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【気候科学】温暖な海洋亜表層水を原因とする氷山の大群の流出

Nature

2017年2月16日

Climate sciences: Iceberg armadas released by warm subsurface ocean waters

Nature

かつて北米のかなりの部分を覆っていた氷床が、最終氷期の最も寒冷な期間の一部において氷山の大群を「吐き出した」ことについて、1つの説明を示した論文が、今週掲載される。今回の研究では、たとえ大気温暖化がほとんどなくても、わずかな海洋温度の上昇が現在の氷床の脆弱な部分を分裂に導く過程に関する手掛かりをもたらしている。

最終氷期には、カナダのかなりの部分と米国北部の一部がローレンタイド氷床に覆われていた。意外なことに、この最終氷期の最も寒冷な時期の一部においてローレンタイド氷床から氷山の大群がハドソン海峡を通って北大西洋に周期的に流出していた。これは、氷床が寒冷期に拡大し、温暖期に収縮するという予測と矛盾しており、こうした「ハインリッヒイベント」を引き起こした根本機構については激しい論争が続いている。

今回、Jeremy Bassisの研究チームは、モデルによる証拠を示し、海洋亜表層の温暖化によって氷床の末端が不安定化して氷山として分離(カービング)することでハインリッヒイベントが発生することを明らかにした。Bassisたちは、温暖な海洋亜表層水によって氷山の分離面の水中部分が融解し、氷床の急速な後退と突然の氷山の放出が起こったという考えを示し、いったん氷床が後退すると、氷床を支えていた海底部分が千年スケールで隆起し、氷山の分離面を温暖な海洋亜表層水から切り離し、これにより次のハインリッヒイベントまで氷床が再度前進したと結論づけた。

このようにBassisたちが提唱した機構は、ハインリッヒイベントの原因となる過程と現代の海洋終端氷河の後退を引き起こす過程が同じであることを示唆している。そのため、海洋深層部に幅の広い氷流が存在し、既に崩壊の危険にさらされている西南極の一部では、たとえ大気温暖化がなくても、この過程が起こりやすくなっている可能性がある。

doi: 10.1038/nature21069

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