気候科学:アマゾン川流域の熱帯雨林の炭素収支を脅かすもの
Nature
2021年7月15日
Climate science: Amazonia’s carbon balance under threat
アマゾン川流域の熱帯雨林(アマゾニア)は、上空の大気に含まれる炭素の濃度を低下させる能力を有していたが、それが森林破壊と地域的な気候変動によって脅かされていることを示唆する論文が、今週、Nature に掲載される。一部の地域では、炭素排出量が炭素吸収量を上回っていることが明らかになった。この知見は、気候と人為的かく乱の相互作用がアマゾン川流域の世界最大の熱帯林の炭素収支に及ぼす長期的影響をより正確に説明するために役立つ。
アマゾニアは、世界で最も広大な熱帯林であり、その結果として、大気中の炭素の蓄積と貯蔵に寄与する重要な役割を果たしている。人為的な森林破壊や気候変動などの要因は、炭素シンクの容量減少を促進し、生態系の健全性を示す局所的炭素ガス収支を変化させたと考えられている。
今回、Luciana Gattiたちは、ブラジルのアマゾニア上空の対流圏(地球大気の最下層)における2010~2018年の二酸化炭素濃度と一酸化炭素濃度の航空機観測値を照合した。4地点の約600の鉛直プロファイリング(地表から海抜約4.5キロメートルまで)の結果、アマゾニア東部の総炭素排出量は西部よりも多いことが判明した。もっと具体的に言うと、特にアマゾニア南東部が正味の炭素排出源であり、今回の研究期間中に炭素シンクから相当な規模の炭素排出源に切り替わっていた。Gattiたちは、アマゾニア東部の炭素排出量増加の原因は、その地域の生態系が受けたストレスと、乾季と森林破壊の激化によって加速した火災発生の増加である可能性があるという仮説を示している。
今回の研究は、アマゾニア全域にわたる森林破壊と気候変動との関連性を明らかにすることにより、この相互作用がアマゾニアの炭素収支とその生態系の脆弱性の両方に対して持続的に負の影響を及ぼす可能性があることを示唆している。
doi: 10.1038/s41586-021-03629-6
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