注目の論文
化学:微小重力状態での水の分解
Nature Communications
2018年7月11日
Chemistry: Splitting water in microgravity
無重力に近い状態で光によって水を分解し、水素と酸素を生成する方法を実証したことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、水を使って各種装置の駆動燃料と呼吸に適した酸素を生成できることから、長期宇宙飛行に応用できる可能性がある。
植物は、光と水を燃料と酸素に変換できる。科学者たちは、人工光合成を用いて、この自然の過程を模倣し、さらに改良を加えて、再生可能エネルギーを大々的に利用したいと考えている。この技術の地上での応用は拡大しているが、長期間の宇宙飛行での利用を探究する活動は行われていなかった。
今回、Katharina Brinkertたちの研究グループは、無重力に近い状態で光を使って水を分解する動作効率の高い光電気化学電池を開発した。Brinkertたちは、落下塔で一連の実験を行って、宇宙空間の無重力に近い環境をシミュレーションし、宇宙空間で太陽光を使って水を分解する方法を探究した。その結果、無重力状態では水面からの気泡の除去が制限を受けるため、光による水の分解活動が低下することが分かった。これに対して、Brinkertたちは、電池内部のナノスケールの特徴の形状を調整することで、気泡の放出に成功し、低重力状態での水分解活動を維持した。
Brinkertたちの新技術からは、長期宇宙飛行に用いる生命維持システムの改善と拡張がもたらされる可能性が示唆されている。また、今回の研究からは、地上用の光を用いた水分解装置の改良に関する手掛かりも得られた。
doi: 10.1038/s41467-018-04844-y
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