【気候科学】化石燃料の生産・利用によるメタン放出の推定値が上方修正される
Nature
2016年10月6日
Climate science: Revision of fossil fuel methane emissions
メタン放出源の詳細な分析が行われ、化石燃料関連産業と自然の地質学的漏出によるメタン放出量が、現在の推定値を最大110%上回ることが明らかになった。この分析結果は、化石燃料関連産業による効率向上によって人間活動の気候への影響が緩和される程度が、これまで考えられていた以上に大きいことを暗示している。また、今回の研究は、化石燃料の生産・利用によるメタン放出量が時間の経過とともに増加していないと考えられることも示している。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。
メタンは、地球の大気を温暖化させる温室効果ガスとして、二酸化炭素に次いで2番目に重要だ。メタンには天然の発生源と人為的発生源が数多くあるが、それぞれの場所と生成量の正確な理解はあまり進んでいない。今回、Stefan Schwietzkeたちは、全球メタン放出量の長期データとメタン炭素同位体比の記録という詳細なデータセットを用いて、全球メタン収支の再評価を行った。その結果、化石燃料(化石燃料関連産業による放出と自然の地質学的発生源からの漏出)によるメタン放出量が、過去の推定値より60~110%多いことが判明した。特に地質学的漏出を除外すると、天然ガス・石油・石炭の生産と使用によるメタン放出量は、現在の排出目録から示唆される値から20~60%多くなっている。
また、Schwietzkeたちは、天然ガス生産におけるメタン漏出量の占める割合が過去30年間に約8%から約2%に減少したと考えられることも報告している。この新知見は、天然ガス産業における改善がメタン放出量の削減にすでに役立っていることを示しているが、天然ガス生産量の増加による影響を打ち消すには、より大きな改善が必要とされる。
doi: 10.1038/nature19797
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