【持続可能性】地下水利用が環境に及ぼす有害な影響をマッピングする
Nature
2019年10月3日
Sustainability: Mapping the detrimental environmental effects of groundwater exploitation
世界で地下水採取が行われている河川流域のほぼ半数において、2050年までに地下水の汲み上げが水域生態系への水の流れに重大な影響を及ぼすようになるという予測を示したモデル研究について報告する論文が掲載される。地下水の河川への流入は、健全な生態系の維持に重要な役割を果たしているため、地下水資源の限界を理解することは重要だ。
地下水の採取は、持続可能性を失いつつある。一部の地域では、地下水採取の速度が、降水と河川水による地下水涵養の速度をすでに上回っている。地下水が枯渇すると、河川の流量が減少し、河川、湖、湿地とその他の生態系へ流れ込む水の量が減ってしまう。
今回、Inge de Graafたちの研究グループは、河川流量が環境流量の限界に初めて到達した地域とその時期(河川流量が初めて2年間に3か月以上連続して臨界点に到達した地域とその時期)を調べた。河川流量の臨界点に達するということは、水域生態系を維持するために十分な地下水流が得られなくなったことを意味する。de Graafたちは、地下水の汲み上げと地下水の河川への流入を関連付けた全球モデル(1960~2100年を対象とする)を作成した。このモデルは、全世界の河川流域の約20%、その大部分が地下水に依存した灌漑を行っている乾燥地帯(例えば、メキシコの一部、ガンジス川上流域、インダス川流域)で、河川流量がすでに環境流量の限界を超えていることを示している。今回の研究では、地下水の汲み上げが行われている河川流域の42~79%(推定)において、2050年までに水域生態系を維持できない河川流量になると考えられることが明らかになった。
de Graafたちは、この推定値が、新興国の人口増加や発展による地下水需要の増加の可能性を全く考慮に入れていないために、楽観的な推定になっている可能性が高いとコメントしている。また彼らは、今回の研究によって得られた知見は、持続可能かつ効率的な地下水の利用を促進するための将来の取り組みにとって有益な情報となる可能性があると考えている。
doi: 10.1038/s41586-019-1594-4
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