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染色体外DNA:染色体外DNAは多様ながんでがん遺伝子増幅および予後不良と関連している
Nature Genetics 52, 9 doi: 10.1038/s41588-020-0678-2
染色体外DNA(ecDNA)の増幅は、腫瘍内の遺伝的不均一性を高めて腫瘍の進化を促進する。しかし、その頻度や臨床的な影響は不明である。ここでは、3212人のがん患者から得た全ゲノム塩基配列データのコンピューター解析により、ほとんどのがん種でecDNAの増幅が頻繁に起きているが、血液や正常組織では増幅は認められないことを示す。がん遺伝子は増幅したecDNA上に高度に濃縮されており、最も頻発するがん遺伝子増幅はecDNA上で起きていた。ecDNAの増幅は、コピー数を一致させた線状DNAと比較して高いレベルでがん遺伝子の転写をもたらすとともに、クロマチンへの接近しやすさをももたらし、また、より頻繁に転写産物の融合を引き起こした。ecDNAを有するがん患者は、ecDNAを介したがん遺伝子の増幅が認められないがんの患者と比較して、組織タイプを一致させた場合でも、生存期間が有意に短かった。ここに示した結果から、ecDNAを介したがん遺伝子の増幅はがんでは一般的に見られるものであり、染色体増幅とは異なって、多様ながんの患者で予後不良の原因となることが実証された。