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天体物理学:遠方の銀河で起こった中性子星の衝突がもたらした数々の発見

Nature

2017年10月17日

Astrophysics: In a distant galaxy, colliding neutron stars yield diverse discoveries

Nature

2つの中性子星の合体とそれによる重力波と電磁放射の発生から数々の新知見が得られたことを報告する7編の論文が、今週、NatureとNature Astronomyに掲載される。これらの新知見は、宇宙での爆発現象の1つであるγ線バーストの起源や宇宙の重元素の一部の起源など天体物理学の数多くの側面の解明に役立つと考えられる。

地球から4000万パーセク(1億3000万光年)離れた銀河(NGC 4993)で起こった中性子星(既知の星の中で最も高密度で最も小さな星)の合体が、2017年8月17日にAdvanced LIGO(レーザー干渉計重力波天文台)とAdvanced Virgoという2種の干渉計型重力波検出器によって検出された。この現象(GW170817)によって重力波(宇宙の骨組みに生じる「さざ波」とアインシュタインが予測していた)と電磁放射が発生し、その2秒後にγ線バーストが生じた。過去に検出された重力波シグナルは、2つのブラックホールの合体によるものであったため、重力波だけが検出されることが予想されていた。

GW170817はγ線で検出され、そのことは5編のNature論文に報告されており、X線と可視光、赤外光で検出されたことが1編のNature Astronomy論文に報告されている。そして、これらの論文では、GW170817の特性、例えば、色(最初は青く、だんだん赤くなる)と形状も明らかにされた。論文に記述された電磁放射の特性は、連星中性子星の合体によって起こるキロノヴァ(低光度の爆発現象)の一環として物質ジェットが発生するという以前からの予測を裏付けている。また、これらの論文では、宇宙に存在する鉄より重い元素の一部で起源がわからなかったものについて、その主な生成源が中性子星の合体であることが示唆されている。さらに、1編の論文では、キロノヴァに伴うジェットをジェットの軸方向から外れた方向から観測した可能性が非常に高いことが報告されており、これで、γ線バーストが暗く見えることの多いことを説明できるかもしれない。

Natureに掲載された別の論文では、GW170817の特性を用いて、ハッブル定数(宇宙の膨張を表す測定単位)を算定したことが報告されている。GW170817は、ホスト銀河が分かっている重力波現象として初めてのものであり、論文著者は、このホスト銀河の距離を用いて、ハッブル定数をメガパーセク当たり毎秒約70 kmと算定した。この値は、これまでに発表された推定値に近い。

同時掲載のM. Coleman MillerのNews & Views論文には、「GW170817が物理学と天体物理学の数々の分野を大きく進歩させる絶好の機会となっており、今後のキャンペーンで観測されることが予想される数多くの中性子星の合体に対する我々の欲求を刺激している」という結論が示されている。

doi: 10.1038/s41550-017-0285-z

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