注目の論文

パリ協定の目標達成に向けた進捗状況を把握するための指標

Nature Climate Change

2017年1月31日

Tracking progress to Paris goals

パリ協定に定める地球規模の気候目標の達成に向けた各国の進捗状況を常時把握するための新しい方法を明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。この方法に示された相互に関連する一連の指標からは、現在の温室効果ガスの排出速度で、温暖化を摂氏2度未満に抑えるという目標の達成に向けてほぼ順調に進んでいることが示唆されているが、2030年の目標を達成し、パリ協定の野心的な長期目標であるネットゼロエミッション(新たな温室効果ガス排出量と大気中から再回収される温室効果ガスの量を等しくさせる)を達成するには、既存技術の急速な展開と技術の進歩が必要なことが明らかになっている。

今回、Glen Petersの研究チームは、茅恒等式(Kaya Identity)を用いて気候とエネルギーに関連する測定可能な複数の指標を明らかにし、これによって炭素の排出とそのさまざまな駆動要因(例えば、経済成長、エネルギー集約度(GDP 1単位の生産に要するエネルギー量)など)を関連付けた。これらの指標は、さまざまな時期の進捗状況をさまざまな詳細度で追跡する。Petersたちは、これらの指標を全球レベルと国レベルのデータに適用して、エネルギー1単位あたりの炭素生成量が近年減少し、つまりエネルギーの炭素集約度は改善されたが、エネルギーの利用が炭素排出の最大の駆動要因であることに変わりのないことを明らかにした。また、Petersたちは、太陽光発電と風力発電の成長は炭素排出量の伸びの鈍化に寄与したものの、経済的要因とエネルギー効率の向上による影響の方が大きいことを明らかにし、かつての繁栄を取り戻すと炭素排出量の伸びの鈍化傾向が逆転してしまう可能性があるという考えを示している。

Petersたちは、エネルギーの炭素集約度のさらなる改善が、技術の進歩によってもたらされる点を強調しており、パリ協定の長期目標であるネットゼロを達成するには、再生可能エネルギーの利用拡大を加速させ、炭素の回収・貯留を広範に実施することが間もなく必要になるという考えを示している。

同時掲載されるChristopher GreenのNews & Views記事には、「今から2050年までに炭素排出量を80%削減するには、炭素排出量の減少率を年約5%としなければならない。…この新しい解析結果は、全球炭素排出量を大幅に削減するための技術が十分に揃っていない可能性を示唆している」と記されている。

doi: 10.1038/nclimate3202

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