注目の論文

ヘッジホッグを止める

Nature Chemical Biology

2009年1月19日

Halting Hedgehog

「ロボトニキニン」(robotnikinin)という新しい分子が、これまで知られていなかったメカニズムにより、胚発生に極めて重要なヘッジホッグシグナル伝達経路を停止させることが、Nature Chemical Biology(電子版)に発表される。ヘッジホッグシグナル伝達経路は、胚発生に重要である以外に、複数のがんに関与しており、ロボトニキニンの発見は抗がん薬探索に向けた新たな道筋を示すものと考えられる。

ヘッジホッグシグナル伝達経路に関しては複数の調節物質が発見されているが、経路上のSmoothenedというタンパク質受容体、またはその下流に作用するものばかりである。この経路に新たなメカニズムで作用する調節因子を発見するため、S SchreiberとL Pengたちは、低分子マイクロアレイ(さまざまな物質を固定した顕微鏡用スライドグラス)を利用し、ヘッジホッグタンパク質自体の一部に結合する低分子をスクリーニングした。その結果、ロボトニキニンが発見された。ヘッジホッグ結合分子ということから予想されたとおり、ロボトニキニンはこのシグナル伝達経路でSmoothenedの上流に作用することが示された。さらに、この低分子は、初代ヒト皮膚細胞およびヒトの皮膚の人工モデルでヘッジホッグシグナル伝達を遮断することが明らかにされた。

Smoothenedの拮抗物質の臨床試験は現在進行中である。ロボトニキニンの発見は、新しい抗がん薬のリード化合物をもたらすとともに、ヘッジホッグシグナル伝達を停止させる新たな方法の一例を示している。

doi: 10.1038/nchembio.142

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