリンは、もともと、海綿動物クロイソカイメンから単離されたハリコンドリンBが出発点であり、その全合成を成し遂げたのがハーバード大学の岸義人名誉教授らだ。

Editorials

ヨーロッパ各国が、空前絶後の電力系統整備に取りかかることになった。その真剣な姿勢を民間部門に確信させるため、各国は、今以上に行動する必要がある。

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Research Highlights

鳥に寄生するハジラミは、羽毛の色と自分の体色が似るように進化することで、宿主に見つかる可能性を減らしているらしい。

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News

ペンギンの研究調査のために翼に装着した「翼帯」は、生存率を著しく低下させ、研究結果をも歪めてしまうおそれがある。

ホッキョクグマは今後もおそらく存続する海氷の上で生き残れるだろう。ただし、温室効果ガスの削減を行い、石油流出や汚染から海氷を守る必要がある。

海綿動物から抗がん物質ハリコンドリンBが見つかって二十余年。その鏡像異性体の多さのゆえ実用化が困難であったが、研究者のたゆみない努力により、ようやく新薬として承認にこぎつけた。

共同研究者間の距離が近いほど、論文の引用回数が多くなることがわかった。

バイオインフォマティクスの愛好家が、ルーツ(自分の先祖の出身)さがしを深化させている。

ノーベル賞受賞者のモンタニエ博士が、自閉症と感染症との関連を検証しようとしている。

生物学者と物理学者が手を組み、ヒトの肝臓の機能をあらゆるスケールで解明し、総合的に理解しようとしている。

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News Features

人工食肉の作製に全力で取り組んでいる研究者たちがいる。彼らは、人工肉を食べることが当たり前になる日が来ると確信しているようだ。だがそのためには、培養筋細胞を鍛えて肥大させるという難問がある。

1種の細菌単独ではなく、異種細菌の集団として細菌をとらえる試みが始まった。極限環境に棲む微生物の研究者の助けを借りて、ヒトの腸内細菌叢と病気の関係に迫る医学微生物学者も登場してきた。

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Comment

「クリックの手紙」と題してお伝えしてきたこのシリーズも、今回が最終回。DNAの二重らせんモデルを発表し、一躍生物学界の大スターとなったフランシス・クリック。彼にとって、二重らせんモデルはどういうものだったのだろうか。今回見つかった書簡から、皆さんは何を感じるだろうか。

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Japanese Author

体長1ミリほどのひものような体をした線虫。古くより、発生学や神経科学、遺伝学などの研究材料とされ、その細胞系譜や神経系、全ゲノムが完全に明らかにされてきた。さらに、味物質(無機塩類)や匂い物質(揮発性有機化合物)に対する走性を利用することで、記憶や学習の研究にも用いられている。今回、東京大学の飯野雄一教授は、匂いの好みに関する走性が、線虫の各個体から分泌されるフェロモンによって制御されていることを突き止めた。

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News & Views

デニソワ洞穴(シベリア)で発見された4万年前の遺骨から古代の核DNAが回収され、分析された。その結果は、アフリカを離れた現生人類集団が多方面で別のホモ属と接触を持っていたことを示唆するものだった。

大小マゼラン雲は、私たちが住む銀河である天の川銀河(銀河系)のかなり近くにある。この2つの銀河が天の川銀河に合流したのは、かなり最近のことなのかもしれない。これら3つの銀河は、大小マゼラン雲の光度という点でも、また大小マゼラン雲の天の川銀河への近さという点でも、宇宙の大部分の銀河集団と著しく異なっていることがわかった。

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