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神経系疾患:大脳皮質形成異常における体細胞変異についての包括的なマルチオミクスプロファイリング
Nature Genetics 55, 2 doi: 10.1038/s41588-022-01276-9
大脳皮質形成異常(MCD)は、大脳皮質構造や細胞構成の局所的な破綻を伴う神経学的疾患で、大部分が胚形成過程での体細胞モザイク変異から生じ、難治性てんかんを引き起こす。MCDの遺伝学的原因を明らかにすることが困難であるのは、疾患関連のてんかんを治療するために切除された脳組織において、変異の対立遺伝子頻度が低いからである。本論文では、MCDの283症例の切除脳組織について、体細胞変異の徹底的なプロファイリングを行い、全エキソーム塩基配列決定法および標的アンプリコン塩基配列決定法をマウスのin uteroエレクトロポレーション法などの機能検証と組み合わせ、さらに単一核RNA塩基配列決定法を行うことで、変異が見られる69遺伝子を明らかにし、MCDの遺伝的全体像を明らかにした。遺伝型–表現型相関解析から、異なる病態生理学的表現型および臨床表現型に関連する特異的なMCD遺伝子セットが明らかになった。対照脳と患者脳における一細胞レベルでの変異した遺伝子群の独特な時間空間的発現パターンから、これらの遺伝子が脳発生過程での興奮性神経原性プールおよび出生後のニューロンの過剰興奮性の促進において重要な役割を持つことが示された。