がん:アスピリンがマウスにおける転移を抑制する可能性を示す
Nature
2025年3月6日
アスピリンはマウスのがん転移に対する免疫反応を高めるかもしれないことを報告する論文が、Nature に掲載される。この発見は、効果的な転移防止免疫療法の開発に役立つ可能性があると、著者らは示唆している。
がん細胞が原発腫瘍から離れた臓器に広がる転移は、世界中のがん関連死の90%を占めている。免疫システムは転移と戦う上で重要な役割を果たすが、がん細胞はしばしば免疫監視を回避する方法を見つける。その方法のひとつに、血液中の血小板がトロンボキサンA2(TXA2;thromboxane A2)を産生し、転移部位のT細胞(免疫細胞の一種)の活動を抑制するというものがある。この抑制により、免疫システムが転移したがん細胞を効果的に攻撃し排除する能力が妨げられる。アスピリンは、以前から転移の減少と関連付けられてきたが、作用の正確なメカニズムは不明である。
Rahul Roychoudhuriらは、マウスを使った実験を行い、アスピリンが標的とする新たな免疫抑制経路を発見し、マウスの抗転移免疫力を改善した。著者らは、アスピリンを投与した乳がん、黒色腫、および結腸がんなど、複数の異なるマウスがんモデルが、未処置の対照マウスと比較して、肺や肝臓などの他の臓器への転移率が低いことを発見した。アスピリンは、血小板中のシクロオキシゲナーゼ1(炎症に関与する酵素;cyclooxygenase 1)を阻害し、TXA2の生成を減少させることが知られている。TXA2の減少はT細胞の抑制を緩和し、転移性がん細胞を撃退するT細胞の能力を高めることが分かった。
これらの知見は、アスピリンがマウスの自然免疫反応を高めることで、がん転移を防ぐための比較的安価かつシンプルで有効な補助療法として使用できるかもしれないことを示唆している。今後の研究では、アスピリンと他の免疫療法を組み合わせることで、抗転移効果をさらに高めることができる可能性を探ることができる、と著者らは提案している。
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- Published: 05 March 2025
Yang, J., Yamashita-Kanemaru, Y., Morris, B.I. et al. Aspirin prevents metastasis by limiting platelet TXA2 suppression of T cell immunity. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08626-7
doi:10.1038/s41586-025-08626-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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