注目の論文
不精な酵素でポリマーを作る
Nature Chemical Biology
2008年11月10日
Making polymers with a lazy enzyme
バイオポリマーを作り出す新たな経路が発見されたという論文が、Nature Chemical Biology(電子版)に掲載される。人工ポリマーと異なり、バイオポリマー(生物がもつアミノ酸などの基本構成要素からなる)は細胞内で産生され、概して生分解性をもつ。この論文は、生合成に関する我々の知識を拡張し、広汎なバイオポリマーの生成法をもたらすものである。
εポリリジンは天然ホモポリマーであり、1種類の小さな基本構成要素がさまざまな長さに連続して並んでいる。バイオポリマーが特異的配列(このケースではある特定の長さ)をもたずに形成されることは極めてまれであり、この不定性の由来は知られていなかった。
濱野吉十たちは、この長さの不定性が珍しいタンパク質によるものであることを明らかにした。その生合成酵素Plsは既知の複数の酵素の機能を併せもち、組み立てプロセスの一部では厳密な制御を行う一方で、多様な産物を作り出すという一面をもつ。さらに濱野たちは、異なる基本構成要素を加えてこの酵素の「不精さ」を利用することにより、新たなポリマーが作り出されることを示した。これは、生分解性プラスチックから細胞内ナノデバイスまで、さまざまな用途に役立つ可能性がある。
doi: 10.1038/nchembio.125
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