【宇宙物理学】これまでより太陽に近づいた観測
Nature
2019年12月5日
Astrophysics: Looking directly at the Sun
NASAが昨年打ち上げたパーカー・ソーラー・プローブのミッションの初期データについて報告した4編の論文が、今週掲載される。これらのデータは、太陽風の起源と高エネルギー粒子の物理を解明する上で新たな手掛かりとなる。この探査機は、我々の太陽系の内部太陽圏から飛び出して、太陽から約2400万キロメートルの地点に到達しており、機上に搭載された計測機器によってコロナ(太陽の外層大気)で発生する現象を計測した。
太陽風とは、太陽のコロナから絶えず流れ出している高エネルギー粒子のことだ。最近の遠隔観測で、太陽風発生の基盤となるいくつかの機構の詳細が明らかになったが、その他の過程の探索は、困難な作業になっている。ほとんどの計測は、1天文単位(地球から太陽までの距離に等しい)離れた地点で行われ、太陽風は、太陽から地球へ流れる間に変化することが知られているが、変化の程度と起源は不明である。
パーカー・ソーラー・プローブは、これまでで最も太陽に接近してコロナの計測データを送ってきており、これまでできなかったような太陽の観測が可能になった。例えば、過去のミッションで、太陽風がコロナから流れ出すと加速することが明らかになったが、これがどのようにして起こるのかは分からなかった。Justin Kasperたちの論文では、磁場の変化によって太陽から流れ出す太陽風の風速が加速することが報告されている。パーカー・ソーラー・プローブによる計測では、モデリング研究での予測を超える風速が記録された。一方、Stuart Baleたちの論文では、いわゆる低速風(秒速500キロメートル未満)に注目している。その起源は、高速風ほど明確になっていない。Baleたちは、低速風の起源が、赤道付近で見つかったコロナホールであることを明らかにしている。
今後5年間、パーカー・ソーラー・プローブは太陽に近づきながら新たな発見を続け、最終的には太陽の表面から600万キロメートル強の地点に到達する。この期間中に、太陽の活動が、11年の活動周期における活発な時期に入るため、同時掲載のDaniel VerscharenのNews & Views論文では、今後さらにエキサイティングな観測結果を期待できると指摘されている。
doi: 10.1038/s41586-019-1813-z
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