宇宙生物学:微生物を使った希土類元素の抽出を宇宙空間で
Nature Communications
2020年11月11日
Astrobiology: Mining with microbes in space
無重力状態で、微生物を使って経済的に重要な元素を岩石から抽出できたことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この成果は、微生物を使った「バイオマイニング」が、他の惑星での定住における非常に重要な一面となる可能性を示唆している。
希土類元素(REE)は、独特な磁気特性や触媒特性を有するため、電子機器の非常に重要な構成要素となっている。しかし、REEの抽出は、困難を伴うとともに多大なコストを要し、近い将来に需要が供給を上回ることが想定されている。人類が他の惑星の探索する際には、REEを抽出する高効率で簡単な方法が非常に重要になる。地球上では、微生物を使って岩石からREEを抽出しているが、これと同じことが低重力や無重力でも可能かは分かっていない。
今回、Charles Cockellたちの研究チームは、国際宇宙ステーション内で微小重力状態と火星の重力を模した状態で、3種類の細菌[Sphingomonas desiccabilis、枯草菌(Bacillus subtilis)、Cupriavidus metallidurans]のバイオマイニング能力を評価した。Cockellたちはこの能力を評価するために、細菌の抽出効率、具体的には玄武岩(月や火星の表面にある物質の大多数と類似している)から浸出する14種類のREEの量を測定した。これと並行して、地球上では、通常の重力条件下で実験が行われた。その結果、S. desiccabilisを使った場合に、これら3つの重力条件下(微小重力、火星の重力、地球の重力)全てで玄武岩からREEを浸出させられることが判明した。S. desiccabilisの浸出効率は、いずれの重力条件でも同等で、玄武岩に最も豊富に含まれるREEの浸出効率が最も高く、セリウムとネオジムが約70%だった。その他の2種類の細菌は、低重力下で浸出効率が低下したか、いずれの実験条件下でもREEがほとんど浸出しなかった。
以上の結果は、微生物のバイオマイニング能力が生物特異的であり、宇宙空間や火星のような重力下でもバイオマイニングが可能なことを明確に示している。
doi: 10.1038/s41467-020-19276-w
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