注目の論文
極低温電子デバイスにおける熱放散機構
Nature Materials
2014年11月11日
How heat dissipates in cryogenic electronics
極めて低い温度で動作する電子デバイスは、通常の電子デバイスと異なる機構で熱を放散するという報告が、今週号に掲載される。この機構は今回初めて観測されたものだが、顕著な自己加熱をもたらすため、例えば宇宙船用などの極低温電子デバイスで実現可能な限界感度に影響が出る可能性がある。
そうした極低温デバイスは、高精度・低エネルギー・低ノイズ用途に用いられるが、熱放散と自己加熱機構の両方がデバイス性能の劣化につながる可能性があるので、デバイスの部品がどのように熱を放散するのかを理解することが極めて重要である。通常の状況下で温度が約25℃の場合、加熱すると電子部品を構成する結晶が振動する。この振動が結晶の欠陥や界面で減衰することによって熱が放散される。
今回Austin Minnichたちは、極低温電子デバイスで実現される非常に低い温度(約-260℃)の場合、通常とは全く異なる「フォノン黒体放射」と呼ばれる機構で熱放散が起こることを見いだした。フォノン黒体放射は、加熱に起因する振動が結晶と相互作用せずに放射を放出するときに起こる。この新しく観測された熱放散機構はかなりの自己加熱につながるため、極低温電子デバイスの最低動作温度は制限され、それによって実現可能な最小感度が制限される。
doi: 10.1038/nmat4126
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