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【気候科学】太陽放射の改変が熱帯低気圧の頻度に及ぼす影響を試算する

Nature Communications

2017年11月15日

Climate sciences: Estimating the effects of solar geoengineering on tropical cyclone frequency

Nature Communications

大気中にエアロゾルを注入して太陽放射を改変する方法は、熱帯低気圧の頻度に影響を及ぼすことが分かっているが、この影響に地域差が生じる可能性を示唆するモデル研究について報告する論文が、今週掲載される。太陽放射の改変は、地球温暖化を相殺するための方法として提案されているが、今回の研究結果は、政策当局者が太陽放射改変の効果の不確実性を考慮すべきことを示唆している。

太陽放射改変の方法の1つである成層圏エアロゾル注入は、太陽光の一部を地球の表面に達する前に反射させて、地表温度の低下をめざしている。成層圏エアロゾル注入の天然類似物が火山の噴火なのだが、その観測記録からは、エアロゾル量が増加すると熱帯低気圧の活動が変化することが示唆されている。つまり、北大西洋の熱帯低気圧の活動は、北半球で火山噴火があると低下し、南半球で火山噴火があると増大するというのだ。

これと似た結果が成層圏エアロゾル注入についても予想されるため、この方法の影響評価は参考になると考えられる。そのため、Anthony Jonesたちの研究グループは、大気と海洋を完全に結合した大循環モデルを用いてシミュレーションを行い、半球の成層圏エアロゾル注入が北大西洋の熱帯低気圧の頻度に及ぼす影響を調べた。その結果分かったのは、エアロゾルを北半球で注入すると、北大西洋の熱帯低気圧の頻度が低下し、南半球で注入すると、北大西洋の熱帯低気圧の頻度が上昇する可能性があることだった。これに対して、2070年に成層圏エアロゾル注入を突然中止すれば、熱帯低気圧の活動が当初の状態に逆戻りすると考えられている。

Jonesたちは、北大西洋での熱帯低気圧の活動が北半球でのエアロゾル注入によって抑制される可能性があり、それと同時にサヘル地域で干ばつが起きると考えられる点に注意すべきだと考えている。従って一方的な太陽放射改変によって特定の地域の気候応答を制御するという方法は、別の地域に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な検討を要する。

doi: 10.1038/s41467-017-01606-0

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