Nature Energy に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Spatial decoupling of light absorption and catalytic activity of Ni–Mo-loaded high-aspect-ratio silicon microwire photocathodes
doi:10.1038/s41560-017-0068-x
シリコン光カソード上のH2生成率を高めるのに触媒が必要だが、触媒の存在は寄生光吸収をもたらすことがある。今回著者たちは、Siマイクロワイヤーの全体的な性能に対する触媒と光吸収の寄与を調べ、Ni–Mo触媒を空間選択的に析出させて効率を最適化している。
Impact of uncoordinated plug-in electric vehicle charging on residential power demand
doi:10.1038/s41560-017-0074-z
輸送の電化はエネルギー移行に多くの利益をもたらすが、電力システムはさらに複雑になる。今回の研究では、住宅電力需要と電気自動車の利用に関するモデル化に取り組み、電力負荷に対する自動車の非協調充電の影響を解明している。
Exceptional power density and stability at intermediate temperatures in protonic ceramic fuel cells
doi:10.1038/s41560-017-0085-9
プロトン伝導セラミック型燃料電池は、プロトン伝導率の高い酸化物電解質を使用しているが、酸素還元反応速度が遅く接触抵抗が高いため出力密度が低いことが課題となっている。今回著者たちは、PrBa0.5Sr0.5Co1.5Fe0.5O5+δカソードとBaZr0.4Ce0.4Y0.1Yb0.1O3電解質を組み合わせ、極めて高い出力密度と安定性を達成している。
High-resolution techno–ecological modelling of a bioenergy landscape to identify climate mitigation opportunities in cellulosic ethanol production
doi:10.1038/s41560-018-0088-1
エネルギー専用作物はバイオエネルギーシステムの重要な原料であるが、それらを農地に組み込む最適な方法については不確実性が残っている。今回著者たちは、分解能の高い生態系モデル化を利用し、栽培を行う土壌と施肥率の選択が原料コストと排出量フットプリントにどのような影響を及ぼすかを調べている。
Well-to-refinery emissions and net-energy analysis of China’s crude-oil supply
doi:10.1038/s41560-018-0090-7
中国は世界最大のエネルギー消費国であるので、その原油供給について高い精度で調べる必要がある。今回著者たちは、20カ国の146カ所の油田から得たデータを利用し、中国の原油供給の炭素集約度と正味エネルギープロファイルをまとめている。
Stress-driven lithium dendrite growth mechanism and dendrite mitigation by electroplating on soft substrates
doi:10.1038/s41560-018-0104-5
Li金属電池では、Liデンドライトの問題に取り組む多大な努力が続けられているが、Liめっきによる応力は見落されることが多い。今回著者たちは、応力によるデンドライトの成長機構を調べ、Liの析出に軟質基材を用いてLiデンドライトの成長を抑制する方法を提案している。
Quantitative experimental assessment of hot carrier-enhanced solar cells at room temperature
doi:10.1038/s41560-018-0106-3
ホットキャリア太陽電池は熱力学的限界を超える効率が期待されているが、ホットキャリア効果はまだ解明されていない。今回NguyenとLombezたちは、室温で作動する効率が最大で約11%のマイクロメートルスケールの太陽電池について、電圧と電流に対するホットキャリアの寄与を定量化している。
Using peer-to-peer energy-trading platforms to incentivize prosumers to form federated power plants
doi: 10.1038/s41560-017-0075-y
生産消費者の出現によって、多様で分散したエネルギー源アレイの管理に役立つ仮想発電所とピアツーピア取引が生まれた。本論文では、これらの概念を組み合わせて個々の課題のいくつかに対処し、新たな価値を提供する発電所連合体を提案している。
Decoupling electron and ion storage and the path from interfacial storage to artificial electrodes
doi: 10.1038/s41560-017-0084-x
電気化学的貯蔵では、一般にイオンと電子が同時に貯蔵される。今回著者たちは、電子貯蔵とイオン貯蔵の分離という概念について検討し、貯蔵能力を増強する人工混合伝導体電極の作製に関する見通しを示している。
Future scenarios for energy consumption and carbon emissions due to demographic transitions in Chinese households
doi: 10.1038/s41560-017-0053-4
将来の人口動向は、時間利用パターンと消費パターンの変化を介して、エネルギー利用、ひいては炭素排出量に影響を及ぼすと考えられる。今回Yuたちは、代表的な国内の時間利用データを用いて中国における人口転換のシナリオをモデル化し、家庭の規模と年齢の変化に伴うエネルギー需要の変化を調べている。
Non-Gaussian power grid frequency fluctuations characterized by Levy-stable laws and superstatistics
doi: 10.1038/s41560-017-0058-z
送電網は、需要の変化、取引、再生可能電源の断続性によって生じる周波数変動を示す。今回Schäferたちは、北米、日本、欧州の実際の送電網における変動を分析し、ガウス性からのずれと取引の大きな寄与を見いだしている。
Faradaically selective membrane for liquid metal displacement batteries
doi: 10.1038/s41560-017-0072-1
Na–NiCl2電池などの溶融塩電池はグリッド貯蔵用の候補として有望だが、イオン選択セラミック膜の脆弱性が課題となっている。今回著者たちは、保護的なファラデー反応によって機能する、堅牢なTiNメッシュ膜を付けたLi–Pb||PbCl2電池の動作について報告している。
Simulating the value of electric-vehicle-grid integration using a behaviourally realistic model
doi: 10.1038/s41560-017-0077-9
自動車と送電網の統合によって、再生可能電気の費用が削減され電気自動車の所有が増える可能性がある。自動車の選択と充電に関して経験的に導かれたモデルと電力システムモデルを組み合わせたシミュレーションでは、消費者行動を除外するとこれらの利益が膨らむことが示された。
Atomically dispersed Ni(i) as the active site for electrochemical CO2 reduction
doi: 10.1038/s41560-017-0078-8
CO2のCOへの変換では、活性と安定性が改善された電極触媒が求められている。今回著者たちは、オペランド分光法を用いて、100時間以上にわたって固有活性と安定性が高い含窒素グラフェン担持触媒の活性部位として、原子レベルで分散したNi(i)を特定した。
Thermoelectric properties and performance of flexible reduced graphene oxide films up to 3,000 K
doi: 10.1038/s41560-018-0086-3
熱電発電のカルノー効率と出力は温度とともに増大するが、現在の熱電変換は1,500Kが最高と見なされている。今回Liたちは、最高3,000Kの熱を高い出力因子で変換できる還元型酸化グラフェン膜を開発し、新たな用途への道を開いた。
Mapping synergies and trade-offs between energy and the Sustainable Development Goals
doi: 10.1038/s41560-017-0036-5
国連の「持続的な開発のためのアジェンダ」では、さまざまな問題に対する行動のために17の目標と169項目のターゲットを掲げており、目標7はすべての人が持続可能なエネルギーを利用できるようにすることである。本論文では、エネルギーシステム、目標7と他の目標の相互関係をターゲットレベルで分析し、それらの間の相乗効果とトレードオフを明らかにしている。
Status and challenges in enabling the lithium metal electrode for high-energy and low-cost rechargeable batteries
doi: 10.1038/s41560-017-0047-2
Li金属電池は、将来の高エネルギー貯蔵システムにおいて大いに期待されている。今回Albertusたちは、研究と商業的な取り組みの現状を概観し、鍵となる測定基準と測定項目だけでなく、高性能リチウム金属電極を可能にする上での価格の問題についても検討している。
Fire-extinguishing organic electrolytes for safe batteries
doi: 10.1038/s41560-017-0033-8
安全性の問題は、蓄電池、特に有機電解質を用いた蓄電池の大規模な普及を妨げる長年の障害になっている。今回著者たちは、リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池の長期充放電サイクルを可能にする消火性有機電解液を報告している。
Robust and conductive two-dimensional metal−organic frameworks with exceptionally high volumetric and areal capacitance
doi: 10.1038/s41560-017-0044-5
金属有機構造体(MOF)は、スーパーキャパシターにとって魅力的な電極だが、導電率と化学的安定性の低さが一般的な課題となっている。今回著者たちは、体積キャパシタンスが700 F/cm3を超え、面積キャパシタンスが15 F/cm3を超える、ヘキサアミノベンゼンリンカーを用いた安定な導電性MOFについて報告している。
Effect of global warming on willingness to pay for uninterrupted electricity supply in European nations
doi: 10.1038/s41560-017-0045-4
送電網は、気候に関連するインシデントの被害を受けやすく、停電が生じることがある。今回、EUの19カ国における連続電力供給の価値は地域の気温と関連しており、夏の停電のコストは地球温暖化とともにさらに高くなることがわかった。
Potential-sensing electrochemical atomic force microscopy for in operando analysis of water-splitting catalysts and interfaces
doi: 10.1038/s41560-017-0048-1
H2を生成するための光電気化学的水分解は、光電極と電解質の間の電気化学ポテンシャルに依存しているが、その測定は困難である。今回著者たちは、電気化学原子間力顕微鏡技術を用いて、触媒被覆電極表面のポテンシャルをin operandoで検出している。
Enhancing long-term photostability of BiVO4 photoanodes for solar water splitting by tuning electrolyte composition
doi: 10.1038/s41560-017-0057-0
水分解に用いられる光電極は、太陽エネルギーによって駆動されており、不安定性が問題となることが多い。今回著者たちは、V5+飽和電解液を用いて、BiVO44光アノードの光酸化に伴う分解を妨げて、光腐食を抑制でき、数百時間にわたる安定した光電流生成が可能になることを実証している。
Systematic investigation of the impact of operation conditions on the degradation behaviour of perovskite solar cells
doi: 10.1038/s41560-017-0060-5
ペロブスカイト太陽電池では、動作安定性の低さが課題であるが、さまざまな研究で用いられている安定性の測定条件は、大きく異なっている。今回Domanskiたちは、ペロブスカイト太陽電池が経年劣化する過程に関する学界のコンセンサスの形成を促進するため、環境によって生じた劣化を系統的に調べている。
Tailored interfaces of unencapsulated perovskite solar cells for >1,000 hour operational stability
doi: 10.1038/s41560-017-0067-y
ペロブスカイト太陽電池の安定性は、デバイスのそれぞれの層と界面に依存している。今回Christiansたちは、安定性に注目してデバイス全体の積み重ね構造を系統的に設計し、非封止で1,000時間稼働した後も平均で初期効率の88%を保持する電池を作製している。
Enhancing power density of biophotovoltaics by decoupling storage and power delivery
doi: 10.1038/s41560-017-0073-0
生物学的太陽電池デバイス(BPV)は光合成微生物を用いて発電するが、その効率は低い。今回著者たちは、充電ユニットと電力供給ユニットの分離によって、電力密度が0.5 W m-2を超えるフロー型BPVシステムについて報告している。
Policy sequencing toward decarbonization
doi: 10.1038/s41560-017-0025-8
政治的に有効な低炭素政策に関する政策順序は、環境改善効果や起用対効果に関する課題に常に直面している。本論文では、政治的制約の中でこうした問題に取り組む方法を概説している。
Thermo-electrochemical production of compressed hydrogen from methane with near-zero energy loss
doi: 10.1038/s41560-017-0029-4
水素は、工業的には主にメタン水蒸気改質によって生産されている。この方法は多段階の過程であり、エネルギー損失と費用を最小限に抑えるため大規模プラントで実施されている。今回著者たちは、プロトン膜改質装置における熱インテグレーションを利用して、単一段階で効率よく圧縮水素を生成している。
Increased CO2 selectivity of asphalt-derived porous carbon through introduction of water into pore space
doi: 10.1038/s41560-017-0030-y
天然ガス井では、CH4とともにCO2が存在することが多いため、ガスの分離は重要な工業的過程である。今回Jalilovたちは、高表面積炭素の細孔に水を導入することによって、CH4に対するCO2の吸着選択性を大幅に向上できることを実証している。
Understanding future emissions from low-carbon power systems by integration of life-cycle assessment and integrated energy modelling
doi: 10.1038/s41560-017-0032-9
すべてのエネルギー生成技術では、建設と運用の結果として、そのライフサイクルの間に温室効果ガスが排出される。今回Pehlたちは、ライフサイクルアセスメントとエネルギーのモデル化を組み合わせて、将来の低炭素電力システムにおいてさまざまな技術が全寿命にわたってもたらす排出量への寄与を分析している。
Hydropower plans in eastern and southern Africa increase risk of concurrent climate-related electricity supply disruption
doi: 10.1038/s41560-017-0037-4
アフリカ東部と南部では水力発電が極めて重要であるが、気候変動がもたらすリスクにさらされている。今回Conwayたちは、河川流域と降水量の変動について調べて現行の発電所と計画中の発電所での水力発電途絶の可能性を検討し、電力供給のリスクと空間的相互関係を明らかにしている。
Approaching the limits of cationic and anionic electrochemical activity with the Li-rich layered rocksalt Li3IrO4
doi: 10.1038/s41560-017-0042-7
アニオン性酸化還元は電池電極の容量を向上させるが、その潜在能力を十分に実現するのは困難である。今回Tarasconたちは、Li3IrO4相でIr1個当たり電子3.5個という過去最高の可逆容量を報告し、酸素に対する遷移金属の比を高めることの重要性について検討している。
Enabling the high capacity of lithium-rich anti-fluorite lithium iron oxide by simultaneous anionic and cationic redox
doi: 10.1038/s41560-017-0043-6
アニオン性酸化還元活性を利用して電池電極の性能を高めることは、特に逆蛍石型構造では困難である。今回著者たちは、Li5FeO4ではアニオン性とカチオン性の酸化還元反応が同時に起こり、高い容量が可能になるとともに望ましくない酸素ガスの放出が生じないことを報告している。
Large guanidinium cation mixed with methylammonium in lead iodide perovskites for 19% efficient solar cells
doi: 10.1038/s41560-017-0054-3
ペロブスカイト太陽電池では、その効率と安定性の調整にカチオンエンジニアリングが用いられている。今回Jodlowskiたちは、これまで可能と考えられていたものよりわずかに大きいカチオンであるグアニジニウムを、従来のメチルアンモニウムカチオンと混合して3D構造体に組み込んで、デバイスの安定性を改善している。
The Eastring gas pipeline in the context of the Central and Eastern European gas supply challenge
doi: 10.1038/s41560-017-0019-6
イーストリング・ガスパイプラインは、スロバキアと南東欧諸国を、この地域における他のインフラの変化を踏まえて接続する予定である。今回MisikとNoskoは、認識されているエネルギー安全保障の損失とガス輸送から得られる地代の損失は、どちらもプロジェクトを推進する主要因とはならないはずだと主張している。
Emergence of highly transparent photovoltaics for distributed applications
doi: 10.1038/s41560-017-0016-9
透明度の高さは、不透明な太陽光発電素子では得られない統合方法をもたらす。今回Luntたちは、透明な太陽光技術における最近の進展について概説し、技術的課題と測定上の留意点に光を当て、さまざまな用途のための性能要件を検討している。
High-performance sodium–organic battery by realizing four-sodium storage in disodium rhodizonate
doi: 10.1038/s41560-017-0014-y
ナトリウムイオン電池は、大規模エネルギー貯蔵においてリチウムイオンの費用効果の高い代替となる。今回Baoたちは、バイオマス由来のイオン結晶を用いたカソードを開発している。このイオン結晶によって、4ナトリウムイオン貯蔵機構が可能になり、極めて高い比容量とエネルギー密度が得られる。
Incorporating nitrogen atoms into cobalt nanosheets as a strategy to boost catalytic activity toward CO2 hydrogenation
doi: 10.1038/s41560-017-0015-x
不均一触媒上でのCO2の水素化によって、メタノールやギ酸などの有用なエネルギー担体を生成できる。今回著者たちは、非担持コバルト触媒の活性が、この構造体に窒素原子を組み込むことによって著しく向上することを示している。
A flexible metal–organic framework with a high density of sulfonic acid sites for proton conduction
doi: 10.1038/s41560-017-0018-7
プロトンを伝導する金属有機構造体(MOF)は、プロトン交換膜燃料電池の電解質として利用できるが、低湿度での性能が高い化学的に安定な材料が未だに求められている。今回著者たちは、広い湿度範囲で高いプロトン伝導度を保つ、安定で構造的に柔軟なMOFを作製している。
Efficient kesterite solar cells with high open-circuit voltage for applications in powering distributed devices
doi: 10.1038/s41560-017-0028-5
ケステライト薄膜太陽電池の特徴は、豊富にある非毒性元素である。今回Antunezたちは、小規模で分散型の屋内用途に適した広い範囲の光強度で、変換効率と電圧を同時に最適化するプロセスについて報告している。
Effect of subsidies to fossil fuel companies on United States crude oil production
doi: 10.1038/s41560-017-0009-8
各国政府は化石燃料企業にさまざまな助成金を提供しているが、G20諸国はそれらの段階的廃止を確約している。今回Ericksonたちは、米国の新たな原油田に提供された助成金を分析し、現在の石油価格では、原油田の半数近くがこうした助成金に依存して開発を継続していることを見いだしている。
A research agenda for a people-centred approach to energy access in the urbanizing global south
doi: 10.1038/s41560-017-0007-x
グローバル・サウスの都市家庭は、エネルギー利用に関する独特の問題に直面している。本論文では、包括的な都市のエネルギー移行を促進するための、都市に住むエネルギー消費者の需要に関する理解に基づく研究行動計画を概説している。
Stretchable and waterproof elastomer-coated organic photovoltaics for washable electronic textile applications
doi: 10.1038/s41560-017-0001-3
有機太陽電池は、薄くて曲げ伸ばしが可能なものにすることができる。今回甚野裕明たちは、水と洗剤で洗濯することもできる柔軟な有機太陽電池デバイスを開発し、将来は布地のような身の回りの品々に取り入れる道筋を開いている。
Hydrogen separation by nanocrystalline titanium nitride membranes with high hydride ion conductivity
doi: 10.1038/s41560-017-0002-2
混合ガス流から水素を分離できる膜は、燃料電池などのエネルギー用途で使用する高純度水素の生産に重要である。今回著者たちは、ヒドリドイオンの伝導を介した周囲温度での水素分離に、窒化チタンが有望であることを実証している。
Measurement of inequality using household energy consumption data in rural China
doi: 10.1038/s41560-017-0003-1
中国の不平等は、世界でも最悪のレベルと位置づけられている。今回、家庭のエネルギー消費データを用いて、バイオマスからエネルギーを得ること、暖房や調理のためのエネルギーの利用、地域内格差が、中国農村部におけるエネルギー消費の不平等の主な原因であることが示された。
Understanding the life cycle surface land requirements of natural gas-fired electricity
doi: 10.1038/s41560-017-0004-0
発電のライフサイクルに対する土地利用要件を解明すれば、さまざまな技術の一貫性のある比較が可能になる。今回Jordaanたちは、高度に分解された経験データを利用して、天然ガス火力発電用の土地利用をロバスト推定する方法を提示している。
Non-encapsulation approach for high-performance Li–S batteries through controlled nucleation and growth
doi: 10.1038/s41560-017-0005-z
ナノ多孔性炭素による硫黄のカプセル化は、Li–S電池で広く採用されている方法であるが、この方法では硫黄の利用性と容積エネルギー密度が低くなることが多い。今回、炭素の表面積が小さくエネルギーが高い硫黄含有種のための非カプセル化法が報告されている。
High-resolution assessment of global technical and economic hydropower potential
doi: 10.1038/s41560-017-0006-y
水力発電は、現在利用できる再生可能エネルギーの最大の供給源だが、その潜在的な供給量はまだよくわかっていない。今回Gernaatたちは、380万カ所を超える立地の分析に基づいて、世界の水力発電の技術的・経済的な可能性についての分解能の高い評価を提示している。
The underestimated potential of solar energy to mitigate climate change
doi: 10.1038/nenergy.2017.140
現在IPCCの報告書であまり取り上げられていないにもかかわらず、太陽光発電が発電に占める割合は大きくなっている。本論文では、太陽光発電の可能性を過小評価することによってシステムの統合方法が最適化されないことと、新興国経済に対する具体的な普及戦略を開発すべきであることを示している。
A rechargeable lithium–oxygen battery with dual mediators stabilizing the carbon cathode
doi: 10.1038/nenergy.2017.118
Li-O2電池の性能は、Li2O2の絶縁性と不溶性によって大きく制限されている。今回著者たちは、2種のメディエーターによって、カソードでの電気化学的反応と溶液からのLi2O2の形成・分解が分離され、炭素カソードの安定化に役立つことを報告している。
A facile surface chemistry route to a stabilized lithium metal anode
doi: 10.1038/nenergy.2017.119
Liデンドライトの形成は、Li金属電池開発の大きな障害となっている。今回Nazarたちは、Li系表面合金複合材料のin situ合成によってLi金属を保護する方法を報告し、電池への応用が有望であることを示している。
Efficient and equitable spatial allocation of renewable power plants at the country scale
doi: 10.1038/nenergy.2017.124
再生可能エネルギー技術が急速に普及するにつれて、発電所の最適な空間配置を考慮することがますます重要になっている。このような目的で、Drechslerたちは、さまざまな方法を用いて、ドイツにおける太陽光発電所と風力発電所の最も効率的で公正な配置を解明している。
Energy storage deployment and innovation for the clean energy transition
doi: 10.1038/nenergy.2017.125
電力貯蔵は、研究開発と普及政策の双方から恩恵を受けると考えられる。今回、新たな技術の研究開発費の専用プログラムを平行して開発し、安全性を向上し総費用を抑制するとともに、システムの全体的な利益を最大化すべきであることが示された。
Self-optimizing, highly surface-active layered metal dichalcogenide catalysts for hydrogen evolution
doi: 10.1038/nenergy.2017.127
金属ジカルコゲナイドは、水素生成の有望な電極触媒だが、より活性の高い安定な材料が切望されている。今回著者たちは、H-TaS2とH-NbS2には、高いベーサル面活性があり、触媒の形態の変化を通して水素生成サイクルに伴って活性が増大することを実証している。
Efficient ambient-air-stable solar cells with 2D–3D heterostructured butylammonium-caesium-formamidinium lead halide perovskites
doi: 10.1038/nenergy.2017.135
ペロブスカイト太陽電池に高い効率と安定性を併せ持たせるため、さまざまな戦略が開発されている。今回Wangたちは、2Dと3Dの混合カチオンと混合ハロゲン化物ペロブスカイト相を混合して安定化効率が最大19.5%の太陽電池を作製し、完全照明と周囲大気の下での安定性を改善している。
Sub-ambient non-evaporative fluid cooling with the sky
doi: 10.1038/nenergy.2017.143
放射冷却は、大気の透過窓を通して地表から熱を受動的に宇宙に放出し、周囲温度以下への冷却を可能にする。今回Goldsteinたちは、放射冷却を利用して、日中に水を周囲温度より最大5℃冷却できることを示している。これは、70 Wm-2の排熱フラックスに相当する。
Raising the one-sun conversion efficiency of III–V/Si solar cells to 32.8% for two junctions and 35.9% for three junctions
doi: 10.1038/nenergy.2017.144
太陽電池を積み重ねて、同一の空間的フットプリントを保持しながら太陽電池デバイスの効率を高めることができる。今回Essigたちは、シリコン太陽電池の上に1層または2層のIII-V太陽電池を重ねることで、非常に効率の高い2接合型と3接合型の太陽電池を作製している。
The climate and air-quality benefits of wind and solar power in the United States
doi: 10.1038/nenergy.2017.134
クリーンなエネルギー源は、従来の電力源を減少させることによって環境と健康に対する利益をもたらす。今回Millsteinたちは、米国の風力発電と太陽光発電の普及に関する2007~2015年のデータを解析し、大気汚染、削減貢献、関連若年死の観点からその影響を調べている。
A materials perspective on Li-ion batteries at extreme temperatures
doi: 10.1038/nenergy.2017.108
電池に対する外部変動と内部変動の両方に起因する熱の影響は、電池の性能に大きな悪影響を及ぼす。今回Ajayanたちは、個々の電池部材に対する熱の影響に関する理解の最近の進展について概観している。
Intracycle angular velocity control of cross-flow turbines
doi: 10.1038/nenergy.2017.103
ありふれた軸流タービンとは異なり、クロスフロータービンは、流れの中にあるタービンの回転軸が流れに対して垂直になっている。本論文では、ブレードの角速度をブレードの位置関数として最適化し、余計な自由度のない制御方式が提案されている。この方式によって、出力が59%増大した。
Pairing of near-ultraviolet solar cells with electrochromic windows for smart management of the solar spectrum
doi: 10.1038/nenergy.2017.104
スマート・ウィンドウは、建物や車に入る可視光と近赤外光の量を調節するために使用される。今回Davyたちは、可視光や近赤外光の光子を奪い合うことなくエレクトロクロミック・ウィンドウに電力を供給するため、10 cm2まで拡大できる近紫外光で発電する有機太陽電池を開発している。
Ultra-high-rate pseudocapacitive energy storage in two-dimensional transition metal carbides
doi: 10.1038/nenergy.2017.105
酸化還元活性物質を用いた擬似キャパシターは、エネルギー密度は比較的高いが、電源としての能力が低いことが課題となっている。今回著者たちは、二次元遷移金属炭化物が、高い充放電速度で重量キャパシタンス、体積キャパシタンス、面積キャパシタンスが高い値を示すことを報告している。
Renewable energy policy design and framing influence public support in the United States
doi: 10.1038/nenergy.2017.107
再生可能エネルギー政策の法律は、世論の影響を受ける可能性がある。今回、再生可能エネルギー政策の強さと世論は米国各州で相関するが、大多数の国民は、公衆衛生上の利益と雇用創出が強調されなければ、こうした政策を実際に支持しないことが示された。
Vulnerability of US thermoelectric power generation to climate change when incorporating state-level environmental regulations
doi: 10.1038/nenergy.2017.109
気候変動は、将来の水の利用可能性と気温、ひいては冷却に水を使用する火力発電に影響を及ぼす。本論文では、米国の州レベルの環境規制を含むさまざまなシナリオ下で、既存の火力発電の将来の利用可能容量について調べている。
Surface evolution of a Pt–Pd–Au electrocatalyst for stable oxygen reduction
doi: 10.1038/nenergy.2017.111
コアシェル構造を有する金属合金は、燃料電池の酸素還元反応用の低Pt触媒としての可能性があるが、安定性の低さが課題となっている。今回Liたちは、高分解能顕微鏡法を用いて、Pt-Pd-Au触媒は、表面の原子再配列を経て電気化学的サイクルでの活性が高くなることを見いだしている。
Data-driven planning of distributed energy resources amidst socio-technical complexities
doi: 10.1038/nenergy.2017.112
分散型エネルギー資源計画では、多くの社会技術的要因を慎重に考慮して最適な設置を行う必要がある。今回Jainたちは、こうした多数の要因を組み込んだモデルを提示し、それを用いてカリフォルニア州の1万人の消費者をサンプルとした費用効率が高い資源を見いだしている。
High-concentration planar microtracking photovoltaic system exceeding 30% efficiency
doi: 10.1038/nenergy.2017.113
集光型太陽光発電は高い効率を達成しているが、これまで屋上での使用は実用的でなかった。今回Priceたちは、固定傾斜で全日稼働しピーク効率が30%を超える、3接合太陽電池を用いた平面パネル集光型太陽光発電システムを開発している。
Climate change and the vulnerability of electricity generation to water stress in the European Union
doi: 10.1038/nenergy.2017.114
気候変動は、火力発電所の冷却水の利用可能性に影響を及ぼし、発電抑制を生じさせる。今回の論文では、気候と水の使用に起因する将来の水の利用可能性の変化が、EUでの発電にどのような影響を及ぼすかをモデル化し、さまざまな適応戦略を評価している。
The future cost of electrical energy storage based on experience rates
doi: 10.1038/nenergy.2017.110
電気エネルギー貯蔵は、個人輸送を脱炭素化し、再生可能性が高い電力システムを可能にするのに重要になると予想されている。今回の研究では、11種類の貯蔵技術のデータを分析して将来の価格を予測する経験曲線を作成し、これらの技術の経済競争力に関する実現可能なタイムラインを調べている。
Two-dimensional heterostructures for energy storage
doi: 10.1038/nenergy.2017.89
異なる2D材料が交互に積層したヘテロ構造体は、エネルギー用途でますます注目を集めている。今回PomerantsevaとGogotsiは、ヘテロ構造体の開発とエネルギー貯蔵装置におけるヘテロ構造体の実装について、その機会と問題点を検討している。
Reversible multi-electron redox chemistry of π-conjugated N-containing heteroaromatic molecule-based organic cathodes
doi: 10.1038/nenergy.2017.74
有機化合物はリチウムイオン電池の電極材料として利用できるが、分解のしやすさや導電率の低さなどの問題が応用の妨げとなっている。今回著者たちは、この問題に取り組むために、複数の酸化還元部位を持つπ共役キノキサリン系ヘテロ芳香族分子について報告している。
Making Li-metal electrodes rechargeable by controlling the dendrite growth direction
doi: 10.1038/nenergy.2017.83
Liデンドライトの成長は、Li金属アノードの電池への応用に固有の課題である。今回著者たちは、Liイオンを固定した機能化ナノカーボンでセパレーターを被覆し、デンドライトの成長方向を調整することによって電池の性能を向上させている。
Enhanced selectivity in mixed matrix membranes for CO2 capture through efficient dispersion of amine-functionalized MOF nanoparticles
doi: 10.1038/nenergy.2017.86
混合マトリクス膜は、煙道ガス混合体からCO2を分離することはできるが、透過性を損なうことなく選択性を向上させることは依然として困難である。ナノ粒子アミン修飾金属有機構造体フィルターを用いて、透過性をほとんど損なうことなく選択性を向上させることができる。
Solar conversion of CO2 to CO using Earth-abundant electrocatalysts prepared by atomic layer modification of CuO
doi: 10.1038/nenergy.2017.87
CO2のCOへの電気化学的還元は、燃料合成経路の1つだが、より安価でより選択性の高い触媒が必要である。今回Schreierたちは、バイポーラー膜と地球に豊富に存在する同一の電極触媒でできた各電極を備えた電解槽を用い、3接合太陽電池を電源としてCOを選択的に生産している。
Burning lithium in CS2 for high-performing compact Li2 S–graphene nanocapsules for Li–S batteries
doi: 10.1038/nenergy.2017.90
Li–S電池の商業化では、高性能硫黄カソードの簡便でスケーラブルな製造が難しい。今回著者たちは、単にLi箔をCS2蒸気中で燃焼させるだけというカソード設計の戦略と、これを用いた電池が有望な性能を示すことを報告している。
Defect passivation in hybrid perovskite solar cells using quaternary ammonium halide anions and cations
doi: 10.1038/nenergy.2017.102
太陽電池での損失は、バルク内や界面での材料の欠陥によって生じる場合がある。今回Zhengたちは、第四級アンモニウムハロゲン化物を用いてさまざまなペロブスカイト吸収体を不活性化し、認証効率が20%を超える太陽電池を作製して、アニオン欠陥とカチオン欠陥の両方が影響を受けることを示唆している。
Empirically observed learning rates for concentrating solar power and their responses to regime change
doi: 10.1038/nenergy.2017.94
蓄熱を伴う集光型太陽熱発電は出力調整可能な再生可能電力となるが、太陽光発電ほど支持されていない。今回、全世界の集光型太陽熱発電プロジェクトに関する研究から、学習率は20%であり、これは政策支援と産業開発が続けば維持されると考えられることがわかった。
Enhanced photoelectrochemical efficiency and stability using a conformal TiO2 film on a black silicon photoanode
doi: 10.1038/nenergy.2017.45
ナノ構造化ブラックシリコンは、太陽光による水分解用の光電極として利用できるが、表面積が大きいため、電荷再結合が増加し腐食が加速される場合がある。今回著者たちは、コンフォーマルなTiO2薄膜によって、ブラックシリコンの光電流を増やし安定性を向上できることを示している。
Start-up costs of thermal power plants in markets with increasing shares of variable renewable generation
doi: 10.1038/nenergy.2017.50
出力が変動するエネルギー源のシェアが高くなると、出力調整可能な発電ではさまざまな運転モードが必要になる。今回Schillたちは、ドイツの電力システムにおける風力発電と太陽光発電の増加の影響を調べ、2030年までに起動回数が81%増加する一方で、費用は119%増加することを見いだしている。
Intrinsic non-radiative voltage losses in fullerene-based organic solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2017.53
有機太陽電池は、開路電圧が低いため変換効率が高くなっていない。今回著者たちは、電子-振動カップリングと非放射再結合の関連性を明らかにして、有機太陽電池の効率の新たな限界を導き出し、最適な光学ギャップを見直している。
Direct observation of lithium polysulfides in lithium–sulfur batteries using operando X-ray diffraction
doi: 10.1038/nenergy.2017.69
Li-S電池における多硫化物の存在と電池性能は、大きく関連しているが、電池稼働時における多硫化物の形成と発達は十分に解明されていない。今回著者たちは、オペランドX線回折実験を設計し、多硫化物の反応機構を明らかにしている。
Stabilization of ultrathin (hydroxy)oxide films on transition metal substrates for electrochemical energy conversion
doi: 10.1038/nenergy.2017.70
安定性と活性が高い電解触媒の開発は、重要な課題である。今回著者たちは、シミュレーションとin situ実験を組み合わせ、遷移金属基板上の極めて薄いヒドロキシ酸化物膜の安定性と活性を同時に向上させる際の基礎となる原理を明らかにしている。
Tailored emails prompt electric vehicle owners to engage with tariff switching information
doi: 10.1038/nenergy.2017.73
電気自動車が環境にどのくらい優しいかは、充電に使用される電力によって決まるが、所有者は電力使用がピークとなる時間帯に車を充電する傾向がある。今回、個々人に合わせた電子メールによって、時間帯別電気料金制度の情報の閲覧が増えるが、最大の効果が得られるのは車を購入してから3カ月以内であることが示された。
Integrating uncertainty into public energy research and development decisions
doi: 10.1038/nenergy.2017.71
公的資金によるエネルギー技術研究は、低炭素エネルギーへの移行を成功させる上で極めて重要だが、将来が不確実であることは意思決定が難しいということである。今回の概説では、エネルギー技術政策の情報提供における専門家への聞き取り調査、統合的評価モデル、意思決定の枠組みの役割について調べている。
Silicon heterojunction solar cell with interdigitated back contacts for a photoconversion efficiency over 26%
doi: 10.1038/nenergy.2017.32
シリコン太陽電池の効率は、ほとんどの太陽光発電パネルの価格に大きな影響を及ぼす。今回、(株)カネカの研究者たちは、相互嵌合バックコンタクト型シリコンヘテロ接合の効率が26.3%に達することを報告し、さらなる開発の指針となる詳細な損失分析を行っている。
Enhancing ionic conductivity in composite polymer electrolytes with well-aligned ceramic nanowires
doi: 10.1038/nenergy.2017.35
固体電解質の高速イオン伝導性は、次世代の固体電解質系リチウムイオン電池の開発に必須である。今回著者たちは、高配向無機ナノワイヤーを用いた複合ポリマー電解質は、高配向無機ナノワイヤーを用いない電解質よりはるかに大きな伝導率を達成できることを報告している。
Singlet oxygen generation as a major cause for parasitic reactions during cycling of aprotic lithium–oxygen batteries
doi: 10.1038/nenergy.2017.36
Li-O2電池の応用は、電池の充放電サイクルにおける深刻な寄生反応によって妨げられている。今回著者たちは、非常に反応性の高い一重項酸素が充放電中の電解質と炭素電極の劣化の大きな原因であることを示している。
Perovskite ink with wide processing window for scalable high-efficiency solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2017.38
ペロブスカイト系太陽電池の作製方法は、産業的にスケーラブルではないことが多い。今回Yangたちは、研究室規模で標準的なスピンコーティングや、よりスケーラブルで産業的に重要な堆積法であるブレードコーティングによって同様のデバイスを作製するインク剤を開発している。
Printed assemblies of GaAs photoelectrodes with decoupled optical and reactive interfaces for unassisted solar water splitting
doi: 10.1038/nenergy.2017.43
III-V族半導体を用いた光電気化学デバイスは、潜在性能は高いが、費用と安定性のために幅広い応用が妨げられている。今回Kangたちは、光学的界面と反応界面を分離したGaAs系光電極を印刷によって組み立て、13.1%という水分解効率を実証している。
Multiple exciton generation for photoelectrochemical hydrogen evolution reactions with quantum yields exceeding 100%
doi: 10.1038/nenergy.2017.52
多重励起子生成によって、量子ドット型太陽電池の性能が向上することは明らかになっている。今回Yanたちは、これを光誘起水素生成に応用し、PbS量子ドット光電極を用いて100%を超える外部量子効率が得られるシステムを提示している。
Deliberating the perceived risks, benefits, and societal implications of shale gas and oil extraction by hydraulic fracturing in the US and UK
doi: 10.1038/nenergy.2017.54
シェールガスとシェールオイルの生産や先行開発は増加しているが、シェール採掘法(『フラッキング』)は反対を受けている。今回、シェール開発に関する説明を受けた上での言説は、米国も英国も同様に、利益に対する疑念やリスクに集中することが示された。
Simple processing of back-contacted silicon heterojunction solar cells using selective-area crystalline growth
doi: 10.1038/nenergy.2017.62
最も効率の高いシリコン太陽電池は、相互嵌合バックコンタクト型シリコンヘテロ接合構造を利用している。今回著者たちは、より簡単な工程によってこの種の電池を作製し、電子接触にバンド間シリコントンネル接合を用いて22%を超える認証効率に到達している。
A half-wave rectified alternating current electrochemical method for uranium extraction from seawater
doi: 10.1038/nenergy.2017.7
海に存在する大量のウランは核燃料として利用できる可能性があるが、既存の物理化学的抽出法は容量と除去速度に限界がある。今回著者たちは、電気化学的な抽出技術を用いて、捕集能力と速度が改善されることを実証している。
23.6%-efficient monolithic perovskite/silicon tandem solar cells with improved stability
doi: 10.1038/nenergy.2017.9
ペロブスカイト太陽電池は、多接合型デバイスにおいてシリコン太陽光発電を補完することができる。今回著者たちは、モノリシックなペロブスカイト・オン・シリコンデバイスの集光性を最適化し、高温高湿試験に耐えるペロブスカイトデバイスを用いて、認証効率が23.6%で面積が1 cm2のタンデム太陽電池を作製している。
Low-bandgap mixed tin–lead iodide perovskite absorbers with long carrier lifetimes for all-perovskite tandem solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2017.18
全ペロブスカイトタンデム太陽電池は、ペロブスカイトに固有の製造の容易さを保ちつつ、高い効率が得られる見込みがある。今回Zhaoたちは、認証効率が17%のスズ・鉛ペロブスカイト太陽電池を低バンドギャップ構成要素として集積した、効率が21%のタンデムデバイスについて報告している。
Solar-driven reforming of lignocellulose to H2 with a CdS/CdOx photocatalyst
doi: 10.1038/nenergy.2017.21
光改質は、水の還元とバイオマスなどから得られる有機分子の酸化を同時に行うことによってH2を生成できるが、より安価で活性の高い光触媒が必要とされている。今回、CdS/CdOxが、太陽光照射下で未処理リグノセルロース懸濁液からH2を高速に生成することが示された。
Effects of exemplar scenarios on public preferences for energy futures using the my2050 scenario-building tool
doi: 10.1038/nenergy.2017.27
エネルギーの未来に関するシナリオは政策決定で利用されているが、それらが一般市民の選好にどう影響するのかはほとんどわかっていない。今回、対話型シナリオ構築ツールに関わることで既存の選好が強まるが、事例シナリオは選択を固定する参照点となることが示された。
Direct solar-to-hydrogen conversion via inverted metamorphic multi-junction semiconductor architectures
doi: 10.1038/nenergy.2017.28
太陽光による水分解の効率は、多接合半導体構造でバンドギャップを慎重に選択することによって向上できる。今回Youngたちは、浸漬型水分解デバイスの各接合部の独立したバンドギャップ制御を可能にする方法を実証し、16%を超える太陽光から水素への変換効率を実現できた。
Interfacial water reorganization as a pH-dependent descriptor of the hydrogen evolution rate on platinum electrodes
doi: 10.1038/nenergy.2017.31
電極触媒作用と水素生成で果たしている役割にもかかわらず、プラチナ上の水素生成反応の完全な解明は依然として困難である。今回、Pt(111)上での水素の吸着と生成に関する詳細な動力学的研究から、水素吸着段階での界面水の再生成の役割が明らかにされている。
The effectiveness of US energy efficiency building labels
doi: 10.1038/nenergy.2017.33
ビルディングにおけるエネルギーの大量消費に取り組むため、省エネ対策への投資を促進する情報プログラムが導入されてきた。今回、米国の3つのプログラムの有効性を比較した研究から、大幅な省エネが見られたにもかかわらず、小規模や中規模のビルディングでは改善が少なかったことがわかった。
Stable 6%-efficient Sb2Se3 solar cells with a ZnO buffer layer
doi: 10.1038/nenergy.2017.46
薄膜太陽電池デバイスは、有毒な材料や希少な材料に基づいていることが多い。今回Wangたちは、ZnO緩衝層上にSb2Se3配向薄膜を成長させ、認証変換効率が5.9%で、厳しい湿度、温度、光照射下での安定性試験を通る太陽電池を作製している。
Impacts of nuclear plant shutdown on coal-fired power generation and infant health in the Tennessee Valley in the 1980s
doi: 10.1038/nenergy.2017.51
原発事故は世論に多大な反響を生じ、しばしば核開発計画の延期という政策決定が下される。今回、1983年から1986年のテネシー峡谷における原子力発電所の運転停止予期せぬ影響が示され、公衆衛生に有害な結果をもたらしたことが実証されている。
Self-assembled dynamic perovskite composite cathodes for intermediate temperature solid oxide fuel cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.214
固体酸化物形燃料電池の電極は、稼働中に安定している必要がある。今回著者たちは、タングステンを置換元素として利用し、ペロブスカイト型酸化物を二相複合体として安定化した。得られた材料は、相の組成を動的に調整して、稼働状態で高い触媒活性を維持した。
Quantification of ion confinement and desolvation in nanoporous carbon supercapacitors with modelling and in situ X-ray scattering
doi: 10.1038/nenergy.2016.215
電気化学的貯蔵システムは複雑であるため、電極と電解質の間のイオンダイナミクスの研究は困難である。今回著者たちは、in situ X線散乱とモンテカルロシミュレーションを組み合わせて、ナノ多孔性炭素スーパーキャパシターにおけるイオンの閉じ込めと脱溶媒和を包括的に解明する方法について報告している。
Direct observation of ion dynamics in supercapacitor electrodes using in situ diffusion NMR spectroscopy
doi: 10.1038/nenergy.2016.216
スーパーキャパシター電極におけるイオンダイナミクスを調べるのは困難だが、その性能の最適化に大きく関わっている。今回著者たちは、in situ拡散NMR分光法を開発し、稼働中のスーパーキャパシターにおける電荷貯蔵イオンの拡散を測定し明らかにしている。
A potassium tert-butoxide and hydrosilane system for ultra-deep desulfurization of fuels
doi: 10.1038/nenergy.2017.8
炭化水素燃料には、燃料を燃焼させたときに触媒コンバーターを劣化させ有毒な硫黄酸化物を放出する有機硫黄分子が含まれている。今回著者たちは、カリウムtert-ブトキシド/シラン系を用いて、ディーゼル燃料の硫黄濃度を極めて低い水準に低減できることを実証している。
Electrolyte additive enabled fast charging and stable cycling lithium metal batteries
doi: 10.1038/nenergy.2017.12
リチウム金属蓄電池の普及には、急速充電能力と長期的なサイクル安定性が必要である。今回著者たちは、二塩電解質への微量のLiPF6の使用を電池に応用する可能性について示している。
Achieving net-zero emissions through the reframing of UK national targets in the post-Paris Agreement era
doi: 10.1038/nenergy.2017.24
パリ協定の世界的な目標を達成するには、ほとんどの政府が現在検討している目標より野心的な目標が必要である。本論文では、英国の長期的な分析に基づいて、正味ゼロ排出の達成に関する課題と、国家の温暖化対策の目標を根本的に再検討する必要性を明らかにしている。
A graded catalytic–protective layer for an efficient and stable water-splitting photocathode
doi: 10.1038/nenergy.2016.192
太陽光による水分解は極めて腐食性の高い条件で行われることが多く、材料の安定性に関する課題となっている。今回Guたちは、光吸収体の上に傾斜を伴う触媒的保護層を形成することで、効率の高い安定した水素製造用光カソードを実現できることを示している。
Strongly emissive perovskite nanocrystal inks for high-voltage solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.194
ペロブスカイト太陽電池は、性能が優れているにもかかわらず、毒性が低い溶剤を用いた工業的にスケーラブルな開発には、さらなる取り組みが必要である。今回この目標に向けて、室温でのCsPbBr3太陽電池の作製にコロイドナノ粒子インクを利用することが提案されている。
The limits of bioenergy for mitigating global life-cycle greenhouse gas emissions from fossil fuels
doi: 10.1038/nenergy.2016.202
バイオエネルギーは化石燃料の代わりに利用される可能性があるが、温室効果ガス削減におよぼす潜在的な恩恵と限界に関する全球スケールの研究はほとんど行われていない。今回Staplesたちは、土地の利用可能性、地域的な生産量、ライフサイクル排出量をモデル化し、2050年のバイオエネルギーの利用可能性と排出削減量の関連性を調べている。
Top and bottom surfaces limit carrier lifetime in lead iodide perovskite films
doi: 10.1038/nenergy.2016.207
表面のキャリアダイナミクスが解明されれば、最適な光電子デバイスの設計が可能になる。今回Yangたちは、多結晶ヨウ化鉛ペロブスカイトフィルムの総キャリア寿命を表面再結合が制限していることを見いだしている。これは、結晶粒内や結晶粒間よりも表面での再結合の方が重要であるということである。
Lithium-free transition metal monoxides for positive electrodes in lithium-ion batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.208
リチウムイオン電池用の正極材料の特徴は、リチウム元素とリチウムイオン伝導経路である。今回、内在リチウムも伝導チャネルも含まない大容量正極材料用の遷移金属一酸化物が報告されている。
The impacts of storing solar energy in the home to reduce reliance on the utility
doi: 10.1038/nenergy.2017.1
電気料金構造とネットワーク制約は、家庭で太陽エネルギーを貯蔵し電力事業への依存度を下げる動機となる可能性がある。今回、太陽エネルギーを電力系統に送電するのではなく貯蔵することで、電力消費量だけでなく、CO2、SO2、NOxの排出量も増加する可能性があることが示された。
Activation of surface oxygen sites on an iridium-based model catalyst for the oxygen evolution reaction
doi: 10.1038/nenergy.2016.189
電極触媒による水の酸化はエネルギー貯蔵技術で重要であるが、まだその機構の理解を深める必要がある。今回Grimaudたちは、モデル酸化物触媒の表面酸素原子が反応の求電子性中心として働くことを示し、触媒表面の劇的な再構成を観察している。
High-efficiency inverted semi-transparent planar perovskite solar cells in substrate configuration
doi: 10.1038/nenergy.2016.190
基板構成で成長させたペロブスカイト太陽電池は、さまざまな課題を克服できれば幅広い用途が開かれると思われる。このような目的で、Fuたちは、開路電圧が最大1.116Vで変換効率が16.1%の逆型半透明平面ペロブスカイト太陽電池を可能にする構造を報告している。
Ultrastable low-bias water splitting photoanodes via photocorrosion inhibition and in situ catalyst regeneration
doi: 10.1038/nenergy.2016.191
光電極を用いた水分解は、太陽エネルギーを燃料に変換する有望な方法だが、光アノードの安定性が問題となることが多い。今回、MoドープBiVO4光触媒が、触媒のin situ再生と光腐食の抑制によって1,000 h にわたって安定して酸素を生成することが示された。
Accelerated degradation of methylammonium lead iodide perovskites induced by exposure to iodine vapour
doi: 10.1038/nenergy.2016.195
ペロブスカイト系太陽電池の実用化における最大の課題の1つである劣化問題に取り組むために、幅広い研究が行なわれている。今回著者たちは、CH3NH3PbI3などのヨウ素を含むペロブスカイトは、自然に発生するI2によって分解するため本来的に不安定であることを示している。
Global progress and backsliding on gasoline taxes and subsidies
doi: 10.1038/nenergy.2016.201
エネルギー市場の改革は低炭素への移行に取り組むために必要であるが、評価が難しい。今回新たなデータで、ほとんどすべての国のガソリンに対する暗黙の税と補助金を1カ月おきに評価したところ、まちまちな結果が示されたことから、効果的な政策手段を実施することの難しさが浮き彫りとなった。
Photocatalytic hydrogen generation from hydriodic acid using methylammonium lead iodide in dynamic equilibrium with aqueous solution
doi: 10.1038/nenergy.2016.185
有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト材料は、太陽光発電用途との関連で集中的な研究の対象となっている。今回著者たちは、動的平衡を利用し、メチルアンモニウムヨウ化鉛を用いてHI水溶液から光触媒によって水素を生成している。
Ultrathin metal–organic framework nanosheets for electrocatalytic oxygen evolution
doi: 10.1038/nenergy.2016.184
酸素生成反応用の効率の高い電解触媒は、水分解や金属空気電池などの用途に重要であるため、切望されている。今回、低い過電圧でアルカリ媒体から酸素を生成する極薄金属有機構造体が作製された。
Enhanced stability and efficiency in hole-transport-layer-free CsSnI3 perovskite photovoltaics
doi: 10.1038/nenergy.2016.178
スズ系太陽電池デバイスは鉛系のデバイスより毒性が低いが、スズの酸化の影響を受けやすいため安定性に深刻な問題がある。今回、SnCl2添加物を含み優れた安定性を示すCsSnI3ペロブスカイト太陽電池が報告されている。
Enhanced electron extraction using SnO2 for high-efficiency planar-structure HC(NH2)2PbI3-based perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.177
平面構造ペロブスカイト太陽電池は、ヒステリシスを示し、メソ多孔構造のものより効率が低いことが多い。今回Jiangたちは、SnO2電子輸送層を用いると、平面デバイスの性能が向上して、認証効率が19.9%になることと、より低い温度での処理が可能になることを示している。
Net load variability in Nordic countries with a highly or fully renewable power system
doi: 10.1038/nenergy.2016.175
断続的な再生可能資源が電力に占める割合がますます大きくなっているため、正味負荷の変動性が変化している。今回の論文では、北欧の電力体系について再生可能エネルギーのさまざまな組み合わせをさまざまな時間スケールでモデル化し、最適ミックスが変動の周波数帯にどう依存しているのか示している。
Dynamics and evolution of the role of biofuels in global commodity and financial markets
doi: 10.1038/nenergy.2016.169
バイオ燃料価格は、トウモロコシ、サトウキビ、ヤシ油などの関連する一次産品に依存しているが、他の非原料一次産品との関係はあまり調べられていない。今回Filipたちは、33種類の一次産品と資産のデータセットを分析し、ブラジルと米国、欧州のバイオ燃料との関係を調べている。
Factors affecting household satisfaction with electricity supply in rural India
doi: 10.1038/nenergy.2016.170
電力は社会経済的発展の基本的側面の1つである。今回Urpelainenたちは、インド農村部の8,568世帯を調査し、電力を利用できる平均時間は電力供給に対する家庭の満足度の重要な要因だが、信頼性と電圧安定度はそれほど重要ではないことを見いだしている。
Identification of safety gaps for fusion demonstration reactors
doi: 10.1038/nenergy.2016.154
ITERに続く核融合原型炉では、核融合エネルギーの実用化について示す必要がある。初期設計留意点の指針となるべく、今回の概説では、現在の核分裂反応炉、ITER、将来の核融合炉の間で解消すべき安全性のギャップについて調べている。
Defects in perovskite-halides and their effects in solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.149
ハロゲン化物ペロブスカイト半導体における欠陥物理の解明は、ペロブスカイト太陽電池の性能に対する構造欠陥や化学欠陥の影響を制御するのに不可欠である。今回PetrozzaとBallは、こうした材料の欠陥に関する現在の知見について概説している。
Towards stable and commercially available perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.152
ペロブスカイト太陽電池は、既存技術の安価な代替品となりうるものとして登場した。今回Parkたちは、ペロブスカイト太陽電池の商業化戦略について検討している。
Doctor-blade deposition of quantum dots onto standard window glass for low-loss large-area luminescent solar concentrators
doi: 10.1038/nenergy.2016.157
発光型太陽光集光器は、安価かつ大面積での太陽光の回収に利用でき、建物一体型太陽光発電に有望である。今回Liたちは、シリカ被覆コロイド量子ドットから、内部量子効率が10%を超える数十cmのそうしたデバイスを作製している。
The role of the US in the geopolitics of climate policy and stranded oil reserves
doi: 10.1038/nenergy.2016.158
石油需要と石油やガスの資源基盤の長期的バランスは、技術の飛躍的進歩によって変化すると考えられる。Jaffeによると、米国の主導する低炭素社会へ向けた取り組みと、石油輸出大国の戦略の間の緊張の高まりが、エネルギー市場の特徴になると考えられる。
Photocatalytic hydrogen production using twinned nanocrystals and an unanchored NiSx co-catalyst
doi: 10.1038/nenergy.2016.151
光を用いて水溶液から水素を生成するため、より高効率で貴金属を含まない触媒が求められている。今回Liuたちが高い量子効率を実現するのに用いた系では、Cd0.5Zn0.5S光触媒と、それに固定されていない小さなNiSx粒子からなる共触媒が提案されている。
Charge transport in CdTe solar cells revealed by conductive tomographic atomic force microscopy
doi: 10.1038/nenergy.2016.150
欠陥は光起電力デバイスの性能に影響をおよぼすが、その正確な役割はまだ調べ終わっていない。今回Luriaたちは、稼働中のCdTe太陽電池における電流経路のナノスケール分解能の3Dイメージングを用いて、伝導に寄与する電気的に活性な欠陥を観察している。
Concentrating solar thermoelectric generators with a peak efficiency of 7.4%
doi: 10.1038/nenergy.2016.153
太陽熱電発電機は太陽エネルギーを電気に変換する有望な技術だが、効率は5.2%未満にとどまっていた。今回Kraemerたちは、効率が9.6%の太陽熱電発電機と、それを使った集光型太陽熱電発電システムの効率が7.4%になったことを報告している。
Perovskite solar cells with 18.21% efficiency and area over 1 cm2 fabricated by heterojunction engineering
doi: 10.1038/nenergy.2016.148
これまで、逆型ペロブスカイト太陽電池の性能は、通常の構造の電池の性能に後れを取っていた。今回Wuたちは、傾斜ヘテロ接合を有する逆型ペロブスカイト-フラーレン太陽電池を作製し、セル面積が1 cm2の電池で18%を超える認証効率を実現している。
Polymer-templated nucleation and crystal growth of perovskite films for solar cells with efficiency greater than 21%
doi: 10.1038/nenergy.2016.142
ペロブスカイト太陽電池で高い効率を得るには、ペロブスカイト膜の結晶化過程の制御が非常に重要である。今回Biたちは、ペロブスカイト結晶の核生成と成長の制御にポリ(メタクリル酸メチル)をテンプレートとして用いることを提案し、21.6%の効率を実現している。
Identification of advantageous electricity generation options in sub-Saharan Africa integrating existing resources
doi: 10.1038/nenergy.2016.140
開発途上国では、エネルギー利用を向上させる戦略が緊急に必要である。今回Szabóetたちは、ダムや非ハイブリッド発電セット、バイオマスの同時燃焼といった十分に活用されていない既存のエネルギーインフラに依存しているサハラ以南のアフリカで、電力利用を広める方法を提案している。
Micro-cable structured textile for simultaneously harvesting solar and mechanical energy
doi: 10.1038/nenergy.2016.138
柔軟な携帯電源による環境発電は、さまざまなデバイスに持続的に電力を供給できる。今回Chenたちは、太陽電池と摩擦電気ナノ発電機を備え、太陽エネルギーと力学的エネルギーを同時に回収できるハイブリッド発電織物について報告している。
Expert elicitation survey on future wind energy costs
doi: 10.1038/nenergy.2016.135
陸上と海上の両方における風力エネルギーの世界的展開が進むかどうかは、将来のコストにかかっている。今回Wiserたちは、2050年までのコスト削減と技術的進歩について、第一線の専門家163人に行った聞き取り調査の結果を報告している。
Activity origin and catalyst design principles for electrocatalytic hydrogen evolution on heteroatom-doped graphene
doi: 10.1038/nenergy.2016.130
無金属ドープグラフェン材料がエネルギー変換の電極触媒として浮上しているが、その活性はまだ低い。今回Jiaoたちは、水素を生成する触媒活性の起源を調べ、金属を含む基準材料に匹敵する活性を持つ無金属触媒への経路を示唆している。
The pressing energy innovation challenge of the US National Laboratories
doi: 10.1038/nenergy.2016.117
米国立研究所はエネルギー科学と技術の開発に重要な役割を果たし続けると考えられるが、研究所の事業に問題がないわけではない。今回Anadonたちは、研究所が直面している課題について検討し、目標のさらなる達成に役立つ変化を提案している。
Design principles for electrolytes and interfaces for stable lithium-metal batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.114
気金属リチウムアノードを用いる蓄電池の開発は、樹枝状結晶の形成などの課題に直面している。今回著者たちは、樹枝状結晶の増殖防止に関する最近の進展について概説し、リチウム金属電池の電解質と界面の設計原理を検討している。
Advances in lithium–sulfur batteries based on multifunctional cathodes and electrolytes
doi: 10.1038/nenergy.2016.132
Li–S電池は安価な高エネルギー貯蔵システムであるが、その全潜在能力はまだ実現されていない。今回の概説では、正極と電解質における多硫化物の化学的性質に関する理解の最近の進展について概観し、長寿命の高負荷電池へ向けたアプローチについて検討している。
Advances in understanding mechanisms underpinning lithium–air batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.128
リチウム空気電池は、高いエネルギー貯蔵能力が得られる見込みが大いにあるが、その実現には非常に大きな困難も伴う。今回の概説では、リチウム空気電池の運用を左右する基礎科学の理解における最近の進展について概観し、酸素電極における反応に注目している。
A regenerative elastocaloric heat pump
doi: 10.1038/nenergy.2016.134
冷暖房は世界のエネルギーの大部分を消費しているが、現在の技術はエネルギー効率が低い。今回Tušekたちは、他の熱量効果を利用した冷却装置やヒートポンプ装置より性能が優れたものとなりうる、能動的再生型弾性熱量ヒートポンプについて報告している。
A high-capacity and long-life aqueous rechargeable zinc battery using a metal oxide intercalation cathode
doi: 10.1038/nenergy.2016.119
高性能な正極材料は、水系亜鉛イオン電池の開発に極めて重要である。今回、層状Zn0.25V2O5⋅nH2O系正極における亜鉛イオンの可逆的インタカレーションを利用した電池は、高容量と長期的なサイクル安定性を示すことが報告されている。
Hydrate-melt electrolytes for high-energy-density aqueous batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.129
これまで報告されてきた水系リチウムイオン電池のエネルギー密度は、市販されている非水系リチウムイオン電池よりはるかに低い。今回、スピネル型Li4Ti5O12負極の可逆作動が可能になり、130 Wh kg-1という市販のリチウムイオン電池に匹敵する高いエネルギー密度を示す水系リチウムイオン電池が報告されている。
Designing ternary blend bulk heterojunction solar cells with reduced carrier recombination and a fill factor of 77%
doi: 10.1038/nenergy.2016.118
有機太陽電池の光電子工学的性能、特に曲線因子は、キャリア再結合によって制限されることが多い。今回Gaspariniたちは、3元ブレンドに規則性ポリマーを加えることでキャリア再結合が減少し、77%という曲線因子を達成できることを示している。
An operationally flexible fuel cell based on quaternary ammonium-biphosphate ion pairs
doi: 10.1038/nenergy.2016.120
燃料電池の開発では、集中的な研究が行なわれている。今回著者たちは、第四級アンモニウム-重リン酸塩イオン対を用いたプロトン交換膜燃料電池によって、従来の技術では達成不可能な有望な性能が、さまざまな条件下で得られることを報告している。
Steam generation under one sun enabled by a floating structure with thermal concentration
doi: 10.1038/nenergy.2016.126
水の蒸発と蒸気の生成に太陽エネルギーを用いることができるが、それには高価な集光装置が必要となることが多い。今回Niたちは、集光装置を必要とせずに100℃で蒸気を発生させる、集熱を利用した安価な太陽吸熱器を実証している。
Potential for widespread electrification of personal vehicle travel in the United States
doi: 10.1038/nenergy.2016.112
電気自動車の普及は個々のドライバーの需要が満たされないと実現しない。今回著者たちは、米国の個人向け自動車のエネルギー消費モデルを示しており、電気自動車の普及可能性の評価が可能になった。
Scalable synthesis of silicon-nanolayer-embedded graphite for high-energy lithium-ion batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.113
シリコンは高エネルギー電池の電極としてかねてから知られているが、その商品化は大きな障害に直面している。今回著者たちは、工業用電極密度でサイクル安定性を示す、シリコンナノ層に包まれたグラファイト電極のスケーラブルな合成について報告している。
Anion-redox nanolithia cathodes for Li-ion batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.111
気体酸素と結晶酸素の間の大きな相変化は、リチウム空気電池の性能を低下させる。今回、Li2OとCo3O4のナノコンポジットからなるカソードを用いた電池は、ガス発生を全く伴わずに安定したサイクル特性と高いエネルギー密度を示すことが報告されている。
Impacts of climate change on sub-regional electricity demand and distribution in the southern United States
doi: 10.1038/nenergy.2016.103
将来の地域的な電力需要は、気候変動と人口移動の影響を受けると思われる。今回Allenetたちは、気温の上昇と人口の変化(極端な気象に応じたものを含む)に関する予測を組み合わせ、2050年までの米国南部の電力需要と変電所容量のマップを作成した。
A redox-flow battery with an alloxazine-based organic electrolyte
doi: 10.1038/nenergy.2016.102
有機系電解質を用いるレドックスフロー電池には、従来のフロー電池に優る多くの利点がある。今回、アロキサジンを用いた高性能フロー電池が報告されている。アロキサジンは、ビタミンB2の骨格構造に類似した、水中で安定な水溶性のレドックス活性有機分子である。
Effects of a behaviour change intervention for Girl Scouts on child and parent energy-saving behaviours
doi: 10.1038/nenergy.2016.91
子供を対象とする行動的介入は家族全員に影響を及ぼしうるため、省エネ計画にとって魅力的である。今回Boudetたちは、ガールスカウト団30団体を用いて、家庭での省エネ行動と食品や交通手段に関する省エネ行動に対する介入を試し、省エネを促進させる可能性があることを見いだしている。
High-performance battery electrodes via magnetic templating
doi: 10.1038/nenergy.2016.99
細孔を持つ電極材料は一般に迷宮度が高いが、これは電池性能にとっては有害である。今回、多孔性で迷宮度が低く高容量の電池電極を作成する磁気配列方法が開発されている。
Path dependence in energy systems and economic development
doi: 10.1038/nenergy.2016.98
安価なエネルギーは経済成長を促進するが、それによって経済は特定のエネルギーを大量消費する未来を強いられることになる。今回R Fouquetは、エネルギーシステムの経路依存性は経済に多大な影響を及ぼしてきたことを示し、政府がエネルギー供給に関する選択を行う前に、慎重に考慮されるべきだと主張している。
Facet-dependent photovoltaic efficiency variations in single grains of hybrid halide perovskite
doi: 10.1038/nenergy.2016.93
ハイブリッド有機-無機ペロブスカイトの光起電力特性は局所的な微細構造の影響を受けやすいが、ナノスケールでの定量化が難しい。今回Leblebiciたちは、導電性原子間力顕微鏡を用いて局所的な短絡電流と開路電圧をマッピングし、個々の結晶粒内の不均一性を見いだしている。
Magnetically aligned graphite electrodes for high-rate performance Li-ion batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.97
リチウムイオン電池の厚い電極における一般的な問題は、イオン輸送の遅さである。今回著者たちは、低磁場を用いる粒子配列法について報告し、配列した厚いグラファイト電極ではリチウム拡散経路が改善され、レート性能が向上することを示している。
Harvesting low-grade heat energy using thermo-osmotic vapour transport through nanoporous membranes
doi: 10.1038/nenergy.2016.90
100℃以下の温度の熱源からの熱の回収は大量のエネルギーを供給できるが、現在の技術では実現が難しい。今回Straubたちは、40℃という低温の熱源から発電できる熱浸透エネルギー変換過程を考案している。
Metal–organic framework-based separator for lithium–sulfur batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.94
リチウム硫黄電池の大きな課題の1つは、電極間でのリチウム多硫化物の望ましくない移動(シャトリング)である。今回著者たちは、シャトル効果を抑制して安定した長期的なサイクル特性を示す、金属有機構造体を用いたセパレーターについて報告している。
Fast charge separation in a non-fullerene organic solar cell with a small driving force
doi: 10.1038/nenergy.2016.89
有機太陽電池の効率は、電荷分離の時間スケールに依存しており、大きな駆動力を通して迅速な分離が実現される。今回Liuたちは、非フラーレン有機混合物が、ごく小さな駆動力しか存在しない場合でも迅速な電荷分離と9.5%という効率を示すことを明らかにしている。
Limiting the public cost of stationary battery deployment by combining applications
doi: 10.1038/nenergy.2016.79
電池は、断続的な再生可能エネルギーに基づくエネルギーシステムを支えられる見込みがあるが、投資先としての魅力はまだ低い。今回Stephanたちは、技術経済モデルを用いて、電池を複数の定置用途に用いればリターンが増加しリスクが減少することを見いだしている。
Self-formed grain boundary healing layer for highly efficient CH3 NH3 PbI3 perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.81
薄膜ペロブスカイト太陽電池の粒界は、光電子工学的性能に有害な非放射キャリア再結合の原因となる。今回Sonたちは、前駆体溶液中の過剰なCH3NH3Iを用いて粒界を不活性化し、20.4%という効率を達成する方法を示している。
Modelling the potential for wind energy integration on China’s coal-heavy electricity grid
doi: 10.1038/nenergy.2016.86
風力資源からのクリーンエネルギーの生産量増加は、中国が自国の2030年のエネルギーミックス目標を達成し気候変動と闘うのに役立つと考えられる。今回Davidsonたちは、中国での風力発電の可能性をモデル化し、2030年に送電網に統合される可能性があるのは年間2.6 PWhだと推定している。
Quantifying uncertainties influencing the long-term impacts of oil prices on energy markets and carbon emissions
doi: 10.1038/nenergy.2016.77
最近の石油価格の下落は世界のエネルギー市場に多大な影響をもたらし、こうした市場が長期的にどのように発展するかという問題が提起されている。今回の論文では、複数のシナリオを用いてエネルギーと排出量に対する将来のさまざまな石油価格の影響と、それらの影響がどの不確実性に依存しているのかを評価している。
Promises and challenges of nanomaterials for lithium-based rechargeable batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.71
ナノ材料の設計は、従来の電池の根本的な問題に取り組む解決策を与える可能性がある。今回Cuiたちは、リチウム系蓄電池におけるナノ材料の使用に関する期待と課題の双方について概説している。
Comparison and interactions between the long-term pursuit of energy independence and climate policies
doi: 10.1038/nenergy.2016.73
気候政策は、さらなる便益としてエネルギー自給を達成できるとしばしば主張されている。今回Jewellたちは5つのエネルギー経済モデルを用い、その逆は当てはまらないことを明らかにした。すなわち、エネルギー輸入量の制限にかかる費用は気候変動の緩和よりずっと少ないが、排出量を大きく削減できないと思われる。
Efficient storage mechanisms for building better supercapacitors
doi: 10.1038/nenergy.2016.70
スーパーキャパシターの開発には、イオン吸着と電荷貯蔵の機構の基本的理解が必要である。今回Salanneたちは、炭素系と酸化物系のスーパーキャパシターの機構を化学的側面と物理的側面の双方から概説している。
Rational design of redox mediators for advanced Li–O2 batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.66
酸化還元メディエーターなどの可溶性触媒によって、Li–O2電池のエネルギー効率を向上できる見込みがある。今回著者たちは、効率的な酸化還元メディエーターを見つけるための設計原理を提案し、こうした新しい触媒の応用を実証している。
Challenges faced by China compared with the US in developing wind power
doi: 10.1038/nenergy.2016.61
風力発電所の出力抑制やタービンの品質といった複数の要因のために、中国の風力エネルギー生産容量は米国に比べて少なくなっている。著者たちは、中国の風力発電出力を制限しているこうした要因の相対的な重要性を定量化し、政策提言を行っている。
Enhanced photovoltaic energy conversion using thermally based spectral shaping
doi: 10.1038/nenergy.2016.68
光起電力デバイスの太陽光発電能力は、入射光のスペクトルを熱光起電力デバイスで調整することによって改善できる。今回Biermanたちは、そうしたデバイスの1つが6.8%という太陽光–電力変換効率を達成し、太陽電池単独の効率を超えることを示している。
Monocrystalline CdTe solar cells with open-circuit voltage over 1 V and efficiency of 17%
doi: 10.1038/nenergy.2016.67
CdTe太陽電池は、可能性のある最大変換効率に到達していないが、その理由の1つは、開路電圧の向上が、他の半導体でできた電池に後れを取っていることである。今回Zhaoたちは、開路電圧が最大1.1Vで変換効率が最大17%の単結晶CdTe太陽電池について報告している。
Metal halide perovskites for energy applications
doi: 10.1038/nenergy.2016.48
有機金属ハロゲン化物ペロブスカイトは、その光電子工学特性のおかげで光起電力への応用に大きな注目を集めている。今回、さまざまなエネルギー関連用途におけるこうした材料の可能性に関する概要が示されている。
Energy decisions reframed as justice and ethical concerns
doi: 10.1038/nenergy.2016.24
エネルギーに関する意思決定を行う際、消費者や政策立案者は道徳的問題をつい見過ごしてしまうが、それが多大な社会的影響をもたらす場合がある。今回、正義と倫理に基づく考えから、エネルギー問題を見直す枠組みがどのように得られ、意思決定プロセスに質の高い情報を提供できるかについて検討されている。
The roles of users in shaping transitions to new energy systems
doi: 10.1038/nenergy.2016.54
個々の合理的な消費者の意思決定はそれほど容易に単純化できないにもかかわらず、エネルギーシステムに対する現在のアプローチはこうした消費者を頼りにしている。今回、より幅広い移行の一部としての消費者という概念が検討され、システムの変化を形成し成立させるユーザーの類型学が提案されている。
Opportunities and insights for reducing fossil fuel consumption by households and organizations
doi: 10.1038/nenergy.2016.43
必要なエネルギーサービスを提供しつつ炭素排出量削減の公約を満たすということは、化石燃料の消費量を削減するということである。今回、低炭素技術と低消費技術の採用を増やし、家庭や団体での慣行に変化を生じさせることに関する社会科学的洞察が示されている。
Multi-shelled metal oxides prepared via an anion-adsorption mechanism for lithium-ion batteries
doi: 10.1038/nenergy.2016.50
リチウムイオン電池への応用を目的として、多殻金属酸化物ナノ構造体の開発に集中的な取り組みがなされている。今回、従来の炭素質テンプレート上でのカチオン吸着とは異なる金属アニオン吸着機構が、酸化バナジウム中空微小球の合成において実証された。この微小球は優れた電池性能を示す。
Large-scale data analysis of power grid resilience across multiple US service regions
doi: 10.1038/nenergy.2016.52
送電網はハリケーンなどの極端な気象事象中にしばしば故障し、何百万人もの利用者が電気のない状況に取り残される。今回、広範な地理的地域における送電網の運用に関する大規模分析から、こうした事象が、通常運用時に隠れていた脆弱性を悪化させることが明らかになった。
Gold-supported cerium-doped NiOx catalysts for water oxidation
doi: 10.1038/nenergy.2016.53
酸素発生反応のための効率的な触媒、特にアルカリ媒体中の触媒は、さまざまなエネルギー技術に応用できるため非常に期待されている。今回、金担持NiCeOx触媒が、幾何学的効果と電子的効果の相乗効果に起因する優れた触媒活性を有することが示された。
Reversible aqueous zinc/manganese oxide energy storage from conversion reactions
doi: 10.1038/nenergy.2016.39
水系蓄電池は、比較的安価で安全なため魅力的である。今回、変換反応機構を介して稼働し長期的なサイクル安定性を示す亜鉛/マンガン酸化物水系電池が報告されている。
Tailored semiconducting carbon nanotube networks with enhanced thermoelectric properties
doi: 10.1038/nenergy.2016.33
有機熱電材料は 既存の無機熱電材料の安価で汎用的な代替品として浮上している。今回Averyたちは、高い熱電特性を示す、特性を選択したカーボンナノチューブ系材料について報告している。
The role of surface passivation for efficient and photostable PbS quantum dot solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.35
量子ドット表面の制御によって、より高い効率の量子ドット太陽電池が可能になっている。今回、効率が9.6%の電池の性能と光安定性における、表面不活性化とヒドロキシル配位子抑制の役割が明らかにされた。
The role of metal–organic frameworks in a carbon-neutral energy cycle
doi: 10.1038/nenergy.2016.34
水素、メタン、二酸化炭素といったガスの回収、貯留、変換は、カーボンニュートラルなエネルギー供給において重要な役割を担う可能性がある。本論文では、こうした用途における金属有機構造体(有機リンカーによって結合された金属イオンや金属クラスターの多孔質ネットワーク)の役割を探っている。
High-power all-solid-state batteries using sulfide superionic conductors
doi: 10.1038/nenergy.2016.30
全固体電池の開発には、高速リチウム伝導体が必要である。今回著者たちは、極めて高い伝導率をもつリチウム化合物Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3を報告し、この化合物を利用した全固体電池が高い出力密度をもつことを実証している。
Electricity market design for the prosumer era
doi: 10.1038/nenergy.2016.32
小規模再生可能エネルギーシステムとスマート技術によって、エネルギーの消費者が同時に生産者とサービス提供者になることが可能になっている。本論文では、この「生産消費」現象について調べ、3つの有望な生産消費者市場モデルと将来の実現に向けた問題点を明らかにしている。
Economic analysis of scientific publications and implications for energy research and development
doi: 10.1038/nenergy.2016.20
エネルギー技術に対する政府の支援は極めて重要だが、下流部門への影響の定量化は困難である。このような目的で、Poppは公的資金によって得られた科学出版物のデータを分析し、資金提供と新規出版物の間のタイムラグを調べ、その結果生じる政策への影響を検討している。
Tracking-integrated systems for concentrating photovoltaics
doi: 10.1038/nenergy.2016.18
集中型太陽光発電で、全システムを回転させて太陽の動きを追尾することは非現実的であり、商業展開の妨げとなっている。これに対して、この論文で検討されている統合的追尾方式は、安価な屋上太陽光発電により適している。
CdTe solar cells with open-circuit voltage breaking the 1 V barrier
doi: 10.1038/nenergy.2016.15
CdTe系太陽電池は、主流のシリコン系デバイスの安価な代替品として有望だが、生じる電圧は900mV以下であることが多い。今回Burstたちは、CdTeを第5族元素でドーピングして、1V以上の回路電圧を達成できることを明らかにした。
Colloidal quantum dot solids for solution-processed solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2016.16
溶液プロセスで作製したコロイド量子ドットを用いる太陽電池は、従来のデバイスの代替品として有望である。本論文では、量子ドット太陽電池分野の商業化に向けた最近の進展と未解決の課題について論じている。
Moving beyond alternative fuel hype to decarbonize transportation
doi: 10.1038/nenergy.2016.13
代替燃料技術は輸送の脱炭素に非常に重要だが、注目される技術は時とともに移り変わってきた。本論文では、こうしたさまざまな技術に対するマスメディア、イノベーション、資金提供のデータを分析し、ハイプ(過度の注目や期待)を乗り越えて技術の採択を支援するのに役立つ行動を取るよう促している。
Selective deposition and stable encapsulation of lithium through heterogeneous seeded growth
doi: 10.1038/nenergy.2016.10
電気化学サイクルにおける制御できないリチウム析出は、リチウム電池開発の大きな懸案事項である。今回、さまざまな金属基板上でのリチウムの核生成パターンが分析され、さらに中空の炭素球内部のナノシードにリチウムを選択的に析出させられることが示された。
Momentum is increasing towards a flexible electricity system based on renewables
doi: 10.1038/nenergy.2015.30
再生可能エネルギー技術によって、電力システムに多くの変化をもたらすことができるようになっている。本論文では、社会的・経済的・技術的要因のために、世界的なエネルギー政策論議が再生可能エネルギーに基づくより柔軟なシステムに急速に傾いていることを示す。
Efficient organic solar cells processed from hydrocarbon solvents
doi: 10.1038/nenergy.2015.27
高性能有機太陽電池の作製には、環境に有害な溶剤による処理が必要なことが多い。今回、炭化水素溶剤処理によって、環境によりやさしい方法で比較的高い性能を達成できることが示された。
Growth of conformal graphene cages on micrometre-sized silicon particles as stable battery anodes
doi: 10.1038/nenergy.2015.29
マイクロメートルサイズのシリコン粒子は電池用アノード材料として魅力的だが、ナノスケールの粒子よりもさらに構造劣化が生じやすい。今回、微小シリコン粒子の周囲にコンフォーマルに成長させたグラフェンケージが、サイクル安定性を向上させることが示された。
Efficient silicon solar cells with dopant-free asymmetric heterocontacts
doi: 10.1038/nenergy.2015.31
ドープしたシリコンの接触をシリコン太陽電池に用いると、製造工程のコストが高くなり、さらに複雑になる。今回、アルカリ金属フッ化物と金属酸化物によって実現された、シリコン上のドーパントフリーかつキャリア選択的な界面を利用して、こうした問題を回避できるようになった。
Lessons learned from Ontario wind energy disputes
doi: 10.1038/nenergy.2015.28
オンタリオ州(カナダ)は、風力エネルギー生産を増やすため、2009年からさまざまな政策を導入してきた。本論文では、健康、金銭的な利益、コミュニティーの参加、景観という観点から、風力エネルギー論争に対するこうした政策の影響と意義について検討している。
In situ observation of heat-induced degradation of perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2015.12
ペロブスカイト太陽電池では、熱劣化が商業化の障害になっている。今回、熱によって生じる構造的変化と化学的変化の機構が、透過電子顕微鏡のin situ測定によって明らかにされた。
Assembly of photo-bioelectrochemical cells using photosystem I-functionalized electrodes
doi: 10.1038/nenergy.2015.21
電極に天然の光化学系と酸化還元酵素を統合して結合させ、光エネルギーを電力に変換するのは困難である。今回、ここうした統合によって、光電流発生効率の高い光-生物電気化学電池が実証された。
Functionalization of perovskite thin films with moisture-tolerant molecules
doi: 10.1038/nenergy.2015.16
有機無機ペロブスカイトは、光起電力デバイスの材料として有望だが、周囲湿度に対する耐性が低い。今回、耐水性分子を用いてペロブスカイトの表面を機能化し、高湿度条件下での性能を安定化できた。
A molecularly engineered hole-transporting material for efficient perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2015.17
ペロブスカイト太陽電池の効率は、活性層から電荷を抽出する正孔輸送材料の性能によって制限されている。今回、spiro-OMeTADに匹敵する性能の正孔輸送材料が分子設計によって実現された。
A metal-organic framework-derived bifunctional oxygen electrocatalyst
doi: 10.1038/nenergy.2015.6
貴金属は効率の良い酸素電極触媒だが、安定性の低さとコストの高さが欠点である。今回、金属有機構造体由来の窒素ドープ・カーボンナノチューブには、Pt/C触媒に匹敵する活性と耐久性があることが示された。
Fast and reversible thermoresponsive polymer switching materials for safer batteries
doi: 10.1038/nenergy.2015.9
安全性は、リチウムイオン電池開発における重要な課題である。今回、電極に埋め込んだ熱応答性ポリマー複合材料は、過熱時に電池を迅速にシャットダウンするが、正常な状態になると機能を急速に回復させることが示された。
Correlation of energy disorder and open-circuit voltage in hybrid perovskite solar cells
doi: 10.1038/nenergy.2015.1
現在の研究は、太陽放射のエネルギーを変換する太陽電池の効率を高めることに力が注がれている。今回、ペロブスカイト太陽電池の電荷輸送層の構造秩序を改善することで、変換効率が17.1%から19.4%に高まることが示された。
Metal segregation in hierarchically structured cathode materials for high-energy lithium batteries
doi: 10.1038/nenergy.2015.4
先進的な電池では、構成材料の界面特性を慎重に制御する必要がある。今回の研究では、表面再構成に抵抗性を示し、サイクル性能を向上させる階層構造カソード材料が設計された。
Policy trade-offs between climate mitigation and clean cook-stove access in South Asia
doi: 10.1038/nenergy.2015.10
世界の多くの人々が固形燃料を調理や暖房にいまだに利用していることから、クリーンな代替燃料を助成するプログラムが策定されている。今回の研究では、気候変動の緩和政策が燃料費に及ぼす影響と、こうした計画の有効性が分析された。
Impacts of a 32-billion-gallon bioenergy landscape on land and fossil fuel use in the US
doi: 10.1038/nenergy.2015.5
バイオ燃料は化石燃料の持続可能な代替燃料となるが、土地利用の大きな変化が必要になる可能性がある。今回の研究では、生態系モデルと経済モデルを組み合わせ、320億ガロンという米国の再生可能燃料基準に対する土地利用配分と温室効果ガス排出量が検討された。
High-capacity battery cathode prelithiation to offset initial lithium loss
doi: 10.1038/nenergy.2015.8
リチウムイオン電池の初回サイクルでのリチウム損失を抑制するため、集中的な研究が行なわれている。今回、変換材料のナノコンポジットを用いてカソードをプレリチオ化する方法によって、リチウムの初期損失が相殺され、電池性能が向上することが示された。