環境:100年に一度の大洪水のリスクに18億1000万人がさらされている
Nature Communications
2022年6月29日
Environment: 1.81 billion people at risk of 1-in-100 year flood
全世界の18億1000万人が、100年に一度という大洪水に遭遇して、0.15 mを超える浸水深を経験するおそれがあり、その半数以上が南アジアと東アジアに居住していることを示唆する研究論文がNature Communications に掲載される。また、1日5.50ドル(約720円)未満で生活している7億8000万人が、この大洪水のリスクにさらされていることも判明した。今回の研究は、対象を絞った洪水緩和策や政策にとって重要な意味を持っている可能性がある。
洪水は、最も発生数の多い自然災害の1つであり、その影響は、低所得国にとって特に切実だ。洪水リスクの増加は、世界の多くの地域で既に現実のものとなっているが、気候モデルによって、アフリカ、アジア、中南米地域で洪水の頻度が大幅に上昇するかもしれないことが示されており、洪水が社会経済的発展にとってのリスクになっている。洪水の被害対象(エクスポージャー)に関する評価は、地域レベルと国レベルで実施されてきたが、全球的な評価が不足しているため、低所得の国や地方への影響が、あまり解明されていない。
今回、Jun Rentschlerたちは、地形モデルと水文モデルによる洪水データと人口マップを用いて、188カ国における洪水の被害対象に関する全球レベルの高分解能評価を行って、洪水のリスクにさらされた集団を評価した結果を報告している。そして、Rentschlerたちは、この結果を世界銀行の「グローバル・サブナショナル貧困アトラス」に示された貧困推計と組み合わせた。その結果、世界人口の23%(18億1000万人)が、年に一度の大洪水(1年間に発生する確率が1%である大洪水)に遭遇し、0.1 mを超える浸水深を経験する可能性があり、その半数以上が南アジアと東アジアに居住していることが明らかになった。また、この大洪水の被害対象とされる18億1000万人の3分の1以上が中国とインドの国民であるという見解も示され、89%(16億1000万人)が低中所得国に居住していることも分かった。さらにRentschlerたちは、1日5.50ドル未満で生活している7億8000万人以上が、高い洪水リスクに直面していることを明らかにし、洪水の被害対象と貧困が関係していることを明確に示している。
doi: 10.1038/s41467-022-30727-4
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