Research Press Release

天文学:宇宙再電離の初期兆候

Nature

2025年3月27日

JWST(James Webb Space Telescope;ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)によって、再電離の最中に捉えられた最も初期の銀河のひとつが検出された。今週のNature に掲載される論文で報告された観測結果によると、宇宙再電離(cosmic reionization;初期宇宙で起こった重要な転換)の始まりは、ビッグバンから少なくとも3億3,000万年後であった。

超高温のビッグバン後、宇宙は徐々に冷却し、自由な陽子と電子が結合して中性(電荷のない)ガス、主に水素とヘリウムとなるまで、宇宙は冷却していった。この期間は、宇宙暗黒時代と呼ばれることもある。最初の銀河が宇宙を照らし出した。特に、ライマン連続光(Lyman continuum)として知られる特定の紫外線(UV:ultraviolet)波長の光子は中性水素によって吸収されるが、より短い波長はガスを再電離し、ライマン光子を透過させて地球に届くようにした。この宇宙再電離と呼ばれる現象の時期は不明であった。最近のJWSTの観測では、宇宙誕生から3億年未満の時期に明るい紫外線を放つ銀河が確認されているが、再電離の直接的な証拠は見つかっていなかった。

Joris Witstokらは、JWSTによる観測でビッグバンからわずか3億3,000万年後に再電離の兆候が銀河(JADES-GS-z13-1-LA)で検出されたことを報告している。この明るい放射は、励起状態から基底状態へと遷移する中性水素の信号であるライマン-αであることが確認された。これは、その銀河が中性水素を励起させるのに十分な量の紫外光子を発生させ、地球との間に、水素が安定した最低エネルギー状態に戻った際に放出するライマン-α光子を再び吸収する中性水素がほとんど存在しなかったことを意味する。著者らは、電離の主な源は、質量の大きな高温の恒星か、超大質量ブラックホールである可能性が高いと指摘している。この発見は、初期の銀河の性質に関する新たな洞察をもたらし、宇宙再電離の開始時期と時間軸を特定するのに役立つと、著者らは結論づけている。

Witstok, J., Jakobsen, P., Maiolino, R. et al. Witnessing the onset of reionization through Lyman-α emission at redshift 13. Nature 639, 897–901 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08779-5
 

doi:10.1038/s41586-025-08779-5

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