一般市民はナノテクノロジーについてどう考えているのか
Nature Nanotechnology
2008年12月8日
What the public thinks about nanotechnology
ナノテクノロジーのリスクと恩恵に関する一般市民の認識が、Nature Nanotechnology(電子版)の3つの論文で調べられている。
一般市民の意識調査では、ナノテクノロジーに精通している少数の一般市民がナノテクノロジーを好意的にとらえていると報告されている。したがって、一般市民は意識が高まるにつれ好意的に反応するであろうと多くの人が考えるようになった。しかし、D Kahanらが行った実験は、この「精通している人は好意的であるという仮説」を支持するものではない。Kahanらは、ナノテクノロジー情報を求めるような人々とナノテクノロジー情報に対するそのような人々の反応は文化的要素に依存することを見いだした。バランスのとれた情報に触れさせると、商業支持型の価値観をもつ人々(既にナノテクノロジーに精通している可能性が高い)は、恩恵はリスクを上回ると見なす傾向が強くなる。これに対して、反商業的な価値観をもつ人々は、リスクは恩恵をしのぐものと見なす傾向が強くなる。
2つ目の論文で、D Scheufeleらは、米国とヨーロッパにおいて、ナノテクノロジーに対する姿勢に及ぼす信仰心の影響を比較している。Scheufeleらは、デンマーク、フランス、ドイツ、スウェーデンなどの世俗的な国の回答者たちと比較して、オーストリア、アイルランド、イタリア、米国などの宗教的な国の回答者たちは、ナノテクノロジーを「道徳的に容認できる」または「役立つ」と見なす可能性が著しく低いことを見いだしている。また、Scheufeleらは、米国内で信仰心の強い回答者とそうでない回答者との間にも同様の違いがあることを見いだした。
3つ目の論文では、N Pidgeonらが、英国および米国において、ワークショップを利用してエネルギー・健康応用向けのナノテクノロジーに対する姿勢を比較している。そのようなワークショップを利用することによって、新技術に対する反応を一般市民の意識調査より詳しく研究することができる。いずれの国でも、ワークショップ参加者がリスクよりも恩恵に注目する傾向にあること、また、健康や人間強化(human enhancement)への応用と比較すると、エネルギー応用はかなり肯定的に見られていたことが明らかになっている。
doi: 10.1038/nnano.2008.341
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