注目の論文
環境:北極海の酸性度が年間最高に達する季節は冬から夏に変わるかもしれない
Nature
2022年10月6日
Environment: Summer highs for Arctic Ocean acidity
モデル化研究の結果、北極海の酸性度がピークに達する時期が冬から夏に変わる可能性が示唆された。これは、海洋生態系にとって気掛かりな研究知見かもしれない。この研究について報告する論文が、Nature に掲載される。
大気中に含まれるCO2は、海水の温度と溶存CO2量とpHに依存する過程を通じて、海洋CO2濃度に影響を及ぼす。大気中のCO2濃度が上昇すると、海洋中のCO2濃度とpHの季節変動幅も大きくなるという学説が提唱されている。北極海では、夏の生物学的過程によってCO2濃度が管理されているため、CO2濃度(したがって酸性度)のピークは冬に観測されている。
今回、James Orrたちは、27種類の地球システムモデルについて、海洋CO2濃度の月別変化と将来的な変化可能性を評価した。これらのモデルは、過去については同じような季節変動のタイミングを示しているが、Orrたちは、CO2の中排出シナリオと高排出シナリオで、2100年までに北極海の夏のCO2濃度が年平均よりも徐々に高くなっていくという見解を示している。こうした逆転現象は、これまでに気候に関連する変数で観測されたことはなかった。Orrたちは、この変化の主たる駆動因として、海氷後退の早期化と夏の海面温暖化を指摘している。この変化は、夏の海洋酸性化を悪化させる可能性もあり、そのために温度上昇の影響を受けやすくなる海洋生物は打撃を受けるかもしれない。
doi: 10.1038/s41586-022-05205-y
注目の論文
-
11月21日
天文学:近くの恒星を周回する若いトランジット惑星が発見されるNature
-
11月21日
気候:20世紀の海水温を再考するNature
-
11月20日
生態学:リュウキュウアオイが太陽光を共有するNature Communications
-
11月19日
気候変動:パリ協定を達成するために、CO2の受動的吸収を計算から分離するNature
-
11月18日
惑星科学:嫦娥6号のサンプルが裏側の月火山活動の年代を特定Nature
-
11月13日
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications