注目の論文
1つの動作を二元的に制御
Nature Chemical Biology
2008年9月15日
Dual gating in one motion
一部のカリウムチャネルにナトリウムが影響を及ぼす仕組みを明らかにしたという論文が、Nature Chemical Biology(電子版)に掲載される。この発見は、イオンチャネルに関する理解を深めるものであり、強心配糖体など既知の薬物の機能に関して新たな洞察をもたらす可能性もある。
イオンチャネルは細胞膜に存在するタンパク質で、ナトリウムや塩素などのイオンを膜の一方から他方へと透過させている。この働きは電気的勾配を形成する場合があり、それによってニューロン発火などの生体プロセスが生じている。また、内向き整流カリウム(Kir)チャネルの動作は、膜に存在する特定の脂質によって制御されている。一部のKirチャネルはナトリウムにも制御されている(これを「デュアルゲーティング」とよぶ)が、チャネルの動作で両シグナルがどのように必要とされているのかは明らかにされていなかった。
D Logothetisらは、コンピュータと実験を併用し、ナトリウムがアスパラギン酸と結合することによって、そのアスパラギン酸とアルギニンとの相互作用が阻害されていることを明らかにした。そのため、アルギニンが非結合状態になって脂質と相互作用するというのが、両シグナル連携の図式である。今回の分子レベルの洞察は、この重要なチャネルの機能に関する視界を広げるものであり、薬物設計に新たな道を開く可能性がある。
doi: 10.1038/nchembio.112
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