【生態】女王バチにふさわしい生息地
Nature
2017年3月16日
Ecology: A habitat fit for a queen bee
マルハナバチの家系の生存確率と持続性は、そのコロニーから250~1,000メートル以内に質の高い採餌生息地が占める割合に応じて大きく高まることが3種のマルハナバチの分析によって明らかになった。この新知見は、今週のオンライン版に掲載される論文に記述されているが、四季を通じて景観レベルで花資源を増加させる保全対策をとれば農業地帯で野生の花粉媒介生物にプラスの影響が及ぶという学説を裏付けている。
マルハナバチなどの花粉媒介昆虫の個体数が全球的に減少していることの主たる原因は、農業の集約化による生息地の減少だ。花粉媒介昆虫の生息地を回復させるためのさまざまな取り組みが打ち出されてきたが、マルハナバチに関しては、景観の変化が個体群レベルの重要パラメーター(例えば、生活環の1つの段階から次の段階へ移行する際の生存確率)にどのように影響するのかが解明されていなかった。
今回、Claire Carvellの研究チームは、英国バッキンガムシャー州の(農地、草地、森林、村落からなる)混合農地帯(20平方キロメートル)内に生息する一般的なマルハナバチ(マルハナバチ属)の3種について2年間の研究を行った。Carvellたちは、土地利用と生息地の調査を行い、537匹の春の女王バチと2,101匹の働きバチのDNAサンプリングを行って、このコロニーにおける世代間と同一世代内の関係を分析した。次に個体群動態モデルと空間モデルを用いて、野外個体群におけるマルハナバチの家系の毎年の生存確率を比較評価した。その結果分かったのは、高価値の採餌生息地(春の花資源を含む)の近くにあるコロニーからの方が、越冬期と春の羽化期を生き抜く娘の女王バチが出現する可能性が高くなることだった。
同時掲載のJeffrey LozierによるNews & Views記事では、今回の研究で「多世代にわたる生活環の動態に対する農薬、病原体とその他の要因の影響を調べることによって、不均質な土地利用をマルハナバチの個体群にとって最適なものにするための現実的な方法を明らかにすることを目指すため」に利用できる枠組みが得られたと結論づけられている。
doi: 10.1038/nature21709
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