注目の論文
忍び込む阻害剤
Nature Chemical Biology
2011年1月24日
An inhibitor sneaks in
正常な細胞装置を操作することによって不活性な分子から酵素の阻害剤が得られた、という研究成果が、Nature Chemical Biology(電子版)で発表される。この戦略は、糖尿病や炎症、がんなどの疾患と関連する炭水化物修飾の生物学的役割に関して、新たな探究を可能にすると考えられる。
細胞膜を透過して細胞内で機能することができる酵素阻害剤の作製はいまだにきわめて困難であり、炭水化物修飾酵素に典型的な高電荷の阻害剤はその極みである。炭水化物代謝を制御する細胞酵素は一部の非天然分子が正常な代謝経路に侵入するのを許容することが知られており、実際にこの経路は、蛍光標識のために糖を細胞表面に挿入するための研究ツールとしてうまく利用されている。また、医薬品化学の分野では、何らかの形で姿を変えた分子が体内または細胞内に入ると活性型に変化する「プロドラッグ」という考え方が一般的なものとなっている。
D Vocadloたちはこうした発想を組み合わせ、細胞透過性を持つように姿を変えて哺乳類細胞株の中に入り、そこで活性化した分子に変化することができる糖類似化合物を作製した。この活性型化合物は、炭水化物の処理を行うきわめて重要な酵素の効果的な阻害剤であったが、意外にも、この酵素を阻害しても細胞の増殖にはほとんど影響が認められなかった。
doi: 10.1038/nchembio.520
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