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膵臓β細胞への経路

Nature Chemical Biology

2009年3月16日

A pancreatic path

Nature Chemical Biology

インスリンを分泌する膵臓β細胞への幹細胞の分化を誘導できる小分子化合物が発見され、その結果を報告する論文が、Nature Chemical Biology(電子版)に掲載される。この化合物を使う方法は、糖尿病のような代謝疾患に対する移植治療への応用が大いに期待される。

ヒトの胚における器官の発生段階では、膵臓前駆細胞が内胚葉細胞から発生するが、内胚葉細胞自体は、ヒト胚性幹細胞(hESC)に由来している。この経路に関与する細胞のうち、どの細胞が移植治療に必要なのかは解明されておらず、そのため、完全に成熟してインスリンを分泌する膵臓細胞(β細胞)を大量に作製することが研究の大きな目標の1つとなっている。

今回、D MeltonとS Schreiberの研究チームが実施したハイコンテントスクリーニングでは、hESCに由来する内胚葉に添加すると、Pdx1やその他の膵臓マーカーを発現する細胞を大量に産生する化合物ILVが同定された。また、この研究チームは、この細胞をマウスの腎被膜に移植して、インスリン陽性細胞集団をin vivoで作り出すことにも成功した。このことは、こうした細胞が、インスリンを分泌するβ細胞の形成への重要な経路に関与していることを示唆している。

ILVの作用機構を前提に考えると、今回の研究では、プロテインキナーゼC経路を標的にすれば、β細胞の産生量を増やせる可能性がある、という点が明らかになったと言える。

doi: 10.1038/nchembio.154

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