生態学:産卵時期の変動に周囲の高木の健康状態が関係している
Nature Climate Change
2021年9月28日
Ecology: Tree health linked to variation in timing of egg laying
気候変動によってシジュウカラの産卵時期が変化したことが、研究論文で十分に裏付けられている。この変化は、個体群内で小規模な空間的変動が明確に認められる場合があり、個体群の周辺で成長するナラの健康状態が関係していると考えられるとした論文が、Nature Climate Change に掲載される。
気候変動によって気温が上昇し、春が早く訪れるようになったため、植物や動物の個体群は、繁殖などの生活上の出来事のタイミングをさらに適切な条件に合わせて変えざるを得なくなった。シジュウカラ(Parus major)が属する食物網については、研究が進んでおり、この食物網では、シジュウカラがイモムシを餌にしており、イモムシはヨーロッパナラ(Quercus robur)の新葉を餌にしている。春の気温が上昇することは、これら3種の生物種の生活上の出来事のタイミングが繰り上がったことと関連している。ただし、鳥類の場合、この変化の幅が最も小さく、食物源とタイミングがずれてしまうリスクがある。
今回、Charlotte Reganたちは、英国オックスフォードシャー州の385ヘクタールの森林地帯で行われた60年間の研究(1961~2020年)の一環として収集された1万3000羽以上のシジュウカラの繁殖データを用いて、シジュウカラの産卵時期には、個体群規模の解析だけでは発見できない小規模な空間的変動があることを見いだした。この研究期間中にシジュウカラの産卵日は、個体群全体で平均16.2日繰り上がったが、個々の巣箱(合計964個)のレベルでは、繁殖中の雌の産卵日には著しい変動が認められ、7.5~25.6日の幅で繰り上がっていた。また、それぞれの巣箱から75メートル以内に位置するヨーロッパナラの健康状態が、産卵日のばらつきの有意な予測因子であることが明らかになった。例えば、健康なヨーロッパナラが周囲にある巣箱で繁殖するシジュウカラは、産卵日が1年で0.34日繰り上がったが、健康でないヨーロッパナラが周囲にある巣箱で繁殖するシジュウカラは、産卵日が1年で0.25日しか繰り上がらなかった。
今回の研究は、より小規模な気候変動下での生物の生存能力を理解する上で重要な意味を持っている。Reganたちは、複雑な局所的選択要因との関連で気候変動に対する応答を評価する必要があると主張している。
doi: 10.1038/s41558-021-01140-4
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