注目の論文

天然物に手が届く

Nature Chemical Biology

2009年5月18日

Natural products in reach

入手が困難な天然物を得るための新しい方法を紹介する論文が、今週のNature Chemical Biology電子版に2本掲載される。このような小分子は、そのまま薬物やリード化合物となったり、新たな化学的骨組みをもたらしたりすることにより、医薬品の探索で中心的な役割を果たすことが多いため、特に重要なものである。

天然物の中には、外敵の存在や不利な天候条件など、特定の環境的合図に対する反応として進化したものがある。そのため、そうした化合物は、実験室環境で生成されないのが一般的である。2本の論文には、それをコードする遺伝子を操作したり解読したりすることにより、その種の化合物を発見する方法が示されている。 Joern Pielたちは、カイメン体内で相互作用する共生生物の複雑な系を研究対象とした。こうした細菌は増殖をカイメンに依存する場合が多く、1つのカイメンの中に多種多様な細菌が生息している場合があるため、単一の細菌を解析することは、不可能とはいわないまでも、極めて困難である。研究チームは、分子を作るのに必要な化学反応に関する知識を利用し、生合成酵素の一種である「ケトシンターゼ」のDNA配列を探索した。そのDNAをもとに、化合物の合成に必要な全遺伝子を短期間で同定できた。

もう一方の研究ではNancy Kellerたちが、天然物がヒストン修飾という後成的なシグナルによって調節されている可能性があるという発見からヒントを得て、実験を進めた。その結果、ヒストン修飾に関与するタンパク質複合体から重要な要素を除去することにより、複数の小分子の出現が観察された。いずれの方式も、天然物を発見するための一般的な方法になるものと考えられる。

doi: 10.1038/nchembio.176

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